第219話 迷宮4、7~10層


 ゴーレムを破り、ドールの部品を手にいれた俺たちは、6層から7層に下りた。クエストマーカーに従ってどんどん進んで行く。


 7層では、アイアン・ゴーレムが四体。階段前の守護者がスチール・ゴーレム二体とアイアン・ゴーレム四体、宝箱の中にはドールの右足。


 8層では、アイアン・ゴーレムが八体。階段前の守護者がスチール・ゴーレム四体とアイアン・ゴーレム八体、宝箱の中にはドールの左足。


 9層では、アイアン・ゴーレムが十六体。階段前の守護者がスチール・ゴーレム八体とアイアン・ゴーレム十六体、宝箱の中にはドールの胴体。


 ここまでで相当数の鉄とはがねが手に入った。



 いまは階層守護者を破ったあと、9層から10層に下りる階段前でアスカと休憩しているところだ。


「階段間の距離も短いし、このダンジョンはかなり小さいんじゃないか?」


「そうですね。そうとう若いダンジョンのようです。出てくる敵も単調ですし、罠もないようですから。次の階層で、ドールの頭部がおそらく手に入るでしょうから、ダンジョンコアの部屋も次の階層にあるかもしれませんね」


「だといいな。アスカ、今何時だ?」


「ちょうど20時になります」


「それじゃあ、そろそろ行くか」



 そして、目の前の階段を下り10層へ。


 下りたった場所は、これまでの階層とは違い、天井が高くかなり広い部屋だった。そして、目の前には、


「デカいな」


 見上げた先には、体高10メートルはありそうな巨大なゴーレムが立っていた。薄い青色をしたその巨人はこれまで見たゴーレムなどおもちゃに見える迫力でたたずんでいる。


「ゴーレムの表面は少なくともアダマンタイトです。内部までアダマンタイトの場合、私の髪では斬撃ざんげきが効かない可能性が有ります」


 そう言って、アスカは腰の双刀を抜いた。


「マスター、私が倒しますか? 爪の刺突ですと一撃ではたおしきれませんが、打撃か刀による斬撃を放てば一撃でたおしきれます。打撃よりも刀を使う方がややでき上がりがきれいだと思います。それでもある程度は爆散ばくさんしますのであまり差はありません」


「面倒だから、俺が倒しちゃうよ。

 魔石奪取からの収納!」


 魔石を持ったモンスターである以上、いくら強かろうが俺の前では全く無意味だ。いつか、ヤシマダンジョンで寝たままのドラゴンから魔石を抜いてそのまま収納したが、こいつも自分がどうなったかも知らず俺に収納された。まさに収納は対モンスター「最強」スキルだ。


 ゴーレムが倒されたところで。広間の向こうから、


 ガラガラ……


 扉が音を立てて上にがっていった。


 巨大ゴーレムの立っていた場所には、鉄の宝箱。


 中には予想通りドールの頭部が入っていた。



「よし、これで全部そろった。この先の部屋はコアルームだよな。行ってみよう」


 扉をくぐった先の部屋の中央には、深淵キルンの迷宮のコアと比べるとかなり小さくソフトボールほどの、白く輝くのダンジョンコアが銀色の台座の上に浮かんでいた。


 俺がそっと右手をえると、


『「鉄の迷宮」のコアの所有権を獲得しました』 


『コアを通じて、迷宮内のあらゆる場所の状況を観察可能です』


 ……


 一連の説明が頭の中にひびいて来たのは、深淵キルンの迷宮の時と同じだ。


『コアルームの奥には、宝物庫ほうもつこがあります。その開閉はコアを通じて行えます』


 開けてくれ。


『宝物庫の扉を解放しました』


『現在コア守護者が不在です。新たな、コア守護者の創造を推奨すいしょうします。

 守護者の創造は、ダンジョンポイントによって行われます。現在使用可能ダンジョンポイントは、1200です。スティールゴーレムが創造可能です。スティールゴーレムの創造に必要なダンジョンポイントは100、スティールゴーレム十二体の創造が可能ます。創造に要する時間は48時間です』


『じゃあ、十体作ってくれ』


『スティール・ゴーレムの創造を開始します。現在使用可能ダンジョンポイントは、200です』


 コアから手を放して、さっそく宝物庫に入ると、そこには、鋼のインゴットの山、鉄のインゴットの山、宝石の原石と思われる数々の石があったので、全部収納しておいた。残念だが、アーティファクト的なものは何もなかった。ただ、あまり上等ではないし、かなり傷んだ武器や防具が数人分まとめて脇の方に転がっていた。今まで、出入り口がアリたちの通路にしかなかったのなら、行方不明になったパーティーが、このダンジョンに侵入してどこかの階でゴーレムにたおされた遺品いひんの可能性が有るので、これも収納しておいた。冒険者ではアリの言葉は分からないだろうが、アリが道を空けることでダンジョンの出入り口まで誘導したのかもしれない。



 コアルームに戻り、


「コア、迷宮への出入り口を移動できるか?」


『可能です。出入り口の移動にはダンジョンポイント100を消費します』


「上に露天掘り跡地がある。その跡地に坑道が作られているがその出口の近くにダンジョンの出入り口を移してくれ。それと、出入り口を通ってモンスターが外に出ないようにしてくれ」


『了解しました。出入り口の移動および設定変更終了しました』


「ありがとう」


「アスカ、これで、女王アリとの約束は果たせたな。次は、ドールの組み立てだ、アスカ、できるか?」


「可能と思います。マスター、ドールの部品をそこの床に並べてください。それと、接続材用にミスリルのインゴットを一つお願いします」


 アスカの前に、ドールの部品、両腕、両足、胴体、頭、それとミスリルのインゴット一つを並べて出してやった。


 アスカはミスリルインゴットを加工して箔状のミスリルテープをまず作ったようだ。


 胴体にまず右腕。お互いの切断部位にはたくさんのワイヤーのようなものがのぞいている。そのワイヤーを髪の毛で器用につなげ、接続部にミスリルテープを巻いて圧着していく。そして、胴体の肩の関節受け部分に右腕の骨格の関節部を押し込んだ。


「右腕を胴体に繋ぎ終えました。次は左腕です。……、左腕の接続終わりました」


 ……


「最後は、頭です。……、……、終わりました」


 頭は、アスカでもかなり時間がかかったようだ。


『ドール』。見た目は全身銀色の金属で出来たマネキンだ。髪の毛はない。


 アスカは青っぽい金属だったはずだから、材質も異なるのだろう。



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