黒魔導士のすゝめ

風間 シンヤ

リーフの不運

「はぁ……!?はぁ……!?」


黒髪の少女リーフはひたすら逃げ回っていた。逃げ場所など何処にもないと分かっている。だが、逃げずにはいられなかった。何故なら……


「グルオァァァァ〜ーーーーー!!!!!?」


リーフを追いかけているのはS級ランク指定されている魔物ベルゼビュートベヒーモス。その身の丈はリーフの3倍以上。その獰猛な爪や牙は細身のリーフの身体を砕くのなんて難しくないだろう。

それだけでなく、リーフは冒険者ではあるランクは1番低いFランク。おまけに冒険者職業は1番最底辺職といわれる「黒魔導士」。しかも、リーフのレベルは1である。戦力差はあからさまに絶望的である。


何故……自分はこんな目にあってるのか……リーフは逃げ惑う中で自分の半生が走馬灯のように頭の中に駆け巡っていた…………





思えば、リーフの不運は幼い頃から始まっていた。リーフは孤児院育ちの孤児だった。産まれた頃から孤児院にいた為、両親の顔をリーフは全く知らない。孤児である事は別にこの世界では珍しくもないし、不運という話でもない。問題はリーフがいた孤児院にあった。

 その孤児院は、孤児を預かり運営するという名目で国からの支援金を受け取り、預かっている孤児達を不当に働かせ、働いたお金も施設の職員達が受け取って私服を肥やしていた。当然リーフも働かされていた。満足な食事も与えられず、おまけにリーフは孤児院で1番年齢が低かったのもあり、上の子達からの虐めなども受けていた。


 だが、国もそこまでバカではなく、すぐにこの孤児院の不正が発覚し、孤児院の職員達は捕まり処刑され、孤児院の子供達は無事全員保護された。

 そして、その孤児院の子供達は別の孤児院へ行く事になったのだが、リーフはそれを拒絶した。リーフは孤児院の大人達や年齢が上の子供達に、体罰や虐めをされていたので、大人の言う事が信用出来なかったのだ。いくら今度行く場所が安全だと聞かされてもリーフは首を横に振って拒絶した。


 そんなリーフに幸が不幸かある報せが入る。リーフには冒険者としての適正がある事が偶然にも判明したのである。冒険者は危険な職業ではあるが、それに見合うお金は手に入るし、1人でもなんとかやっていけると分かったリーフは冒険者になる事を決意した。




 しかし、リーフはこの時ちゃんと大人達の言う事を信用して別の孤児院に行っていればこんな目に合わなかったのではないかと思った。


 何故なら、リーフの冒険者適正職業は、冒険者適正職業の中でも最底辺に位置する「黒魔導士」だったからだ……




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