第467話 お泊り会
ラッティーの友だち四人が週末の午後うちにやってきた。うちにはたくさん人がいるので結構ワイワイと
元気があるのはよいことだ。ただ、まだ教室に使ってる広い方の応接室では授業中なので、
「ラッティーたちは用意した客室で着替えてくればいい。着替えたらここで待っているから、その後グリフォンのブラッキーとホワイティーを紹介しよう」
「はーい」
よい返事と一緒に、五人は準備していた客室にいってくれた。
「元気が有り余っているような子たちだったな」
「そうですね。ラッティーもブレゾで一人で生活していたようですから、年の近い友達ができてうれしいのでしょうし、元気で明るい子と気が合うのでしょう」
「友だちが大ぜいできるということはいいことだよな。大学まで同級生ということも普通にありそうだから、一生の友達になる可能性もあるわけだ。そういうのは、ああいった学校のいいところだよな」
「そう思います」
玄関ホールで待っていたらそんなにかからずラッティーたちが着替えて出てきた。
「それじゃあ、ブラッキーとホワイティーをみんなに紹介しよう」
北の大木近くまでみんなを連れて行ったところで、上空からブラッキーとホワイティーがゆっくりと降りてきて俺の目の前で着地した。
『おとうさん、今日も違った子がたくさん来たね』
『おとうさんが連れてくるのはみんな女の子だよね』
何か、グリフォンにも誤解されているような気がする。いいけどね。
『新しく連れて来たのは、ラッティーの友だちだから。ちゃんと
『できる―』『できるー』
念話では言葉になっているのだが、二羽の口から出るのは、
クワー、クワー、だけだ。
「尻尾の先に黒い
一応二羽には
「この二羽が王都でうわさのグリフォン」
「うわー、大きー!」
「すっごーい。
「全然怖くないから大丈夫。頭を優しくなでてやれば喜ぶから」
恐る恐る四人が手を伸ばして軽く二羽の頭をなでてあげる。
二羽も気持ちが良かったらしく、クワー、クワーと鳴いて喜んでいた。
この「クワー、クワー」は『エヘヘヘ』だった。
『ブラッキーとホワイティー、それじゃあな』
『はーい』『はーい』
二羽を残して、今度はみんなを馬車で運んだシルバーとウーマの紹介。
二匹は今は馬車から外されて南の草原で草を食べてのんびりしている。
「それじゃあ、アスカが二匹を紹介してくれ、俺は今でも見ただけではどっちがシルバーでどっちがウーマだか区別がつかないから」
「わかりました」
アスカが二匹を子どもたちに紹介してくれた。この二匹もおとなしい馬なので、首をなでられてうれしそうにしていた。
「マスター、シルバーは良いとして、ウーマの名まえの由来は説明しなくてもいいんですか?」
「それはまあ、いいんじゃないか」
最後はシローを紹介する番だと思ったがすでに二階でシローの洗礼は受けて来たらしい。
それで、最後はガラス張りの温室だ。
だいぶ日も傾いているのだが、温室の中はむっとするほど暖かい。
「うわー、暖かーい」
「すごーい、真っ赤なお花がきれい」
「この草木は、南国の草木?」
……。
確かに南国っぽくて面白い。かなりいろいろの木が大きな鉢などに植えられていて花も咲き乱れているのだが、今年はまだ実はできないようだ。果実系統は桃栗三年柿八年ではないが、種からではなく苗から育てているようだが、それでもまだ一年もたっていないので実ができはしないだろう。木には見えないバナナでさえ苗から育てて実がなるまで、四年はかかると聞いたことがある。先の長い話だが楽しみではある。
「マスター、申し訳ありません。ここにある草木で、食べられる実のなるものはありません」
聞いててよかった。知らなかったら、四、五年先から毎年新しく実のなった木を見て、落胆するところだった。
「一応屋敷の紹介は終わったから、みんなで食事前にお風呂に入ってくればいい」
「それじゃあ、みんな。一緒にお風呂に行くよ。ここのお風呂は大きくて気持ちいいんだから」
「凄ーい。お湯のお風呂なんでしょ?」
「ここは、毎日お風呂を沸かしているから気持ちいよ」
「それも凄ーい」
「うちなんか、お湯のお風呂は週に二回だけよ」
「それだっていい方じゃない。わたしのうちなんか週に一回だけよ」
……。
なんであれ、話題が尽きず常に何かしゃべっている。
お風呂に入ってまた大騒ぎをしていたらしいが、誰に迷惑をかけるわけでもないので問題はない。
アスカも子どもたちと一緒は遠慮してか、昨日からマーサの授業に出ているアデラたちベルガー姉妹と一緒に風呂に入ったようだ。アデラさんは今回の研究が目途が立ったら、大学を退職することにしたそうだ。引き留めはなかったらしい。聞けば、今回の爆発騒ぎの他にも何度か似たようなことをやらかしていたそうだが、今回ほどの規模の物はなかったようだ。解雇されなかったのは、騎士団の要請によるものだったらしい。
夕食は、お客さまとラッティーで別テーブルを一つ設けてやった。
食事が始まって、自分たちより年上の連中が多い中での食事だったせいか、口数が少なかったのだが、そのうち慣れてきたようで段々と話し声が大きくなってきた。楽しいことは良いことだ。今日の夕食も例によってドラゴンの肉を使った物だった。
昼食も終わり、アスカと居間に場所を移して寛いでいたら、俺たちの話が聞きたいとラッティーたちがやって来た。やっと俺のファンができたのかと思ったら、この四人、ラッティーも含めて五人は入学そうそうアスカのファンクラブに入ったそうで、いろいろアスカに質問した
ふん。どうせ俺にはファンクラブはないのさ。
その後、ラッティーたちは自分たちにあてがわれた部屋に戻って夜遅くまでお話をしていたらしい。その際シャーリーも付き合わされたようだ。
翌朝の朝のトレーニングには、ラッティーだけは何とか出てきたが、お客さんたちはそのまま寝ていたらしい。ラッティーたちに付き合わされたシャーリーも
朝食はお客さま四人もラッティーも昨日ほどの元気がないようで、口数も少なかった。
一応食事が終わったらまた朝寝をするとか言っていた。
今日の昼はこの子たちにはあまり辛くないカレーを出すことにしている。四人はカレーを初めて食べるのだろうから、自宅に帰って腹が痛くなっては
昼食では、特別にあまり辛くないカレーを子どもたちに出したのだが辛い辛いと言いながらお替わりをしていた。これでカレー信者が王都にまた増えたと思う。今は市中でもスパイスが出回っているので、その気になれば家庭でも作れるかもしれない。
午後少ししたところで、それぞれのうちから迎えの馬車がやって来たので、ラッティーともども手を振ってさよならした。
どの馬車の御者の人も、今回のお礼と称してお土産を持参してくれていた。みんなお菓子の詰め合わせだったが、うちには甘いものが好きな連中が多いので、ありがたく頂いた。ラッティーが連れてきた四人はちゃんとした家庭の子どもたちだったようだ。
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