第115話 初めての友達
何もなければ、
「マスター、西風の影響で艇が東に流されています。補助加速器も使い
「東に
「了解。東に旋回します」
艇が大きく右旋回し、東を向いた。前方には山並みが見える。連なる山々の山頂は、今の艇の高度より高いようで千五百メートルくらいありそうだ。
「アスカ、あの山の向こうは海だっけ?」
「セントラル湾の
「海に出てから、海岸沿いに北上して適当なところで、もとの経路に戻ろう」
「了解。全補助加速器、
「速度、二百七十、高度千二百。上昇続けます。高度千二百五十、千三百、……、上昇限度千五百。超えます。
山越えに、若干高度が足りません。補助加速器、出力上げます。百五%、百十%、 百二十%」
足の下で加速器が唸っているのが分かる。
「速度、二百七十五、高度千七百、七百二十五、七百五十、七百七十五、千八百。山頂と山頂の間を抜けます」
ギリギリセーフ。千五百メートルくらいと思っていたが山頂は二千メートルくらいあったようだ。危ない危ない。
一度、メイン加速器の噴気方向も下向きにして、全力で上昇すればよかったんだろうけど、アスカが出来ると思ってそうしたんだろうから、実際は危なくなかったんだろう。
「速度、二百五十五。西風弱まりました。補助加速器停止します。このまま海岸線まで
艇は高度をゆっくり下げながら、前方に見える海岸線を目指して進む。海岸線は、砂地のようだ。青く広がる海に陽の光が反射してキラキラ輝いている。洋上には何隻かの帆を広げた船が見える。
そこで艇が大きく左旋回し、北を向いた。
「アスカ、今何時だ?」
「午前十一時四十五分です。北の砦への到着は、山越えに時間を取りましたので、午後二時三十分ごろになります」
「少し早いが昼にするか? 手は放せるんだろ?」
「問題ありません」
俺は『ナイツオブダイヤモンド』
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
こちらは、シャーリーのいる付属校の教室。午前の授業が終わり、昼休憩の時間。
シャーリーも『ナイツオブダイヤモンド』
「エンダーさん。少しよろしいかしら?」
シャーリーはクラスの女の子がいきなり自分に話しかけてきたことに少し戸惑う。
「はい、かまいません。えーと、」
シャーリーは手に取ったサンドイッチを箱に戻し返事をした。
「エメルダ・ルマーニ。エメルダと呼んでいただいて構いません」
いわゆる、金髪縦ロールお嬢さまの登場だ。
「それでは、エメルダさん。わたしのことはシャーリーとお呼び下さい。それでお話というのは?」
「いつも、シャーリーさんがお一人でお食事をしていらっしゃるのを見て、よろしければ、私もご一緒させていただこうかと思いましたの」
「ありがとうございます。私もご一緒できれば嬉しいです」
「よかった」
そう言って、エメルダはシャーリーの隣の机をシャーリーの机にくっ付けて、隣に並んで座ってしまった。そして手に持ったカバンからお弁当を取り出して机に並べた。こちらもサンドイッチセットだ。
「シャーリーさんのお弁当って凄く
「そうですか? エメルダさんのお弁当もすごくおいしそうですけど」
「ねえ、その卵サンドと、こっちのローストビーフサンド交換しない?」
「いいですよ」
サンドイッチをお互い交換する二人。
「おいしー!」
さっそく、一口いただくエメルダ。
「シャーリーさんのお弁当を作った人は天才ね。このサンドイッチ、すっごくおいしいわ! まさか、シャーリーさんがお作りになったわけじゃないですわよね?」
「ええ、私なんかじゃ作れません。今泊っている『ナイツオブダイヤモンド』っていう宿屋の中のレストランに頼んで作ってもらってるんです」
「『ナイツオブダイヤモンド』っていうと、セントラルで一、二の宿屋さんの『ナイツオブダイヤモンド』ですわよね」
「きっとそうだと思います」
「シャーリーさんの保護者は、コダマ子爵とエンダー子爵って自己紹介の時
「お金持ちとは思いますが、いま私たちが泊っている『ナイツオブダイヤモンド』は、なんでもエリクシールの関係で使わせてもらっていると聞きました」
「そういえば、コダマ子爵とエンダー子爵は、エリクシールで子爵になられたのよね。私も一度でいいから伝説とまで言われたエリクシールを見てみたいわ」
「わたしは、二人がエリクシールを作っているところも見たこともありますが、でき上がったエリクシールは白く輝いてて、すごくきれいなお薬でした」
「いいなー。ねえ、コダマ子爵とエンダー子爵って
「コダマ子爵は十六歳と聞いています。エンダー子爵の歳は聞いてませんがまだ
「お二人はお付き合いしてるのかしら? いつもご一緒って話だけど」
「いつも一緒なのはそうなんですが、お付き合いとかそういうのではなく、エンダー子爵はコダマ子爵のことをマスターと呼んでいますから、どちらかと言えば、コダマ子爵がエンダー子爵のご主人さま?なんじゃないでしょうか」
「キャー! すごい、ご主人さまプレー!」「は、鼻血が!」「誰か、止めてー!」
……。
ここで、いつの間にか、シャーリーとエメルダが食事しながら話し合っているのを聞いて周りに集まって来ていたほかの女子生徒たちが騒ぎ始めた。
「これも、
「はい、先日お二人ともAランクに
「Aランクの冒険者というと、すごくお強いんですよね」
「冒険者ギルドの最上位ランクですから、すごく強いと思います。お二人とも今まで一度も
「ねえ、どういったモンスターを
「はい、あります。お二人がまだAランクの冒険者になるずっと前のことですけど、……」
シャーリーによる、幻獣ヒプチャカメチャチャとその上位種ハプチャメチャチャの話が始まってしまった。両手を可愛らしく握りしめてショウタとアスカの
エメルダを含む周りでその話を聞いていた女子生徒たちは、ヒプチャカメチャチャとハプチャメチャチャに恐怖し、最後にそれらを無事
そんなこんなで、話に夢中になったシャーリーとエメルダ、仲良く二人とも自分のサンドイッチ弁当をほとんど残すことになった。
◇◇◇◇◇◇
「ハ、ハ、ハ、ハックシュン! フー。ブルブル。アスカ、なんだか寒くないか?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます