第102話 潜入!マスカレード仮面
学校の
正門の横に待たせてあった馬車に乗り込み、家具屋さんに連れて行ってもらう。
「シャーリー、気に入った机はあるかい。これなんかどうだい? いろいろ引き出しもついてて便利そうだぞ」
「シャーリー、こっちの机の方が、おまえに合っていると思うぞ、ここが上に
なに? アスカさん、俺と張り合ってんの?
「シャーリー、この机には、ゆったりしたこの
「シャーリー、勉強するなら、椅子の背もたれがあまり
アスカさんそろそろお互い止めませんか? シャーリーがもう
結局われわれは口を挟まず、シャーリーに自由に選ばせることにした。やはり少し遠慮したのだろう、アスカと俺の勧めた物のグレードは当然上の上だったがシャーリーの選んだ物のグレードは中の上程度だった。気にするなと何度も言っていたのに。
その店で、机と、椅子、それに本棚を買って、待たせていた馬車に乗り『ナイツオブダイヤモンド』に帰った。品物は当然収納してお持ち帰りだ。
『ナイツオブダイヤモンド』では、支配人さんにお願いし、箱馬車によるシャーリーの日々の送り迎えができないか? と頼んだら、
「箱馬車での送迎は本来スイートにご宿泊のお客様へサービスで行ってますので、なんら問題ございません。そのほかにご要望がございましたら何なりとお申し付けください」
初めて聞いたサービスだが、今、支配人さんが決めたサービスかもしれないな。
部屋に戻り、今日買いそろえた物を収納から取り出して片付けていく。その作業が大体終わったところで、
「シャーリー、俺たちに学校の制服を着て見せてくれるか?」
やっぱり晴れ姿を見てみたいよね。
俺たちは、シャーリーの使っている部屋を出て、リビングで彼女の着替えを待っていると、しばらくしてシャーリーが
「ご主人さま、いかがですか?」
上着は濃い灰色のオーソドックスな
「すごく似合ってるじゃないか、なあアスカ?」
しまった! アスカに話を振ってしまった。
「そうですね、思った以上です。シャーリー、後ろを向いて」
普通に返した。
「はい」
素直に後ろを向くシャーリー。動きに合わせて広がるプリーツスカート、なかなか分かってるじゃないか。
「シャーリー、もう一度前を向いて」
動きに合わせて再度広がるプリーツスカート。
『マスター、エリクシールがシャーリーの胸に効果がないのが残念ですね』
それを言ってはいけないヨ。まだ十三歳なんだからね。
「すごく似合ってて良かったよ。それじゃあシャーリー、制服は着替えておいで、みんなで食事に行こう」
「はい。ご主人さま」
翌日、明け方、俺は夢を見た。
八時に頼んだ馬車に乗り三人で付属校に向かう。シャーリーの制服姿が
そんなこんな考えていると十五分ほどで馬車が校門の前に着いたので三人とも馬車を降りる。
馬車には午後三時三十分に、ここにシャーリーを迎えに来るよう頼んでいったん帰らせた。
校門の脇にはすでに、昨日のラブレス先生が待っており、互いに
さあ、ここからが俺たちの本当の仕事だ。
アスカと俺は以前から目を付けていた魔道具屋に急いだ。まだ早いかなと思ったがアスカが
ここで買おうと
これから潜入調査をしようとするわれわれにはおそらく不要な機能だと思うがとにかくボイスチェンジャー付きなのである。
そして、シルクハット。これは投げつけると、つばの部分が凶器になり相手を切り裂くことが
この装備二人分で驚きのこの価格、ズバリ小金貨六枚! 高いのか安いのかは全然わからないが、多分売れ残り商品だったのだろう。おまけでピンク色の可愛らしいステッキを貰った。店を出て、この店が本物の魔道具屋であって、街のおもちゃ屋さんではないことを確認したのはいうまでもない。
ミッションのファーストステップは完了した。次はセカンドステップ、目標建造物への
俺たちは、もと来た道を引き返し、少し横道にそれ、シャーリーが
潜入した校庭の地面に手をついてその場にしゃがみ、周囲を再確認。
よし。次はターゲットにアプローチだ。
ターゲットの位置は既に
アスカにハンドサインを送る。
最初はグー、そこから人差し指を一本立てて左右に振って軽く前を指さし、一度グーに戻してからパッと開く。
もちろん何も打ち合わせをしていないので、なんの意味はないのだが。
なぜか、俺のハンドサインを理解したらしいアスカがそれに
教室は校舎の南側に面しており、北側が廊下になっている。二階の教室の校庭側の窓の外には生徒の転落を防ぐため幅一メートルほどの出っ張りがある。俺とアスカは今その出っ張りの上でしゃがんでいる。
「みなさん、今日このクラスに転入した、シャーリー・エンダーさんです」
中の声がちゃんと聞こえる。高ステータスのおかげだな。
「エンダーさんは孤児奴隷で、すでにご両親は亡くなられています。先ごろリリアナ王女殿下にエリクシールを
ここで、教室内からどよめきが起こった。
「そういうことですので、皆さん、エンダーさんと仲良くしてあげてください。エンダーさん、何か一言お願いします」
「シャーリー・エンダーです。私は両親の死後、迷宮都市キルンで孤児奴隷として育てられ、今のコダマ子爵に買われました。今日まで実の子のようにかわいがってもらっています。そして、このように学校まで通わせていただきました。
私は、この学校で学んだことをお世話になっている、コダマ子爵、エンダー子爵お二方のために役立てたいと思っています。この左手の甲にあるのがみなさんご存じの
ここで教室から大きな
その後シャーリーにクラスのみんなから質問があったが、無難に答えていたようだ。
「マスター、満足しましたか? そろそろ行きましょう」
「はい」
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