第145話 特訓1
俺も若いころ、アスカに杖術の特訓を受けたなーと過去の思い出に浸りながら、目の前でアスカ教官に
その数日前。
「アスカー、あの四人なんだけど体力はありそうだな。前に言ってた武術学校じゃないけど、何か教えてやればいいんじゃないか? 飛空艇の操縦だけだと飽きちゃうだろ?」
「そうですね。武術の訓練は
「危なくないように、木剣でいいんじゃないか? それならアスカがすぐ作れるだろ? 木なら、この前の家具屋で買った椅子用の木がまだあるぞ。あれなら
「分かりました。それで作ってみましょう。その木材をそこに出してもらえますか。最初から普通の長さの木剣だと難しいでしょうから、最初は短剣を持たせましょう」
こうして俺の思い付きで始まった短剣道場だったが、アスカは人にものを教えるのが好きらしく、
「まずは、両手で剣をまっすぐ上に振りかぶって、そしてまっすぐ振り下ろす。掛け声をかけた方がいいな。掛け声は『エイ!』でいこう」
「エイ!」
四人が一斉に木の短剣を振り下ろす。
「まだ
「エイ!」
「もう一度」
「エイ!」
「もう一度」
……
「よーし、
男子マネージャーの俺は、みんなに汗拭き用のタオルを配って歩く。
「おまえたちが休憩している間、私とマスターで
何の相談もなしに、模範演技をするはめになってしまった。
「わかった。それでアスカは
「いいえ、素手だと模範演技にはなりませんから木の短剣を使います。だれか木剣を貸してくれ」
渡された木の短剣を両手で中段に構えるアスカ。
「マスターは八角棒で構えてください。私の方から攻撃はしませんから、安心してください」
いや、安心はできんだろ。素手のアスカに一撃も入れたこともないのに、今回は短剣を
「それでは、マスターお願いします」
こうなったら仕方がない。俺も収納から『神撃の八角棒』を取り出し構える。
「どこからでもどうぞ」
相変わらずの上から目線なヤツだ。今日は観客もいるので、
「行くぞ! アスカ!」
最初は
「バシーーン!!」
アスカが振り下ろしたただの木の短剣が俺のアーティファクト『神撃の八角棒』を弾き飛ばした。観戦中の四人には、俺の動きは目で追えただろうが、アスカの振り下ろしは見えなかったろう。
それじゃ模範演技にならんじゃないか。
手加減してなかったら、斬撃が衝撃波を作り出して辺りは
手が痛ってー。絶対これはPAが減った。俺じゃなかったら大ごとだったぞ。俺だからやったんだろうけど。
「アスカ、もう少し振りを遅くしないと、周りの四人には剣の動きが見えないぞ」
「マスター、申し訳ありません。つい、マスターを
アスカが意識しないで何かをするはずはない。最近は口までうまくなったようだ。
「じゃあ、次行くぞ」
八角棒を拾い直し、今度は
「バシーーン!!」
また、八角棒が吹き飛ばされた。手も痛い。しかもアスカの顔が
このところというか、キルンでの訓練以来、訓練をさぼっていた俺はアスカに嵌められたようだ。
こうなったら、何としても、ヤシマダンジョンで見つけた「
「マスター、しばらく八角棒を振っていないにもかかわらず、素晴らしい突きでした。お見事です」
いまさらおだててゴマをすっても遅いぞ。
「そうか? そんなに良かったか。フフフ」
われながら、チョロかった。チョロインの男バージョンはなんていうんだろ? 乙ゲーはやったことないからなー。女なら、ヒロイン。それに対して、男はヒーロー、そしたら、チョロインに対してだとヒがチョになるわけだから、チョーロー。これだとどっかのおじいさんみたいだな。
「マスター、そろそろ戻ってきてください」
さっきから四人が静かだと思って見まわしたら、みんなアスカの方を見て固まってしまっていたようだ。
「おーい。四人ともいいか? 今のを見て分かったと思うが、アスカはとんでもなく強いんだからな。決して俺が弱いわけじゃないんだぞ。そのアスカにおまえたちは剣を習ってるんだ。絶対に強くなる」
「はい」
いい返事だ。
さりげなく、俺も実はそれなりに強いアピールをしつつうまく
さすがは
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