第5話 膝枕

 常々思っていたことがある。

 膝枕、という言葉についてだ。腕枕なら腕を枕にしているわけだから、意味は分かる。でも、膝枕は違うだろ?枕にしているのは膝ではなく、太ももだ。だから、正しくは太もも枕。でも、これだと語呂が悪いから、せめて脚枕。こっちの方がいいんじゃないか?

 そもそも、なぜ、俺がこんなことを思っているのかというと、太ももの価値を分かっていない人が多すぎるからだ。よく、女性の胸とお尻、どっち派?だなんて質問を耳にするが、そこに太ももという選択肢を入れるべきなんだ!そう、太ももこそ至高なのである!


 あ、ダメだ。現実逃避をしようとしていたけれど、現実に引き戻されてしまった。

 俺は今、彼女の太ももの感触を全身で味わっている。いや、別に性的な意味は何一つない。俺にやましい気持ちなんて……少しはあります。すみません。でも、俺が自分から彼女の太ももの上に乗って、堪能しているわけではない!彼女が俺を太ももの上に乗せたんだ!だから、そう、俺は悪くない。これは彼女が望んでいることであって、そして、俺は彼女のペットなんだから、彼女に従うしかないんだ。だから、俺は、仕方なく、彼女の太ももに……。

 うん、周囲の目なんて気にする必要なんてないんだし、ハッキリと言おう。彼女の太ももはやっぱり、最高です!もうね、今までは触ることなんてできなかったんだよ。それどころか、見ることさえも堂々とはできなかったんだよ。

 それが、今は、全身で彼女の太ももを感じていられるだけではなく、彼女が俺を撫でてくれていて……。

 あぁ、もうダメだ。気持ちよすぎて何も考えられない……。

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