第21話 会談



その後、しばらく僕とアルメリア様は他愛のない話をしながら双月を眺めていたが、アルメリア様が自室に戻ると言うので、僕はもう少し考え事をする為に残ると言い、『シュプール』の一番高い屋根に寝そべっていた。

こちらアクエラに来てもう8年かぁ・・・。



僕がどうして、『某天空の城』、もとい、『古代魔道文明』や『空飛ぶ都市』、『失われし神器ロストテクノロジー』に固執するのかは、『オタク』的矜持ももちろんあるのだが、実は『地球』時代の幼少期の出来事と関係がある様に思う。

僕は、3人兄弟の末っ子として生まれた。

兄・姉・僕である。

両親は共働きで、今にして思えば、子どもを3人も育てながら、祖父や祖母、親戚の面倒までみていて大変だったろうなぁ、と考えれられる様になったが、当時の僕はやはりさみしい思いを感じていた。

なんだかんだ言いながら、両親は僕らの事を構っていたと思うが、僕の面倒は、主に祖父がみていた。

しかし、当然ながら、祖父も子どもの体力にはついて行けず、もっぱら家の中で遊ぶ事が多かった。

そんな訳で、『ゲーム』やら『マンガ』やら『アニメ』を見て育った為、『オタク』となった訳だが、一番古い記憶で、衝撃と憧れを持ったのが、『某天空の城』であった。

空に対する憧れ、少女との淡いロマンス、ハラハラする冒険。

もう何度見たかも覚えてないほどである。

単純な子どもだった僕は、空に対する憧れから「パイロットになる!」と、のたまっていたそうだ。

また、祖父の影響で、歴史や遺跡、古い物にも興味を引かれた。

そう言った幼少期の出来事が、僕と言う人間の原点になっている。

まぁ、現実にはファンタジーそんなモノが存在しない事を、成長するにつれ否応なしに理解し、あるいは環境の変化で変わらずにはいられなかったのだが、『オタク』として、自分の『ルーツ』と言うか、『アイデンティティ』みたいなモノを残しつつ大人になったのだ。

ところが、8年前、思いもよらずに『異世界転生』を果たした僕は、こちらの世界アクエラには僕の憧れて止まなかった『ファンタジー』が存在する事を知った。

思えば、僕はのかもしれない。

幼少期の『想い』が再燃し、である事をどこかで忘れていたのだろう。

現実は、良い人ばかりではないし、良い事ばかりではない。

『強大』な『力』は、人を惹き付けるが、同時に容易く人を『堕落』もさせる。

そう言った、の事を忘れ、あるいは目を背け、『憧れ』と『理想』をこの世界アクエラに求めていたのかもしれない。

それ故に、フロレンツ侯や、ニル、『至高神ハイドラス』の様な存在がいる事に、ある種の失望と憤りを感じたのだろう。

もちろん、『エルフ族奴隷』を憂う気持ちも、『古代魔道文明』に対する憧れも『本物』だが、彼らを『排除』しようとしたのは、間違いなく僕のエゴなんだとも思う。


ー僕の理想の世界アクエラにお前らの様な存在は必要無い。ー


故に、僕は怒り、行動を起こし、

そして、

ここが、『現実世界』である事を。

自分が、『


客観的に見て、彼らは間違いなく人々の『害悪』になる存在だろう。

だから、僕が行動を起こした事で、救われた人もいる。

アルマ達が、その最たる例だ。

しかし、同時に、その事によりを、僕は忘れてはいけないのだ。

また、その『害悪』であろうとも

アルメリア様に語った様に、僕自身の『大切な何か』の為に、僕は彼らと事を構える事には、ある種覚悟を決めている。

まぁ、それと『鬼人族アイシャさん』や『エルフ族ティーネ達』、その他沢山の人々を巻き込む事は別問題だが、それを決めるのは僕ではなく彼らだ。

とは言っても、おっさんとしては、今さら思春期の少年の様にウジウジ思い悩む様な事ももうあまり無い。

自分の『大切な何か』の為に人々が戦うのは、『地球』でも『アクエラファンタジー』でも結局は同じ事なのだから・・・。



◇◆◇



「なるほど。『ライアド教』と、『至高神ハイドラス』が今回の『パンデミックモンスター災害』に関わっていたんですか・・・。」

「まぁ、分からん話でもないわなぁ。あの『派閥』は『信者』も多いが、『敵』も多いからなぁ・・・。最近大人しいから、何事かと思っていたが、『失われし神器ロストテクノロジー』なんつーモンに手を出していたのかぁ。」


あるぇ~(・3・)?

おかしいなぁ?

拍子抜けするほど、ダールトン村長もドロテオギルド長も簡単に受け入れたぞ?

もっと、狼狽えたり、強大な宗教の『陰謀』に驚くと思っていたのだが・・・?



数日後、僕らはレイナード達の『秘密基地』のある『ルダ村』近くの『雑木林』を間借りして、ダールトン村長とドロテオギルド長との会談にのぞんだ。

一応『他種族』もいるので、『ルダ村』の人々に配慮した形だ。

まぁ、有力者2人にわざわざこんな所に来て貰って申し訳ないが、『パンデミックモンスター災害』の件で今現在は『他種族』に良いイメージを持っている者も数多くいるが、逆もまた然り。

ならば、無駄に軋轢を生む事もないと、2人には賛同して貰えた次第だ。

この場には、僕、アイシャさん、ティーネの3人と、ダールトン村長とドロテオギルド長の2人だけだ。

ハンス、ジーク、ユストゥス、メルヒ、イーナは、『雑木林』周辺に『護衛』として待機している。


「何、間の抜けたツラしてんだ~、アキトっ?」

「ドロテオさん。おそらくですが、アキトくんは、我々が『ライアド教』の件を簡単に受け入れた事に驚いているんじゃないでしょうか?」

「ああっ!なるほどなぁ。オメーもアルメリアさんも、とんでもねぇ『力』も『知識』も持ってるけど、意外と『普通』の事を知らねーんだなぁ・・・。」

「まぁ、ある意味極端で、『魔法研究者』らしくもあり、『子ども』らしくもあって、少し安心しますがね。」

「ちげーねぇ。」


2人は、ハハハッ、ガハハッと笑っている。

ドーユーコト?


「いやいや、すまなかったね。別に、君らを馬鹿にした訳ではないよ。そちらの、『鬼人族アイシャさん』と、『エルフ族エルネスティーネさん』と言ったかな?も、『他種族』の方だから、中々分からないだろうが、一言に『ライアド教』と言っても、一枚岩では無いんだよ。」

「そうそう。確かに、端からみりゃ、『ライアド教』はこの世界アクエラ・最大の宗教だし、そこの『主神』として『至高神ハイドラス』がハバを効かせちゃあいるが、その『信者』は主に『貴族』に偏っていたりするんだわ。」

「元々の『ライアド教』の元となった『宗教』は、『多神教』だったんだけどね。それがいつしか、『至高神ハイドラス』を唯一神とした『一神教』とになっていって今日に至るんだよ。まぁ、所謂『派閥争い』があったんだね。解釈や時代の変化で、『神々』も立ち位置が変わったり、色々な『側面』を持ったりするモノさ。」

「で、俺ら『平民』が広く『信仰』してるのが、『ライアド教』の中の『慈愛の乙女セレスティア』様だな。所謂『セレスティア派』だ。まぁ、職業や生き方によって、他にも様々な『神様』がいるんだが、その『ハイドラス派』と『セレスティア派』が一番デカイ『派閥』な訳よ。」

「まぁ、『貴族』と『平民』では持っている『権力』が違うから、結局『ライアド教』=『ハイドラス派』ってイメージがあるのは仕方のない事だけどね?」

「はあ・・・。」


いや、まぁ、分からん話ではないけれど。

確かに同じ『宗教』でも、『〇〇派』と『△△派』で、中身が全然違ったりするし、かと言って、外部の人には違いが分からん事もあるしなぁ。

『元・地球人』で『英雄の因子』所持者の僕は、環境柄あまりこちらアクエラの人と接しないし、接する時にわざわざ『宗教』の話などしない。

『他種族』であるアイシャさんやティーネ達は、この国ロマリア王国の『他種族』に対する差別意識から、人々と積極的に関わってこなかったし、『シュプール』に来る前は、アイシャさんは山に、ティーネ達は他の列島にいた訳だし、こちらも育ってきた環境柄、『人間族』の詳しい文化や『宗教』など分からないだろうし・・・。

問題は、アルメリア様だが、考えてみると、彼女も世界に対して不干渉と言う『制約』がある訳だし、意外と『知識』の偏りが激しいのかもしれない。

『情報』を得る方法も、彼女いわく『世界の記録アカシックレコード』だと言う事だし、記録・情報世界と言う観点から言えば、地球で言う所の『インターネット』みたいなモノだろうか?

幅広い『知識』を得る事は出来るが、微妙に間違っていたり、大雑把過ぎる事もあるのかもしれないなぁ・・・。

他の可能性としては、僕に教えなかったか、あるいはで忘れていたとか・・・。

確認してみないと分からないが、どれもありそうな感じがする。

ある種悲壮感漂う『覚悟』を決めて、強大な『敵』に立ち向かおうとしていた僕は、


「信じられないかもしれませんが、『ライアド教』の『至高神ハイドラス』が今回の『事件』に関わっている様なのですっ!それどころか、『この世界アクエラ』を巻き込んだ陰謀が進行している可能性も・・・。」

「あぁ~、はいはい。あそこの『派閥』ね~。一度ガツンと言わないとやっぱだめかなぁ~?」

「・・・はっ???」


みたいな温度差の違いに、脱力感に一気に襲われるのだった・・・・。


「前から『ハイドラス派』は気に食わなかったが、そうと分かれば叩き潰してやるかっ!?あそこの『選民思想』には、いい加減うんざりしてたんだよっ!!」

「まあまあ、ドロテオさん。お気持ちは分かりますが、あちらも『貴族』の支持が厚い。この国ロマリア王国は割と『セレスティア派』が多いですが、簡単な話ではありませんよ?大陸北西の国、『ロンベリダム帝国』などは『ハイドラス派』の本拠地にして、『ハレシオン大陸』屈指の強国ですからね。そこの後ろ楯がある以上、こちらも相応の連合を組みませんと・・・。」

「うっ!ま、まぁ、そーですな・・・。」

「って、お2人も戦われるおつもりなんですかっ!?」


一度僕を見て、2人は顔を見合わせた。


「いやいや、逆だよ、アキトくん。元々『ライアド教』の内部争いなんだ。それが、過熱して、『国』や『他種族』にまで波及して争いを生んだ。内輪の事は内輪で解決するのが『普通』だろ?まぁ、規模が大きくなりすぎて、多くの人々にも手を貸して貰わなければならないのは、恥ずべき事ではあるけどね。」

「ここ数十年は、『ハイドラス派』も大人しかったんだが、水面下で力を蓄えていたんかね?まぁ、それはともかく、『失われし神器ロストテクノロジー』なんつー『強大』な『力』に手を出して、あまつさえ、それをわざと『暴走』させたんだ。被害者側としては、抗議の一つもしたくなるっつーモンだろーがよ。下手すりゃ、戦争モンだっつー事はヤツらも分かってるハズだぜっ!?」


苦い顔をするお2人。


「しかし、アルメリアさんの見解もある意味納得出来る。今回の『パンデミックモンスター災害』の一部始終を、『ハイドラス派』の者が監視していたなら、アキトくんの活躍も見たはず。そうなると、よほどの愚か者でもない限り、『この国ロマリア王国』からは撤退を余儀無くされるはずだよ。『失われし神器ロストテクノロジー』も使用してしまい、君に対抗する手段が現状無いと思われるからね。ゆえに、高確率で、『ロンベリダム帝国』に助力を求め、新たな『失われし神器ロストテクノロジー』の探索に乗り出すと思われるよ。」

「まぁ、撤退したのは『ハイドラス派』の中の、今回の『実行犯』連中だけだろーがよ?風の噂でしか聞いたことねーけど、『ハイドラス派』の中でも特にイカれた連中らしいぜ。」


ニルが所属している所だろう。

彼の雰囲気は、『宗教者』と言うより、『暗殺者』と言った感じがしたからな。

大きな『組織』ともなれば、『汚れ仕事』を請け負う部署も必要になってくるのかもしれない。

何とか脱力感から復帰して、僕も考えを述べた。


「そうなると、こちらはまずは『この国ロマリア王国』をまとめ上げないとなりませんよね・・・。強国の後ろ楯がある以上、こちらも『国』の後ろ楯を得なければどうしようもありませんし・・・。」

「そうだね・・・。しかし、そう簡単では無いだろう。私も協力するが、いかんせん一つの村の村長でしかない。トラクス領領主のフロレンツ候の協力を仰ぐ方がよほど有意義だと思うが・・・。」

「俺も『冒険者ギルド』の一支部長でしかないしなぁ・・・。」

「フロレンツ候とはコネがあります。『エルフ族』の事でも、、今回も協力してくれると思いますよ。『この国ロマリア王国』に巣食う『奴隷制度』の『因習』に終止符を打てれば、『エルフ族』との国交も回復し、同盟を結べると思われます。」

主様あるじさまの仰る通りです。我等はすでに、『この国ロマリア王国』に使節団を派遣する用意がありますから。」

「ほう。」

「そりゃ、頼もしいぜ。」


フロレンツ候の事は2人には秘密にしている。

彼には働いて貰わねばならない。

事情は変わったが、『エルフ族奴隷』の『解放』は、これからのプロセス的にも必要不可欠だからな。

今、スキャンダルでフロレンツ候を失脚させても、僕的には良い事ではない。

まぁ、この2人には事情を話しても良いかもしれないが、どこから情報が漏れるか分からないのだし、そこら辺は臨機応変に対応すべきだな。


「それと平行して、僕らも『古代魔道文明』に関する情報を集める必要がありますよね。対抗手段があれば、『抑止力』にもなりますし、戦うにしても、条件を同じにする事も出来ますから。これは、多くの情報が集まりやすい『冒険者ギルド』のギルド長であるドロテオさんが適任でしょう。」

「おおっ!そいつは任せときなっ!」

「『エルフ族』の件が上手くいけば、『鬼人族』との同盟、トロニア共和国との連携も視野に入ってくると思われます。ダールトンさんは、政治力を活かして活動して貰う事になるかと思われます。」

「私に出来る事なら、何でも協力するよ。」

「アキトっ!『鬼人族』との橋渡しなら任せてよっ!これでも、アスラ族・族長の娘だからねっ!」

「その時はよろしく、アイシャさん。僕とアルメリア様は、今回の『パンデミックモンスター災害』の原因となった『魔獣の森』にあった『遺跡』の調査をします。何か分かるかもしれませんから・・・。」

「『魔法』に関する事なら、アキトくん達が適任だね。いずれにせよ、各自で活動しつつ、定期的に会合を開く事が現状出来る唯一の事だろう。『ハイドラス派』の好きにしていれば、いずれ大変な事態に陥る懸念もある。少しずつでも賛同者を得られる様に動いて行こう。私も、父親として、子ども達の未来は明るい方が良いからね。」


最後は冗談めかした大袈裟なジェスチャーをして見せたダールトン村長だが、その『想い』は本物だろう。

彼らの様な『指導者』がいるなら、『この国ロマリア王国』もまだまだ捨てたものでもない。


「そうですね。」

「そーですな。」

主様あるじさまのお心のままに。」

「悪いヤツらは全員ぶっ飛ばしちゃおーっ!」

「おっ!嬢ちゃんは話が分かるねぇ~!」

「それは不味いんですってっ!」

「キレイにはまとまりませんね・・・。」


『ハイドラス派』との戦いに、気持ちを新た(?)にする僕達。

ここに、静かな戦いの幕が切って落とされた。



◇◆◇



今回のオチ、と言うか教訓。

ダールトン村長とドロテオギルド長との会談を終えた僕らは、『シュプール』に戻って来た。

僕は、アルメリア様に聞きたい事があったので、他の皆には、『狩り』のついでに森の様子を見に行った貰った。

まぁ、つまり席を外して貰ったのだ。

皆も心得たモノで、特に異論もなく出かけて行った。

僕は、その足でアルメリア様の部屋に突撃する。

『ライアド教』の件をアルメリア様に問いただす為だ。

女性の部屋に、無遠慮に入るのは多少気が引けるが、この時の僕は気が急いていた。


「アルメリア様っ!」

「・・・う~ん、ビア〇カとフロ〇ラ、どちらと結婚するっスかねぇ~。心情的には、やっぱりビア〇カなんっスけど、金銭面も考慮するとフロ〇ラも捨てがたい・・・。」


ズルッと転けそうになった。

この女神、スーパーファ〇コンでドラ〇エ5やってるー!?

・・・ちなみに、僕はビア〇カ派だ。

じゃなくて。

つーか、どっから出したっ!?


「おわっ!アキトさんっ!女の子の部屋に入る時は、ノックして下さいっス!!」

「ゆーとる場合かっー!」


アルメリア様の姿は、とても人には見せられない有り様であった。

コタツに潜り込み、ジャージ姿にドテラを着込み、ボサボサ髪に、黒ぶちメガネ。

あれっ?

ここって、どこの日本の『オタク』女子の部屋?


「アンタ、何どーでもいー所でチート能力使っとるんじゃー!!」

「どーでもいーとは心外っスね。自分の趣味に『力』を使っても、別にいーじゃないっスか。アキトさんも手が掛からなくなったし、不干渉の『制約』があるから、基本暇なんっスよ。だから久々にレトロゲーをやるのもいーかなーと。・・・あっ、後、『召喚者の軍勢』にこういうデータも使われるかもしれないっスから。調査っスよ、調査っ!」


しどろもどろになりながら、何、良い言い訳思い付いたーみたいな顔してんの?

そのドヤ顔やめろや。

何か腹立つ。

こんな格好なのに、可愛らしいさがそこなわれないのも腹立つ。


「カワイイなんて、照れるっスよ~///。」


ナチュラルに人の思考読むの止めてくんない?


「・・・色々言いたい事はあるけど、それはまぁいいです。って、そうそう、『ライアド教』と『至高神ハイドラス』の事ですよっ!」

「はいっ?」


僕は、ダールトン村長とドロテオギルド長に聞いた『ライアド教』の事を話す。


「あれっ、『ライアド教』の事は詳しく話してなかったでしたっけ?」

「聞いてないですけどー・・・。」

「おかしーっスねぇ~?」


う~ん、と考え込むアルメリア様。

どーでもいーけど、これ、アイシャさんやティーネ達、アルマ達には見せらんない姿だよな~。

まぁ、彼ら彼女らが、この部屋に無遠慮に入る事もないだろうけど・・・。

ってか、僕も何気に入るのはこれが初めてかも。

この女神、普段ゲームばっかやっとるのか?

見ると、知ってるタイトルや知らないタイトルのソフトが散らばっている。

レトロゲーのファンなのだろうか?

そんな事を考えていると、アルメリア様はポンッと手を打ち鳴らした。


「違うっスよ!アキトさんが、『ライアド教』の話をしよーとしても、『宗教』の話よりも、『魔法』や『結界術』の事を学びたいーって言ったんじゃないっスか!!どーせ衰退するんだしーとか言って!!!」

「んっ???」


アルメリア様が反論する。

はてっ?

確かに、『魔法』や『結界術』の事には興味津々だったけど。

『ファンタジー』の代名詞だし、他にも『狩り』やら『農業』やら、後は『戦闘訓練』やらですっかり夢中になっていたよーな?

・・・。

サーッと血の気が引いた。

やべっ。

言ったわ。

未知の技術にすっかり夢中になって、こっちアクエラの『一般常識』の事をほとんど学んでないや。

礼儀作法や、計算とか、下手におっさんとして出来ていたから違和感なく過ごして来たけど・・・。

よくよく考えてみると、8こちらの世界アクエラに来て経ってないし、僕の年頃なら、地球なら小学校に通っている頃だ。

なのに、僕はすでに『魔法』やら『結界術』やらをかなり高いレベルで習得している。

普通に考えれば、『一般常識』を学んでる時間なんて、ある筈もない。


「・・・忘れてた・・・。」


そうでしょう、とドヤ顔すんのやめろや。

アンタも忘れてたんだろーが。

はぁ、しかし、強くも言えないか。

後回しにして、すっかり忘れてたのは僕もだし・・・。

やっぱ、って大切なんだなぁ~。

苦手分野や興味のない事も学ぶから、つまらない事も往々にしてあるけど、後々に必要になって来たりするんだよなぁ。

得意分野や興味のある事だけ学んでいると、思わぬ落とし穴があるモンだ。

・・・僕も『教学』行った方が良いかもなぁ~。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る