第2話 異世界での出会い
都市から少し外れた広い草原。
一人の鎧を着た短髪黒髪黒目の少女が無我無心に剣を振っている。
「はっ!はっ!はっ!」
その少女の後ろに一人の真が光と共に出現する。
少女は光に驚きすぐさま振りかえる。
「あ、あなたはいったい!」
「ん?あー、確認するけど、俺のことか?」
「あなた以外にだれがいるんですか!突然現れて!い、いったい何者なんですか!」
少女は剣先を真に向けて動揺したように質問する。
真は反抗の意思はないと表すように両手を上げて答える。
「俺はー、あれだ…異世界人ってやつだ」
「イセ…なんとか?って、いったいなんですか!」
(おいおい、異世界人って珍しくないんじゃないのかよ。
あいつの言ったことがウソだったのか?いやしかし、嘘をつく理由が無いな。
となると、考えられるのは違う言葉なのか?)
「つまりだな、違う世界からこの世界にやってきた人物ってこと」
「えっ!と、ということはあなたは世渡人なんですか!?」
「それがあっているのか分からないが、たぶんそうだ」
少女が真に近寄り興奮したように質問をする。
真はその行動が予想以上に悔い気味で少し驚きながら返事をした。
「でもー、こんな場所に世渡人なんて来るんでしょうか?……怪しい」
少女は目を細めて疑うような声でそう言った。
「はぁ、どうすれば信じてもらえるんだ?」
「うーん、ではこの石を使ってください!」
少女はそう言って腰に掛けてあるポーチから黄色い石を取り出した。
「これはいったい?」
「これはステータス石です。これを割ることによって簡易的なステータスを見ることができます。
世渡人のステータスは平均的に高いですし、珍しいスキルを持っています。ステータスを見ればあなたの言っていることが嘘かどうかがわかります」
真は少女の言葉に納得して石を持っている指に少しだけ力を入れる。
「パキッ」っという音と共に真の目の前にステータスが表示される。
「出ましたか?出ていたら私にも見えるようにステータス開示と唱えてください」
「わかった、ステータス開示」
ステータスの色が半透明ではなくなり第三者でも見ることが可能になった。
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シン・(アステカ)
種族 人間
HP:D-
MP:C+
INT:C+
STR:E+
DEF:E
DEX:C-
AGI:D
LUK:E
MGA:火 C 水 C+ 風 C- 土 C 無 C 光 C+ 闇 C
〔スキル〕
【魔力操作Lv3】【魔力消費減少Lv3】【成長促進】
〔特殊スキル〕
【人類語理解】【記憶追憶】
〔固有スキル〕
【解析】【状魔変化】
(〔神与スキル〕)
(【能力獲得】【神の加護】【勇者開放】)
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「これで見えているのか?」
「はい、唱えた際に意識した人には見れるような仕組みになっています。私もこれで見えるはずです」
少女はそう言って真の横に立ちステータスを見る。
「えーとシンさんっていうお名前なんですね、ステータスは…」
(カッコ内のステータスは見えていないのか、俺の新しい名前はシンか、大した変化はないな。しかし、この世界の言語は日本語と同じかと思ったがスキルが働いているんだな。
強さに関しては基準がわからないから強いのかすらわからないな。ステータスの見方もいまいちわからないな、こんなことならゲームとかラノベとかいうやつを見ておくべきだったな)
真、改めシンがそんなことを考えていると少女は小刻みに震えてシンの方向を向く。
少女は耐え切れなくなったかのように大きな声で言った。
「な、なんですか!このステータスは!」
「うおっ!こっちに剣を向けるな!落ち着け!」
「落ち着いていられませんよ!こんな魔法の適性が高いステータス、王都の間同士でもこんなに高い人は稀ですよ!」
「そ、そうなのか、それで俺は信じてもらえたのか?」
「そうですね、確かにここまでの力があれば信じざるおえません、しかし!偽装の可能性も否めません」
「じゃあどうすればいいんだよ」
シンは少女の発言に溜息を吐きながらそう答える。
少女は勢いよく近くに見える都市を指さす。
「あの都市には教会があります。そこに行けば偽装などを無効化した本来のステータスが見ることができます。そこに行ってまったく同じステータスなら信じましょう!」
「はぁ、めんどくさいが仕方ない」
「では、行きましょう!」
少女はそう言って元気そうに都市へと向かった。
10分ほど歩くと2人は都市の門についた。
「身分証明書を出してくれ」
槍をもった甲冑を着ている傭兵らしき屈強な男が2人にそう話しかける。
少女はポーチから掌サイズのカードに似たものを出して男に渡す。
「そちらの身分証明書は?」
「この人実は世渡人らしくて、身分証明書がないみたいなんです」
「世渡人か…なら仕方あるまい、すぐにギルドか教会に向かって身分証明書を発行してもらうことだ。身分証明書が無い状態で何か犯罪を犯したら罪の重さ関係なしに極刑だということを覚えておけ」
「わかった、親切にありがとうな」
「なに、アルカちゃんの連れだ、悪い奴ではないんだろうよ」
「名前、アルカっていうのか」
「何だ知らなかったのか、西地区のマドンナだよ、このさびれた地区に癒しを与えてくれる天使みたいな存在だ」
傭兵の男がその顔に似合わないようなデレデレの顔をしながら熱くそう語る。
「そ、そうなのか」
「だ・か・ら・そのアルカちゃんを悲しませたら逮捕でその首はないと思え!」
「わかったわかった、すごく好かれてるってことはよーくわかった」
シンはめんどくさそうに反応して傭兵の男を手で押して距離を取る。
「シンさーん?どうかしましたかー?」
「問題ない!すぐに向かう!」
アルカが大きな声でシンの様子を聞くと
シンはそれにすぐに答えてアルカのもとへ走って行った。
「ステータス石の予備を使っちゃったんで先に買いに行ってもいいですか?」
「別にかまわないが、その時に俺が逃げるとか考えないのか?」
「もし逃げるなら草原の段階で逃げているはずです。そっちのほうが捕まえるのが困難になりますし。それがわからないほどシンさんは頭悪そうには見えなさそうですしね」
「…頭悪そうに見えて意外と考えてるんだな」
「酷いですねー、これでも学校での成績は良かったほうなんですよ」
アルカは腰に手を当てて自慢気に話す。
「学校があるのか、今日は休みなのか?」
「もう一年ほど前に卒業しています。私は剣の道に進むって決めていたので」
「卒業って一体アルカは何歳なんだ?」
「傭兵さんに名前聞いたんですね、そこはいいとして、16歳ですよ」
「中卒か…」
「チュウソツ?ってなんですか」
(16歳か、もっと下だと思っていたがまさか一こ下だとは、発育がずいぶんと遅れているようだな。しかし、この都市を見る限り中世レベルの技術、魔術があるとか言っていたから電気もないのだろう。
電化製品見かけてないしな、この世界は戦闘が基本なんだろうだから中卒レベルでも問題はないのか。
むしろすごいことなのかもしれん、なら栄養価の高い作物なんかも研究されていないだろうから発育が遅れていてもおかしくはないか…)
「中卒ってのはな俺らの世界の言葉だ、知っていても大した意味はない」
「そうなんですか…あっ!話している間につきましたよ」
「ここが…えーと、本当にここが店のある場所なのか?」
シンはアルカが指を差した方向にあった裏路地に入る道を見て
間違いでは?と確認するように質問した。
「本当ですよ、ステータス石は売ってる場所が少なくてこういうところでしか売っていないんですよ。あっ!でも犯罪的な代物じゃないんで安心してください!」
「ならいいんだが」
アルカがそう言いながら裏路地に入っていくと
シンは苦笑いしながらその後について行った。
「すみませーん!こんにちはー!」
アルカは店に入ると店員さんを呼ぶために大きな声であいさつをする。
シンはその間に店に置いてあるものを見る。
(置いてあるものがいったい何なのか見当がつかないな、
えーとあの瓶に入っている緑のスライムみたいなやつは…ポーションか)
「値段は銅貨2枚…高いのか安いのか全く分からない」
「相場と同じ値段ですね…世界で貨幣は統一化されています。銅貨50枚で大銅貨
それが50枚で銀貨、銀貨50枚で大銀貨、大銀貨50枚で金貨、金貨50枚で大金貨です。だいたい銅貨6枚で一泊食事付きぐらいですかね。普通に食事だけなら一人前で銅貨2枚ぐらいです」
「なるほど、ありがとう」
(ポーションは確かラノベでは回復こうかがるんだよな…てことはたぶん安いんだろう。しかし、世界で貨幣共通は楽でありがたい、覚えることが少なくて済むからな)
シンがそんなことを考えていると店の奥から怪しげのあるおばあさんが出てきた。
アルカはそのおばあさんに目的のステータス石を頼む。
「一つ確か銅貨三枚だったよね、この後にお兄ちゃんにもあげるから多めに買っておきたいから、8個と予備に10個お願いします」
「いつもありがとうね、じゃあ合計で…すこしキリが悪いからおまけしといてあげるね、銅貨を気にしないとなると…大銅貨二枚でいいかしら?」
「うーんと、たぶん合ってる!」
(一つで銅貨三枚…8個と10個で合計18個、3かけて銅貨54枚
50枚で大銅貨一枚…切り捨てたら一枚だろ、明らかにおかしいのなんで気がつかないんだ?)
「婆さん、計算間違ってないか?8+10で18、18×3で54、一の位切り捨てて50だろ?大銅貨一枚の間違えじゃないか?」
「えっ?えーと?8と10だからえーと…」
「…お、おお、そうじゃったな間違えてしまったわい、すまんの」
アルカは計算が間違っているのかを確認するために両手を使って計算し始めた。
おばあさんは慌てて自分の発言を訂正して謝る。
シンはその様子を見て一層目力を強くしておばあさんを観察する。
「おい、お前アルカのこと騙そうとしていなかったか?」
「なんのことだい?計算を間違えただけでよしてくれやい、もう老いぼれでのう
うまく頭が働かんのじゃ」
シンの発言におばあちゃんは笑いながらそう答える。
「婆さん、俺の眼の前じゃあんた程度の嘘はすぐにばれるぞ?
正直にいいな、あんたはアルカのこと騙そうとしただろ」
「だからそれは言いがかりじゃよ、間違いだって言っておるじゃろ?」
「はぁ、異世界ってのはなんでもありだな」とシンはため息をつきながらそう呟いてもう一度おばあさんに話しかける。
「仕方ない、人間ってのはな意識していなくとも動いてしまうことが多々ある。
その動きってのは意識していないからこそ、その人間が今考えていることが分かるのさ」
「あんたはその動きを見て私は嘘をついて嬢ちゃんのことを騙そうとしたって言いたいのかい?」
「別に?そんな様子はなかった、そういう動きは全く見られなかった」
「なら何を証拠にわしのことを詐欺師呼ばわりしているんじゃ?」
「確かに無意識の動作が無いんだよ、無さすぎるんだよ。本来人間は無意識の動作が無くなるなんてことはあり得ないんだ。無意識の動作を隠そうとすれば隠そうという考えの無意識な動きがされるはずなんだ、しかしあんたにはそれがまったくない、つまりあり得ないんだ。そこから導き出される答えは何かしらの力…スキルとか言うやつかな?」
シンは不敵な笑みを浮かべながらおばあさんに近づき追い詰めていく。
おばあさんが後ずさりするもシンは近づき距離を保つ。
「人を騙す力を今の今まで使っているわけだ、犯罪歴が無いわけがないよな、
そんな程度の低い力で騙しとおせるほどこの世界甘いとは思えない、となると…
この都市に入る時も身分証明書は提出していないだろうな、もしあんたを傭兵につきだしたらどうなるかな?たしか……身分証明書がない状態での犯罪は極刑だっけか?」
「…っ!」
シンの言葉におばあさんはおびえたように声を出す。
その様子を見たシンは手を叩いてこう言った。
「さて、交渉だ」
「な、なにをじゃ」
「なに、簡単なことだ、アルカが欲しがるもの全てタダでくれれば通報はしない」
「タ、タダじゃと!そんなのわしが破産してしまう!」
「なぁ、状況をよく整理してくれよ、お前は通報されたら全てを失う、お金も商品も命も。でも、条件をのむなら失うのは商品だけで済む、いい条件だとは思わないか?」
「…わ、わかった」
「よーし、契約成立!」
シンはそう言っていまだ計算にてこずっているアルカに近寄って状況を話しに行く。
アルカは「通報するべきです」と強く言ったがシンの巧みな交渉術によって納得した。
「ありがとうな婆さん、二回目はないようになー」
アルカは補充したかったもの全てを手に入れ
シンはアルカに持っておいたほうがいいと言われたものや
本を手に入れて満足そうに店から出た。
「もう二度と来るでない」
おばあさんは力を無くしたようにうなだれて力のない声でかすかに
そう呟いた。
「いい買い物したなー」
シンは本を持ちながら笑いながら言った。
そして二人はまた街中を歩きだした。
「シンさん、ありがとうございます」
アルカは一旦歩を進めるのをやめて頭を下げてシンにお礼をした。
「気にするな、俺は自分がやるべきだと思ったからやっただけだ」
(これは、考えてる姿が妹に似ていてとっさに体が動いていたなんて言える状態じゃないな)
「それでもありがとうございます。たぶん今までも騙されていました
今回もらったものでその分を取り返すことができました」
「まぁ、これで少し信頼を獲得したならよかった、これから教会に向かうんだろ?
少し日も暮れてきたからな行くなら急ごう」
「もう、教会は大丈夫です」
シンはその言葉で歩き出そうとしていた動作を急停止させる。
「信頼は十分獲得できたってことか?」
「シンさんが世渡人かどうかはいまだにわかりません、しかし悪い人ではないことはわかりました。助けてくれた人のことを探るのは無礼だと心得ています」
「そうか、ならここでお別れか?」
「そうですね、シンさんが私について行く意味はなくなりました。お別れするのが基本だと思います。ですから最後にこのメモと少しまとまったお金は渡しておきます」
そう言ってアルカはシンにポーチから出したお金の入った袋と四つ折りの羊皮紙らしきものを渡す。
「それには大銅貨が2枚入っていて、メモにはお兄ちゃんが私の為に書いてくれたこの街の簡易的な地図が描かれています。
この世界に来たばっかりのシンさんには役に立つでしょう」
「持ち物のことから地図やお金まで、最初に会ったのがアルカで俺も運が良かった。
改めてこちらこそありがとう」
「本当はある程度の面倒をみるのが礼儀なんでしょうが、そうはいっていられない立場でもあるため、ここでお別れとなってしまいます」
「気にするな、ここまでしてもらったんだ、文句なんてあるはずがない」
「そう言ってもらえるとありがたいです。では、また機会があったら会いましょう」
「あぁ、じゃあな」
シンとアルカはそう言って別々の方向にある言って言った。
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