第144話 それぞれの夢 4
・・・
「リベルトがガスパール閣下の次期後継者候補、ですか・・・。」
「うむ・・・。いや、もちろん、まだ確定の話ではない。トーラス家の意向もあるだろうし、リベルトくんの気持ちもある。それに、やはり様々な障害もあるからね。しかし、それらを踏まえた上でも、それがもっとも良い落とし所であると私は考えているよ。それに、端から見る分には、リベルトくんも満更でもなさそうだしね・・・?(ニヤリ)」
「・・・アイツ、昔から年上のお姉さんに弱かったからなぁ~。」
「・・・確かに。」
「アルメリア御姉様や、ヴィアーナさんにも憧れを抱いていたみたいだしねぇ~。」
「ナタリー様も私達とは同世代ですが、大人っぽくてとても美しくていらっしゃいますしね。まぁ、幼馴染みとしては、リベルトが幸せならばそれならそれで良いのですけれど・・・。」
その後、噂を聞き付けて集合したレイナード、テオ、バネッサ、ケイアにガスパールが己の思惑を語って聞かせていた。
本来ならば、レイナードらとガスパールとでは身分が違うので、これほどフランクに話す事もそうはないのだが、アキトと言う規格外の“平民”と付き合う様になってからは、ガスパールの価値観にも大きな変化が訪れていた。
そんな当たり前の事に、改めて気付いたのである。
レイナード達は、ユストゥスらのある意味直弟子であるし、『冒険者訓練学校』の臨時講師を務めている以上、非常に優れた人材である事はガスパールも承知していた。
それどころか、ある意味では『冒険者訓練学校』のカリキュラムの概要を(もちろん、『シュプール式トレーニング方法』をもとに、大まかな内容はアキトとドロテオが中心になって詰めたのではあるが)具体的に形作ったのはレイナード達である事から、ガスパールも彼らの事は高く評価してさえいたのである。
「ところで話は変わるが、レイナードくん達も『
ナタリーに振り回されながら顔を赤くしてアワアワしているリベルトを遠巻きに眺めながら、ガスパールはそんな風に急に話題を変えた。
「「「「へっ???」」」」
思っても見ない提案に、レイナード達は面を食らってしまった。
「い、いえ、お話は大変有難いのですが、僕達には今のところ臨時講師の仕事がありますので・・・。」
「もちろん、今すぐにとは私も言わないさ。しかし、今はまだ旧態然とした風潮が色濃く残ってはいるが、これからの
「は、はぁ・・・。」
ハハハッと、言わなくても良い裏話を交えつつガスパールは冗談めかしてそう言った。
これは、『冒険者訓練学校』のコンセプト的にも似通った考え方の一種だが、ガスパールは政治家的観点から、レイナード達を一種の“プロパガンダ”として利用出来るのではないかと考えていた訳である。
もちろん、ガスパール本人が言う様に、『ノヴェール家』に取り込めれば万々歳だが、そうでなくとも、レイナード達が方々で活躍すれば、レイナード達に憧れた若い者達の発奮材料となるだろう。
それは長期的に見れば、ガスパールにとっては優れた人材が多く輩出される可能性を高まる訳で、当然プラスとなる。
アキトもそうした意味では凄まじい影響力を持つが、アキトの場合は次元が違いすぎるので、憧れだけで終わってしまう可能性も否めないのだ。
そうした意味では、比較的親しみやすいポジションのレイナード達の方が、そうした宣伝効果が高いとガスパールは見ていた訳である。
「まぁ、考えておいてくれたまえ。それに、一度断られたとしても、また気が変わったら『
「「「「は、はぁ・・・。」」」」
とりあえず自分の言いたい事だけ言い終えると、ガスパールは己の娘の不器用な攻勢からリベルトを救う為にそう話を締めくくった。
良いか悪いかはともかく、自身のペースに持っていくと言う意味では、ガスパールはレイナード達よりやはり優れた資質を持っている様だ。
そのガスパールの後ろ楯があれば、気が付いた時にはリベルトの婚姻話が纏まっている可能性を幻視して、レイナード達は
まぁ、もしかしたら、それはそれで幸せな事かもしれないがーーー。
・・・
「将来、か・・・。俺はどうすっかなぁ~。」
その後、嵐の様なガスパールとナタリーの訪問を何とか乗り切ったレイナードとバネッサは、本日の仕事を終えてルダの街を散策していた。
奇しくもテオ、ケイア、そして半ば強制的とは言え、リベルトの将来を垣間見たレイナードは、やはり思うところがある様だった。
「レイナードの好きにすれば良いよ。私は、レイナードに付いていくだけだし・・・。」
「バネッサ・・・。」
すでに成人を迎え、鈍感なレイナードもバネッサからのアプローチにようやく気付き、今や二人は歴とした恋仲になっていた。
二人は見詰め合い、しばらくの沈黙が支配する。
「お~う、レイナードとバネッサじゃねぇ~の。何だ、デートか?」
「「・・・へ???」」
と、そんな何とも言えない良い雰囲気をぶち壊して、レイナードとバネッサに声を掛ける青年がいた。
「ちょっ、アナタッ!二人の邪魔をしたら悪いわよっ!!」
「だぁ、だぁっ!」
「あれっ?そうだったか?」
「な、何だ、ポール兄ちゃんじゃん・・・。」
「それに、イザベラさんとレオンくんも。こんにちはぁー!」
バツの悪い表情を浮かべながら、空気を読まない
「オホホホホォ~、こんにちはぁ~。」
「だぁ、だぁっ!」
「こんにちは、イザベラさん。ご夫婦揃って、レオンくんとお散歩ですか?」
「そうなのよぉ~。今日はポールも休日だし、たまにはレオンに色々見せてあげたいからねぇ~。」
「だぁっ!」
「良かったねぇ~、レオンくんっ!」
バネッサは、イザベラに抱っこされながら元気にはしゃぐレオンにニコニコと挨拶を交わす。
どうやら、バネッサは子供が好きな様子である。
「あぁ~、わりぃなレイナード。どうやらお邪魔だったかね?」
「い、いや、そんな事ないけど・・・。しっかし、今だに信じられねぇよなぁ~。ポール兄ちゃんに奥さんと子供がいるってのは。」
「・・・そりゃ、どういう意味だ・・・?」
「あ、いや、アハハハハ~!」
ポール・アントムは、アントム工房の息子で、ヴィアーナに熱を上げていたあの何処か三枚目の青年だった。
まぁ、結局ヴィアーナとの関係性に進展はなく(まぁ、そもそもポールが一方的に熱を上げていただけだが)、その恋愛は上手くいかなかった。
しかし、人生何処で何が起こるか分からないもので、ヴィアーナがアキトと技術提携を交わした関係で『
ヴィレッダはオシサマ趣味であり、トーラス家の執事であるヨーゼフに夢中だったし、アンナはその容貌はともかく言動が少し幼いところもあり、ポールの好みとは合致しなかったのだが、イザベラはポールの好みにドストライクであった。
ただ、そこまで繊細な男ではないものの、ヴィアーナの件で失恋を経験したポールが、その三人娘へといきなりガツガツ行かなかった事が逆に幸いし、良い友人関係、良い印象をグループ単位でポールに持つ様になった。
ポールも、真面目にしていれば、所謂イケメンの部類に入っていたのである。
それに、今現在ではダールトンが尽力した技術者移住計画によって人材の補強が済んでいるが、その当時はそうしたゴタゴタもあり、単純に仕事が忙しかった事もあった。
そんな事もあり、仕事上の真面目な一面や、プライペートの少しダメな一面も好意的に解釈されて、ポールとイザベラの距離が徐々に詰まっていった訳である。
無事に恋仲となった頃には、アキトも言及していた通り、ポールのダメな部分も鳴りを潜め、イザベラとの将来を見据えて仕事に没頭。
恋愛によって仕事もプライペートも充実する典型的な例と言えるだろう。
その末で二人は結ばれ、レオンが生まれてからは職人としてもいっぱしとなり、良いパパとしての面も持つ様になったのである。
余談であるが、ポールの両親であるタンリー爺さんとモリーはようやく身を固めた息子に泣いて喜び、肩の荷が降りた様子であったそうだ。
今では、孫を溺愛するお爺ちゃんとお婆ちゃんとなり、イザベラとも良好な関係を築いている様子である。
「まぁ、いいけどよ。んじゃ、どうやらお邪魔みたいだし、俺らは行くわ。」
「あ、いや、ちょっと待ってよ、ポール兄ちゃんっ!」
「あん?どうかしたん?」
「え~と、その、少し相談があるっつーか・・・。」
「・・・お前がそんな事言うなんて、珍しい事もあんだなぁ~。」
デートの邪魔をした事を軽く謝り、イザベラとレオンを連れて別の場所に移動しようとしたポールを引き留め、レイナードはそう言った。
それに、ポールも茶化しながらレイナードの表情を窺い見て、「まぁ、いいけどよ。」と、言った。
・・・
レイナード、バネッサ、ポール、イザベラ、レオンはルダの街中心の大広場に移動した。
ここは、数多くの露店が軒を連ね、公園なども整備された、所謂“住人の憩いの場”であった。
まだ歩くまでは至っていないが、赤ん坊であるレオンが遊ぶには事欠かない場所であり、バネッサとイザベラ、レオンが遊びに興じている片隅で、ポールとレイナードは露店で買った飲み物を片手に、公園のベンチに腰掛けていた。
「んで、相談って何よ?」
「・・・実は・・・。」
ポールとレイナード達の関係を一言で表すのならば、(血は繋がっていないが)親戚のお兄さんと子供達、と言った感じである。
それ故に、軽口を叩き合ったり、ぞんざいな扱いをしたりと、気の置けない関係だからこそ可能な事も多くあった。
更には、これは良い悪いはともかくとしても、鍛冶職人としての一面はあるものの、ポールはレイナードの周囲では貴重な“普通の人”である事から、レイナードとしてはちょっとした悩みを打ち明けるにはこれほど適した人物もいなかったのである。
「ほぉ~、アイツらがそんな事にねぇ~。」
「いやいや、時が経つのは早いもんだ。」と、何処かおっさんくさい感想を漏らすポール。
実際、“三枚目の近所のお兄ちゃんと悪ガキ共”→“いっぱしの鍛冶職人兼一児のパパと立派に成長した少年・少女”と、対外的にはポールとレイナード達の関係性は更新している訳で、ポールのその感想も割と的を得ているのであるが。
「んで、さ。俺はどうしようかなぁ~って思っていて・・・。」
「・・・なるほどな。」
レイナード自身も、身近な者達が自分なりの“夢”を持って動き始めている事に対して、自分でもよく分からない焦りを感じていたのである。
それを、とにかく誰かに聞いて欲しかったのかもしれない。
「・・・別に焦る必要はねぇ~んじゃねぇ~かなぁ~?」
「・・・えっ・・・?」
飲み物を煽り、一息吐いた後に、ややあってポールはそう呟いた。
「いや、正直お前が何に悩んでるのか俺にはよく分からんが、騎士に成りたければなれば良いと思うし、今のお前なら簡単だろ?」
「あ、いや、それは逆に迷惑になるっつーか・・・。」
「まぁ、その懸念も分からんではない。俺にはよく分からんが、お前達の実力がすでに一般のレベルにない事くらいは俺にも分かるからな。優れた
「そう、なんだよねぇ~。」
「まぁ、それも結局は周囲の者達次第なんだけど、結果空気や士気に関わるってんで、
「・・・。」
アキトは、自身の『前世』の経験から、突出した才能を持つ者が嫉妬の対象になる事をよく理解していた。
その末で、
それに関しては、レイナード達が想定以上の才能を持ち、それ相応の努力をした結果、非常に優れた
一方のポールは、以前はむしろそうした優秀な者達を嫉妬する側だった。
それ故に、
それに、レイナードの父であるバドもアキトやポールと同様の懸念を持っていた。
レイナードもそれが分からないほどもう幼くない。
その末で、騎士になる夢を半ば諦めた訳なのである。
「けど、だったら冒険者として活躍すれば良いんじゃねぇ~の?
「まぁ、うん・・・。」
どうも歯切れの悪いレイナードに、ポールは溜め息を吐いた。
いや、ポールだからこそ、むしろそのレイナードの煮え切らない態度は理解出来た。
何処か、レイナードは、“夢”に
ある種の後ろめたさを持っていると言っても良い。
「なぁ、レイナード。俺を見てみろよ。今でこそ、ようやく親父にも認められたいっぱしの鍛冶職人になったが、俺は別に鍛冶職人に成りたかった訳じゃない。文不相応に俺も“夢”を抱いて、家を飛び出そうと思った事もある。」
「・・・え?」
それ故、ポールは自身の経験から、レイナードの迷いを
「やっぱ、“自由”な冒険者には憧れるモンよぉ~。自分の知らない土地だったり、世界だったり、それに女の子だったり、さ。見てみたいって思うじゃんか。」
「・・・。」
「けど、俺の実力じゃ無理だった。仕事で武器なんかは扱ってるが、それを実際振り回して魔獣やモンスターを倒すなんて事はな。んで、何もかんも中途半端なまま、仕方なしに家業を継ぐ事にしたんだわ。」
「まぁ、それもてんでダメだったけどよ。」と自嘲気味に呟くポール。
レイナードは、なるほどと思っていた。
何処かちゃらんぽらんに見えて、ポールも懸命に足掻いていたのかもしれない。
まぁ、結果、それが裏目に出て、何処か空虚なまま、無為に時間を過ごしていたのだが。
「けど、まぁ、人生何があるか分からねぇモンだよ。
「自分の・・・?」
「それも悪い事じゃねぇ。志が高ければ、それでも立派にやってける奴はごまんといるからな。けど、大抵の奴はそれだけじゃダメなのよ。それだと自分を甘やかしちまうからな。」
「・・・。」
「愛する者だったり、大切なモンが出来て、ようやくやりたい事じゃなくやるべき事に対する覚悟を持てたって感じかな?
ハハハハハッと照れ臭そうに笑うポールに、レイナードは得も言われぬ眩しさを感じていた。
「けど、不思議なモンで、誰かの為に、って思うと、案外苦じゃねぇんだよな。あんなに面倒くさかった仕事も、今は楽しくやれてるぜ。まぁ、親父に認められたってのもデカイかもしれねぇけどよ。」
「・・・そっか・・・。」
「まぁ、だから、あ~、上手く言えねぇけど、俺ですらいっぱしにやれてるからよ。色々やってみんのも有りなんじゃねぇかと思う訳よ。大事なのは、何の為に、誰の為に、って事じゃねぇかと思うんだわ。」
不器用ながらも、精一杯の自身の考えを述べるポール。
それに、レイナードは感じ入るモノがあった。
レイナードの心境は、ある意味青春の全てを部活に捧げた部活少年の心境に近いモノかもしれない。
一つのスポーツに打ち込み、いつしかそれで将来生計を立てたいと考える様になっていた訳だ。
しかし、どういう形にせよ、その“夢”が打ち砕かれてしまう事も往々にしてある。
例えば家庭の事情だったり、怪我や病気なんかで、その道を断念せざるを得ない事もあるだろう。
そうなった場合、心にポッカリ穴が空いた様な状態になる。
今まで打ち込んでいたモノが、無駄になってしまうかの様な錯覚に陥るからだ。
しかし、その後も人生は続く訳で、“夢”破れたとしても、何とか立ち直って別の道を模索するしかない。
例え、それに納得出来なかったとしても、である。
そうした者達はごまんといる。
『前世』のアキトも、ある意味では
まぁ、アキトの場合は、素早く気持ちを整理して立ち直ったが、レイナードはそれを引きずったままだった訳だ。
まぁ、レイナードの年齢では、それは致し方のない事だろう。
むしろ、色々な事に迷ったり悩んだりするのは、若者の特権である。
それに、今のレイナードならば、何をしたとしても大成する事が可能だろう。
案外、それしかない、なんて事はなく、他にも道はいくらでもあるモノだ。
しかし、一つの“夢”に
レイナードは、そうした心境だった訳である。
しかし、ポールの
「サンキューな、ポール兄ちゃん。何か見えた気がするわ。」
「お、おう、そうか?まぁ、俺なんかの言葉で役に立てたんなら良かったわ。」
先程とはうってかわって、少し晴れやかな表情を浮かべていたレイナードに、ポールは内心安堵していた。
ポールはこれまで悩みを打ち明ける事はあっても、
まぁ、ポールよりも優秀なレイナードなら、下手な事は言わなくても、自分で道を切り開いていけたとはポールも思っていたが。
まぁしかし、人は時として誰かに背中を押して欲しい時もあるのだ。
そうした意味では、ポールは見事にレイナードの背中を押してやる事に成功したのである。
「何の為に、誰の為に、か・・・。ポール兄ちゃんも、カッコいい事言うじゃ~んっ!」
「うっせっ!恥ずかしいから、誰にも言うなよなっ!」
「ハハハハハッ、分かってるよっ!」
シリアスな話を終えて、二人はいつもと変わらない空間感を醸し出していた。
それを遠巻きに眺めていたイザベラとバネッサは、顔を見詰め合わせて微笑み、レオンが何故かウンウンと頷いていたーーー。
~数ヵ月後~
「やはり行くのか、レイナードくん?」
「ええ。やっぱ俺、
レイナードの騎士になる“夢”は、父親の背中を見て単純に憧れたからであり、『
また、彼の強くなりたいと言う思いは、『
どちらにせよ、誰かを守る為に戦う者の姿があった訳で、それをイコールでレイナードは
しかし、実際にはその“思い”の方が大事なのだ。
何の為に、誰の為に、そう在りたいのか?
それが明確に分かっていれば、騎士であろうと、憲兵であろうと、冒険者であろうと、ただの父親であろうと、そこに何の違いも存在しない。
その事に、改めて気が付いたのである。
「いやぁ~、煽った手前言いにくいんだけど、別に無理する必要はねぇ~んだぜ?」
『デクストラ』のメンバー、アーヴィンはバツの悪い表情で頭を掻きながらそう言った。
「いや、これは俺が自分で考えて下した決断ですから。別に無理はしてないっすよ。」
あっけらかんと清々しい表情で返されて、アーヴィンは「そっか・・・。」、と呟いた。
「寂しくなるな・・・。」
「あ、いや、それもそうだが、人員が一気に減ってしまう事の方が問題じゃないかい?」
「ああ、それに関しては問題ありませんよ。『ノヴェール家』の働き掛けで、方々の『冒険者ギルド支部』から人員を派遣して貰う手筈になっています。カリキュラム自体はすでにゴードガーさん達(元・『ムスクルス』、ドルフの仲間で現・『冒険者訓練学校』の教官)も要点は押さえていますし、テオとケイアは残る訳ですしね。」
「ふむ、なるほど・・・。つまり、本格的に『冒険者訓練学校』を広める算段が整ったって事だね?」
「ええ、その様です。」
ディナードは、『
各地の『冒険者ギルド支部』でも『冒険者訓練学校』普及させる為に、その教官候補となる人材を育成する目的を兼ねて、足りなくなった人員の補充が間に合っていた訳だ。
これで、とりあえずは当分の人員の目処は立った訳である。
故に、『デクストラ』とレイナード、バネッサは心置きなく旅立てるのであった。
「どうせなら、アキトに負けないくらい活躍してやれよ、レイナード。」
「ああ、テオも元気でな。」
「手紙書いてね、バネッサ。」
「うん、必ず書くよ、ケイア。」
「まぁ、お前達なら問題ないだろ。しっかりやれよ、レイナード、バネッサ。」
「そっちもな、リベルト。」
「ナタリー様と仲良くねっ!」
「バッ・・・!!!」
顔を赤くするリベルトに、ワハハハハッと笑いながら、名残惜しみながら幼馴染み達は別れの挨拶を交わした。
「達者でやれよ、レイナード。」
「今の貴方達を心配はしてないけど、健康には気を付けて、バネッサちゃんと仲良くやりなさい。」
「父さん、母さん・・・。」
「心配しないで下さい、おじ様、おば様。私がついてるからねっ!」
バネッサの言葉にレイナードも頷き、バドとニーナも頷き返す。
そして、多くの人に見送られながら、レイナードとバネッサは生まれ育ったルダの街を離れるのだった。
こうして、アキトの幼馴染み達も、それぞれの夢に向かって別々の道を歩き始めたのであるーーー。
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