第26話:下着からの【水着】からの海パン。


「いやーびっくりしたねー♪ あの子って確か一年の子でしょ? 店員さんがあの子のお姉さんだったの?」


「あ、あぁ……そうなんだけど……」


 私はいろんなショックからまだ立ち直れてない。

 初めてだったのに……くすん。


「相変わらずうさこちゃんは絵菜ちゃんの事大好きだよね……はぁ、良い物が見れたなぁ……」


 ルキヤはさっきの事を思い出してるのか遠い目をしつつニヤニヤしてる。


「おいてめぇ余計な物を思い出すんじゃねぇぞ」


「余計な物って?」


「……その、み、見ただろ……? あいつら容赦なく試着室開けやがるから……」


「あぁ、もしかして絵菜ちゃんのおっぱい見たかって話? 見たか見てないかで言うなら見たけどなんとも思ってないから気にしないで」


 気にしないでって、仮にそんな発言をするとしても私の方じゃねぇのか?

 なんで見たお前の方がその反応なんだよ……。



「大丈夫? 私も見てたけど着替え中に試着室開けるのは流石にマナー違反だよねー? 見たのが私とあこちゃんだけで良かったね♪」



「奈那……」


 奈那は良いとしても、あこが見てたって事が問題なんだけどな。

 しかも本人がまったく興味なさそうにしてるのが問題なんだけどな。


「もしかして気にしてる? 確かにうさこちゃんとイチャイチャしてるの見られたのは恥ずかしいのかもしれないけど、気にする事ないと思うよ。すっごく良かった」


「こいつも殴ろうかなぁ……」


「絵菜ちゃん、暴力はダメだよー? さっきあの子だって記憶飛んじゃって大変だったでしょ? ほんと絵菜ちゃんってばすぐ手が出るんだから……そのうち捕まっちゃうよ?」


 奈那が本気で心配してくれているのが分かる。

 それだけヤバい殴り方をしてしまった訳だが、結果的にうさこはここに来てからの記憶がすっとんでしまったらしい。


 本人が覚えてないというのならされた事は無かった事にしてもいいよね?


 でも、こいつが覚えてるんだよなぁ……。


「ぐふっ……」


「変な声で笑うんじゃねぇよ気持ち悪いな」


「ごめんごめん、だってさっきの事思い出すだけで……いいもの見れてボクは満足だよ。あ、でも約束は忘れてないからね?」


「それを忘れろ。なんなら殴って忘れさせてやるぞ」


「約束って何の話ー? 二人だけでこそこそずーるーいーっ!」


 ルキヤとの会話に奈那が割り込んでくるのをなんとかなだめながら次の目的地へ向かった。


 先程の店ではなんだかんだと奈那は一通り下着を購入し、私も試着したものを購入していた。


 そして、私はいろんな事への腹いせと復讐心からルキヤに無理矢理下着を購入させた。


 次は絶対それを着させてやる。

 覚悟しやがれよ……この怨みは忘れねぇぞ。


「次はここでーす♪」


 そう言って小走りにショップの前までてこてこ進んで手を振ってくる奈那がとても可愛らしい。


 今回は水着を買いに来たのだけれど、勿論私も買うわけで、それだけで済ませる筈もないわけで。


「おい、お前も水着買っておけよ」


「えっ、ここで!?」


「お前さ……今あこなのを忘れるなよ? 今日全般的に反応がルキヤすぎるぞ」


「ちょっと、こんな所でその名前出さないでって……誰が聞いてるか分からないんだからさ……」


 む、それは確かにそうだけれど……そうやって慌てる姿を見れただけでもよしとしよう。

 だが、それとこれとは別問題だ。


「ホテルのプールに行くって言ってただろう? 勿論それはお前も来るんだからな」


「……本気?」


「もち。逃がさねぇぞ」


「うぅ……分かったよ……でも、上は何とかなるかもだけど下ってどうしたら……」


 確かにそれは大問題だ。

 ……が、物によっては何とかなるのではないか?


「例えば、パレオがついてるようなタイプの水着を選んでおけば大丈夫だろ」


「パレオって何?」


 まじかよ……こいつ変なところ知識が偏ってるな……。


「ほら、こういうやつの事だ。これならスカートみたいな感じで下半身隠れるしなんとかなるだろ」


 私はその辺から大きなパレオ付きの水着をルキヤに手渡した。


「あぁ、こういう腰に巻く布がついてるやつの事ね。確かに……これならなんとかなる……かなぁ?」


「なんとかしろ。デザインは任せるから自分で好きなの選んどけよ」


「ねーねー♪ これとかどうかな? ちょっと見て見て☆彡」


 私達があれこれやってるうちに奈那は既に水着を試着していたらしい。


 試着室のカーテンがザラっと開いて、中から水着を着た奈那が顔を出す。


 うおぁ……かっわ!! 天使じゃん! 知ってたけど!!


「こら、そんな姿でどうどうとカーテン開けるんじゃありません!」


 ルキヤが見てるでしょうが!


「えー? 女の子しかいないんだからいーじゃん。絵菜がなんかパパみたいな事言ってくる……似合ってないかなぁ?」


「いや、めちゃくちゃ似合ってるし可愛いけど、ほら……どこから誰が見てるか分からないし。な?」


「でも水着だよ? 泳ぐときはこれで人前に出るんだしへーきだよ?」


 だから世の中には変な性癖のやつがいるんだって。

 ルキヤもどうかしてるし、プールで見る水着と店の中で見る水着じゃいろいろ違うでしょーが!


「うん、とっても似合ってると思うよ」


 ルキヤが特に顔色も変えずに褒める。


 天使の水着を前に平然としてられるその神経は凄いよ。私ですらドキドキしてんのに。


「絵菜ちゃんは海パン?」


「……は? ぶっ殺すぞてめぇ」



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