043

大人しく話を聞いていた柴原さんが、静かに口を開く。


「だったら俺の家に来ないか?」


「はい?」


言われた意味がわからず、私はすっとんきょうな声をあげた。


「俺の家はすずの保育園に近いし、そうなると橋本さんの職場にも近いんだろう?」


「いや、まあ、そうですけど。でも。」


「いわゆるルームシェアだ。」


「ルームシェア…?」


私は柴原さんの言葉を反芻する。

確かに生活をやりくりする上で、立地的には申し分ないだろう。


だけど、そんな、ねえ?


「家賃とか、光熱費とかどうするんです?」


「そういうのは全部俺が払うから、気にしなくていい。」


といわれましても、じゃあお願いしますなんて即決はできない。だって柴原さんはすずの父親だけど、私とは他人で異性で…って、そんなことを気にする方がおかしいのだろうか。

いやいや、おかしくないでしょ?

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