019
「悪いけど、今から来客予定があるんだ。君の言う責任ということならきちんと取っている。まだ何かあるなら、今度はちゃんとアポイントを取ってから来てくれるかな。」
あくまでも今日は“親切にも会ってやった”という雰囲気がひしひしと伝わってくる。
柴原さんは胸ポケットから名刺を取り出すと、乱暴に差し出して私をソファから立たせた。そして扉へと促す。
早く帰れと言わんばかりの態度に、私はぶちギレて柴原さんをキッと睨んだ。
「姉といいあなたといい、ふざけたやつしかいないのかよ。社長っていう肩書きは立派かもしれないけど、父親としてはクズだわ。ゴミ以下。死ね。」
私の暴言に、柴原さんは顔色ひとつ変えずに扉を開けると、丁寧な所作で私を追い出した。
「気を付けてお帰りください。」
他人行儀なその態度に腸が煮えくり返りそうだ。
廊下では秘書の安達さんが待ち構えていて、私をエレベーター前までエスコートした。
にこやかに一礼されるも、こちらからは挨拶などする気はまったくない。
私は先ほど渡された名刺をぐしゃりと潰して、そのままカバンに放り込んだ。
ああ、ムカムカする。
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