番外編2 正義とは?

 鈴谷大河すずやたいがは両親が嫌いだった。何故なら、大河は親から毎日虐待を受けていたからだ。火傷や打撲、酷いときは食事も貰えず、学校にも行かせてもらえない。家に居たくなくて、唯一許された公園で時間を潰していた。


「僕は何のために生まれたんだろう?」


 大河は自問自答するが、答えることは出来なかった。夜になり、僕は家に帰ると部屋中が血塗れており、両親は玄関付近で息絶えていた。恐怖を感じたが、それ以上に幸福感を感じた。部屋の中に入った僕は誰かに見られている気がして振り向くと壮年な男性が立っていた。男は優しい表情で僕に話しかけてきた。


「おや、君はこのクズの子供かな?この人達は罪を犯した。だから正義の名のもと処刑することで罪を浄化したんです。本来なら君も殺さないといけませんが、今回は見逃しましょう。クズの子供はクズになるとは限りませんし」


「罪を犯した?浄化?」


「君にはまだ理解できない言葉だったね。罪とは七つの罪【傲慢】【強欲】【嫉妬】【憤怒】【色欲】【暴食】【怠惰】のことです。人間はルールの中に生まれ、ルールの中で死ぬ。それをシナリオや運命と呼んだりする。簡単に話すと設定がもう出来てしまっている世界で、個人の設定より、世界の設定が正しいって話だよ」


「浄化とは、罪を犯した肉体から魂を分離させることで、無垢となることです。人間ほど醜い生き物はいない。全ての人間が罪人です。人間の罪を重い、軽いと量れるほど私は優れた人間ではありません。これも任務ですので、仕方のないことです」


 僕はこの人は正義の味方だと感じた。それから僕は○○を追いかけるようになった。○○は僕のしつこさに呆れ、僕に色々なことを教えてくれた。そして僕は○○を殺し、殺しの美学を完成させた。


涙が頬に伝う、大河は泣いていた。初めて人を殺し、血で染まった自分の手。僕は○○が好きだった。色んなことを教わり、僕を初めて認めてくれた人。


「罪を犯した人間は必ず殺す。正義には手を出さない。悪は正義にて粛正する。それが俺の正義」


 歪みの始まりだった。大河はそれから様々な犯罪者を殺していった。殺す度に幸福感を感じた。しかし、次第に何も感じなくなっていった。


「俺は断罪者。俺は嘲笑う死神。これで良いんですよね?師範」


強風が吹く。あの人の声が微かに風にのって聞こえた気がした。しかし、今の大河には理解が出来なかった。ビルからビルへと移動する。ターゲットは汚職政治家。


「俺は今日も人を殺す」

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