第26話 お手伝いさん
何とかそれほど遅くなることなく商業会館に着いた。駆け足できたので、
「あのう、すみません」
受付のお姉さんは今日は一人だ。交代で昼食を取っているのかな。
「はい。ショウタさま。カーラがお待ちしていますので、こちらにどうぞ」
案内されて二階の応接室に行くと、カーラさんと四十歳くらいの女の人がソファーに座っていた。
立ち上がった二人に
「遅くなって、申し訳ありません。ショウタです」「アスカです」
「そんなに、待っていたわけではありませんから気になさらずに。こちらが、今回ショウタさまに紹介したいコーネリア・ヒギンスさんです」
「ショウタさま、コーネリア・ヒギンスですよろしくお願いします」
お互い名前を交換したところで席に着く。
こういった場合、何も言わなくてもアスカは席に着かず、俺の後ろに立って控えている。どこで習ってきたのだろう?
「ヒギンスさんは、三年前ご主人に先立たれ、現在ひとり身です。ご子息も独立して立派に働いていらっしゃるので、自由になる時間があるためご自身でできる仕事を探していらしたところです。ヒギンスさんは、亡くなられたご主人と結婚される前は、ご両親が経営するレストランで接客以外にも
今のご自宅も、ショウタさんのお宅に割と近いですし、非常に良い方が見つかったと思い紹介しました」
ヒギンスさんの見た目は、やや小太りのためか、おっとりとした感じで、ややたれ目。髪は後ろで丸くまとめている。背は、シャーリーよりもちょっと高いくらいのご婦人だ。この人ならシャーリーもうまくやっていけるんじゃないか。
「当方の事情を、聞いておられると思いますが、先日、家事全般を任せようと奴隷の子を買って来たのですが、料理に自信がないようなので、しばらくその子に料理を教える
「私で良ければ、喜んでやらせてください」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
「それでしたら、契約内容を確認させていただきます。契約期間は三カ月。コーネリア・ヒギンスは、ショウタの自宅において一日三食、食事を作る
これでよろしいですね? よろしければ、給金の三カ月分の合計小金貨三枚を私の方でいったん預からせていただきます。支給忘れ等を防ぐ意味合いもありますのでご了承ください」
「それでお願いします」
「よろしくお願いします」
「こちらこそ。それでは、ヒギンスさん、案内しますから一緒にうちに行きましょう。カーラさんありがとうございました」
「いえいえ、お気になさらず」
「ショウタさまのご自宅は、ここだったんですね。ここの靴屋さんは良く存じ上げてました」
「『ショウタさま』は、ちょっと
「お帰りなさいませ、ご主人さま、アスカさん」
「ただいま。シャーリー。こちらの女性が、食事を作る
「よろしくお願いします。ヒギンスさま」
「シャーリーちゃん。わたしを呼ぶときは、ヒギンスでいいのよ」
「それでしたら、ヒギンスさん 改めてよろしくお願いします」
「こちらこそ」
「ショウタさん、後はシャーリーちゃんと適当にやっているからもう大丈夫よ」
「私と、アスカは作業場で作業をしてますから。とりあえず当面の生活費をお渡しします。足りなくなったら教えてください」
金貨が数枚入った小銭入れをヒギンスさんに渡しておく。
「あら、おうちの中も結構きれいにしてるのね。シャーリーちゃんが掃除してるの? 立派だわ」
「ありがとうございます。ヒギンスさん」
「『ありがとうございます』じゃなくて、『ありがとう』でいいのよ。もっと砕けた調子でいいの。えーと、さっそくだけど、台所用具と食材なんかを確認させてちょうだい」
「はい。わかりました。こちらです」
ヒギンスさんはおっとり系ではなくしっかり系だった。
しばらくして、
「ショウタさん。明日からの食材なんかの買い出しにシャーリーちゃんも連れて行ってきます」
「行ってらっしゃい」
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