第108話
「落ち着いてください、黒炎、紅蓮様」
「兄貴は少し黙っててくれ。これは俺と会長の問題なんだ!」
「心から祝福はしています。ですが、隙あらばアタックするとも彼女には伝えています」
火花が飛び散ってる……これ以上、私のことで二人が喧嘩するのは嫌だ。そう思い、私は二人の間に入って喧嘩を止めようとした。
「二人とも、落ち着いて! っていうか、黒炎くんになんて伝えたんですか!? めっちゃ怒ってるみたいなんですけど……」
「普通にメッセージを送っただけです」
「……」
黒炎くんの怒り方から察するに、おそらく紅蓮会長は普通にはメールを送っていない。挑発するようなメッセージでも送り付けたのかな。
「普通って……男二人と朱里が一緒にいるって。来てみたら、会長と兄貴だし。それは心配なかったんだが、会長は朱里のことまた口説いてるし。さすがにそれは怒るに決まってる」
どうしよう。今回は黒炎くんの言ってることが正論な気がする。紅蓮会長って、告白のときもそうだけど自分がしたいと思ったことに対しては一直線で、頭で考えるよりも先に身体で行動するタイプの人だと今、改めて実感した。
「黒炎。誰に言ってるの? 今回は黙ったりしないよ。朱里ちゃんがせっかく黒炎のためにって頑張ったのに、喧嘩したらダメだ。紅蓮様もほどほどにして。黒炎は貴方様にとって弟のような存在なんでしょ? だったら、仲良くして。これ以上、朱里ちゃんの前で喧嘩するのは僕が許さない……」
「ほ、焔さん?」
焔さんの言葉で、二人の喧嘩がピタッと止まる。それどころか、空気が一緒で凍りついた。言葉は乱暴じゃないのに、丁寧な口調が逆に恐怖さを増す。けど、いつもと違い敬語は外れている。
「あ、兄貴……」
「すみませんでした。自分も情けなかったです」
二人は少しの間を置いて、焔さんに謝った。私も今の焔さんは少しだけ怖かった。今まで女性だと接してきたけど、今のは本当に男性に見えた。やっぱり焔さんは大人の男の人だ……。
せっかくのバレンタインデーで、しかも四人で楽しく過ごすはずだったのに、喧嘩になったから怒ったんだろう、多分。それ以外にも焔さんが怒るようなスイッチがいくつかあったような気がするけど。
黒炎くんと紅蓮会長は一緒に住んでた期間も長いし、家族のような存在の二人が互いの悪口を言いそうになったからだと思う。このまま口喧嘩を続けていたら、おそらく二人の喧嘩はヒートアップしていただろうし。それは私も見たくない。
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