第64話
「朱里、待たせて悪い。制服に着替えてたら遅くなった」
「ううん、大丈夫だよ」
ガラッと扉を開けて入ってくる黒炎くん。
「それで、話ってなんだ?」
黒炎くんは普通の雑談程度だと思って、特に身構える様子もなく普段通りだ。私はというと、心臓が口から飛び出しそうなほどバクバクしていた。
「これは、冗談とか幼なじみとかじゃなくて真剣な話として聞いてほしいんだけど……」
「あ、ああ……」
「私、黒炎くんのことが好きなの。小さい頃からずっと好きだった……!」
ついに私は黒炎くんに想いを伝えた。外からはキャンプファイヤー点灯の合図が聞こえた。ジンクスなんて信じてるわけじゃないけど、私の気持ち伝わってるといいな……。
怖くてギュッと目をつむっていたけど、返事を聞きたくて黒炎くんを見つめた。すると、黒炎くんの表情は意外なものだった。
「っ……」
「泣い……黒炎、くん。そ、そんなに嫌だった?ごめんね」
黒炎くんはその場に座り込んで、涙を流していたのだ。私はワケも分からず、ただ謝ることしか出来なかった。
「違う、そうじゃないんだ。朱里の告白が気持ち悪いとか嫌だったとかそういうのじゃなくて……今までお前の気持ちに気付かず、ゲームのアカリの話ばかりしてた俺にイラついて泣いてるんだ」
「え……?」
それはどういうこと? もしかして私に悪い事をしたとか思ってるのかな。
「どうして今まで気付かなかったんだ。それなのに俺、勘違いさせるような行動ばかりとって……俺、最低だ」
やっぱり……そうだった。黒炎くんは、もし自分が相手の立場だったらってことを考えて泣いてるんだ。私の好きな人は本当に優しいな。
「黒炎くん、それは違うよ。私はアカリちゃんも含めて、そうやってゲームの話をして楽しそうにする黒炎くんが好きなの。どんな黒炎くんだって、私にとっては……だ、大好きなわけで」
改めて、黒炎くんに二度も好きっていうとなんだか急に恥ずかしくなった。
「ありがとな。……俺は今まで朱里のことを幼なじみだって思って接してきたんだ」
「うん、それは知ってる」
私は黒炎くんが落ち着いて話をしようとしているのを真剣に聞くことにした。
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