第137話 屋敷完成2


 屋敷の引き渡し当日、


 アスカと俺、それとフォレスタルさんとで、完成した屋敷を見て回っている。シャーリーは今日も学校に行っていて、シローは『ナイツオブダイヤモンド』でお留守番るすばんだ。


「まず、お屋敷の周りからご説明します。屋敷のある北側のブロックは2メートルほどの石積みのへいですが、馬場ばばとした南側のブロックはこれまでの説明通り木製のさくとしています。北側の塀については、施工前せこうまえのご説明を私の方で失念いたしておりましたので、サービスさせていただきました。 


 門柱ですが、ブロックに合わせこのように石積みの柱になっており、門扉もんぴ御覧ごらんの通り鉄製の二枚扉で内開きです。


 こちらが厩舎きゅうしゃで、四頭まで馬を繋ぐことができます。その奥が飼葉かいばなどを入れておく倉庫、いわゆる納屋なやですね。馬車の車庫は厩舎のとなりです。


 南側のブロックは、とりあえず、牧草を植えています」


「それでは、玄関に入ってみましょう」


 フォレスタルさんが開けた重そうなドアから屋敷の中に入る。


 そこはかなり広めの吹き抜けふきぬけの玄関ホールで、ドアの上には明り取りの窓、右手には二階への広めの階段があり、その先が廊下になって左右に続いている。 新築の木の香りが気持ちいい。



 左手のドアを開けて、フォレスタルさんが案内を続ける。


「ここが錬金作業場です」


 西向きではあるが窓が大きく取られた明るい部屋で、窓側の壁と反対側の壁に接して長机のような作業台が並べられており、流し台も各作業台の中央辺りに取り付けられている。ふたのされた排水溝が三本、ゆかを走っている。


「作業台の下は簡単な物入ものいれになっています」


 フォレスタルさんがパタパタと何カ所か物入の扉を開いて中を見せてくれるので、そのたびにアスカと二人でのぞき込む。


天上てんじょうの真ん中にあるあなが、換気かんき用のあなで、排気用煙突えんとつにつながっています」


「右手奥の扉の先が錬金素材置き場です。錬金素材置き場の床と天井、周囲の壁と入り口の扉は特別製で、密封みっぷう可能になっています」


「次は、サンルームに参りましょう」


 錬金作業場を出て、玄関ホールを横切り、今度はサンルームに入る。


 サンルームには天井はなく、細めのはりが数本縦横格子状こうしじょうに入っていて、格子の交点には照明器具が取り付けられていた。廊下のある西側を除いた三面と三角の屋根部分がガラス張りになった部屋だ。扉の脇に小さな流し台が一つ付いている。


「こちらがサンルームです。非常に明るい部屋になりました。夏場はかなり高温になると思いますので、上部にあるガラス窓をこちらの棒を使って開けるようにしてください。そこの流し台は、サンルームで植物を栽培さいばいなさるというお話でしたので、水やりなどに便利かと思い取り付けました」


 サンルームの次に回ったのは台所。


「こちらが台所です。施工前せこうまえのご説明通り、流し台は普通水と温水が出ます。大型調理台とその横の大型コンロ、オーブンが一台、用具ようぐ棚、食器棚です」


「貯水タンクや排水タンク、温水装置などについては後でお渡しする取り扱い説明書をご覧ください」



「台所に続いてこちらが食堂です」


 食堂はかなり広め。


「食堂に続いて、こちらがリビングです」


 リビングから外に出ると、テラスになっていて白い玉石が敷き詰められている。


 その後も各部屋を案内され一応の確認を続ける。



「ここが問題の浴室です。入り口が男女別々で二カ所。中に入ると着替え室です。着替え室から浴室に入って見ましょう」


 フォレスタルさんが浴室の扉を開けると大き目の浴槽と洗い場が普通にあった。そこはいいのだが、二つの風呂を壁で仕切ってあるはずだったが、なぜか最初の設計であった木の板でできた衝立ついたてが立っていた。


「あれ、壁で仕切っていたはずなんですが、オカシイデスネー」


 この人わざとだよ。もういいよ。バスタオルでも掛けとくよ。


 確かに、まっすぐ見るとある程度向こうの浴室が見えるのだが、角度が少しでもあると板の厚みが邪魔じゃまをして向こうが見えない。さすがによく考えられている。これはこれでありかもしれない。フォレスタルさんがこちらを向いて親指を立ててうなずいている。俺もついうなずいてしまった。それに、今度雇うことになったメイドの二人は、見た目はナイスバディだったから男子高校生的期待はあるかも。



 そのあと二階の説明を受け、屋敷の引き渡し確認を終えた。


「それでは、これが屋敷のカギになります。一本一本どこの鍵か分かるように鍵に付けた札に書いてあります」


 鍵束かぎたばを渡された。


「そしてこちらが、屋敷に設備した魔道具類の取扱説明書です」


 今度は、冊子さっしと紙束を渡された。こっちはアスカに読んでもらっとけば間違いないだろう。


「ボルツさんの工房の方は確認前ですが、それも含めて代金を商業ギルドのフォレスタルさんの口座に今朝けさ振り込んでおきましたので確認お願いします。本当にいい屋敷を作ってくれてありがとうございます」


「ありがとうございます。また何かあればよろしくお願いします。それとボルツさんの工房の竣工しゅんこう、受け渡しは明後日あさってですのでよろしくお願いします」


 一仕事終えたフォレスタルさんが自分の乗って来た馬車に乗って帰って行った。





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