第八章 【レイカとヒビキ】
【レイカ】
駅前広場、すごい人だかり。なんだろ。
〈本年度のヴァンパイアお揃いコーデコンテスト優勝者はーーー〉
〈デゥルデゥルデゥルデゥルデゥルデゥルデゥルデゥル。ジャーーー〉
司会者、口で言ってる。予算のカンケーってやつ?
〈天伴連町、ブラック・キャリエッタ姉妹の御二方でした〉
大歓声。あ、さっきの紫と赤のタイツの二人だ。まー順当だろーね、あの二人なら。
〈それでは、記念品の授与と優勝イベントのほうを行いたいと思います〉
おー、金のすり鉢&スリコギ棒だ。高そー。大歓声と大拍手。パチパチパチっと。
〈次はイベントのほうに移りたいと思います。あ、商品はこっちに預りますので。優勝者のお二人は、前の処刑台のほうにどうぞ。もちょっと前に。そう、そこです。用意があるので少々お待ちください。いいですか? 準備OK?〉
「レイカ行くよ」
「見て行かないの?」
「ウチはいいわ」
「あたしもいい」
なら、ウチもいいけど。すごい歓声。
「ゴリゴリ! 殺せ! ゴリゴリ! 殺せ! ゴリゴリ! 殺せ! 殺せ! 殺せ!」
地面揺れてる?
【ヒビキ】
うわ、地響きしてる。周りの人たち殺気だってるよ。
「ねーさん!」
「なに?」
「興奮するっすね!」
カワイ、お前も何気に辻っ子だな。
【レイカ】
セイラは? 後ろ振り返ったら、舞台の上の二人が真っ赤な絵の具を浴びせかけられてた。セイラ、そんなところにしゃがんでると踏みつぶされちゃうよ。どうしたの? セイラ。息、上がっちゃってる。過呼吸? セイラ身体弱いのにあんな刺激の強いの見るから。大丈夫? 立てる? 行こ。キャリエッタ姉妹の念動力が地獄を呼ぶ前に。なんてね。……セイラ、なんで泣いてるの? うわ! 何あれ。ひどスギ。
【ヒビキ】
あと10分で12時か。
あのイベント過激すぎだった。ペンキかけるだけでよくない? 斬首いらないよ。司会者が血まみれのマネキンの首を両脇に抱えるってのはやりすぎだよ。司会者の白いタキシードが真っ赤になってて、気味悪かった。あっちこっちから悲鳴あがってたし。
トリマ、宮出しは終わったし、目抜き通りの交差点で両神輿がお見合いしたら帰れる。なんか暴れるな、今年の神輿。あっちよったり、こっちかすったり。わざとか? 担ぎ手いつもの人たちだよな。どことなくチンコもグラついてないか? 危ないだろ。電柱倒れんぞ。シンチョーに行ってくれよ。あと少しなんだからさ。
【レイカ】
そろそろ12時。宮木野神社と志野婦神社の御神輿がこのメヌキドーリの交差点に来合わせる時間。で、ケンカ神輿? しないよ。かわすの、お互いで。宮木野神社の御神輿は、どんだけ優雅に、志野婦神社の御神輿は、どんだけ勇壮にお互いの御神輿を交わしあうかが見せ場。ってパンフに。
「おー、来たよ。志野婦のでっかいちん(ピー)だ」(ナナミ、ファール4)
どよめき。歓声。また歓声。人垣で何も見えない。ナナミとミワちゃんは背か高いからいいけど、ウチとセイラは人並みだから、さっきからぴょんぴょんしつづけ。
疲れるね、セイラ、大丈夫?(無声)。
うん、メマイする(無声)。
「やだ。アレに辻川雄太郎をよろしくって書いてある」
「そこまでするか?」
「どんだけ名前売りたいんだ?」
【ヒビキ】
来た。宮木野の神輿。大外から回って、優雅にかすめてー。で、志野婦の神輿が練りに練って勇壮に。……どうして突っ込んでいくんだよ。喧嘩じゃないんだよ。どこの祭りだと思ってんだ。危ないって! ぶつかったら衝撃に耐えられないんだって、寄せ木だから。あーーーーーーー。やった。爆裂した。派手に。
【レイカ】
おー、どよめき。また、どよめき。きっと、ものすごい接近して、あやうくぶつかりそーになってるんだ。ジャンプ! ? 痛っ。なんか飛んで来た。頭に何か当たった。すごい悲鳴が上がってる。阿鼻叫喚?
【ヒビキ】
うわ、下がるな下がるな。後ろに人いるから。あ、すみません。後ろの人の足踏んじゃった。
【レイカ】
いたたたた。足踏まれた。さがんなよ、後ろに人がいるっての。なんなの? その被り物。それはヴァンパイアじゃなくてカレー☆パンマンでしょ。
【ヒビキ】
って、シラベじゃね。ユサまで。やっべー、逃げろ。じゃない。けが人助けなきゃ。
【レイカ】
「何があったの? ミワちゃん」
「ぶつかった。志野婦のが宮木野のに。志野婦の神輿、粉々になった」
「ちん(ピー)がめっちゃくちゃ。はりぼての役立たず」(ナナミ、ファール5、退場!)
「大丈夫? レイカ、おでこから血出てるよ」
ホントだ。ちっさい木の破片が刺さってた。なんか、ふらふらってなって、立てなくなっちゃった。血、見たから?
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