第19日目 野外パーティイベント開催! ②

 うう・・・一体何故このような事に・・・。

今私は壇上に上がり、大勢の観衆が見守る中で何故か白銀のナイトであるアンディからトロフィーを受け取ろうとしている。

絶対に私はレインボーローズ姫の称号を得たくなかったので、断固拒否したのだが

周囲から猛反対され、泣く泣く引き受ける事となってしまったのだ。

優勝者にはトロフィーが授与される事になっており、名前を呼ばれるのだが、その際に条件を付けさせてもらった。

どうしても今年のレインボーローズ姫にならなくてはいけないのなら絶対に名前を明かさないことを条件にしてもらった。


「さあ、今年のレインボーローズ姫は・・・『トクメイキボウ』さんですっ!みなさん、拍手で迎えて下さいっ!」


司会者の言葉に会場に拍手が響き渡る。その拍手の合間に、何だ?トクメイキボウってとか、変わった名前だな・・・等とざわめきが聞こえてくるが、そんなのは私の知った事ではない。今は一刻も早くトロフィーを受け取ってすぐにこの場を立ち去りたいっ!だって・・・他のコンテストの出場者・・・特にオリビアが今にも私の事を射殺さんばかりの目で睨み付けているのだから・・・っ!


 そしてトロフィーがアンディから受け渡される瞬間・・・彼が私に顔を近づけると誰にも聞こえないような小声で私に言った。


「ベネット、今日の服・・・良く似合っているぞ。」


「は、はい・・・ありがとうございます・・・。」


こんな・・・・公衆の面前で顔を近づけないで欲しいっ!全学年の憧れの的であり、オリビアの恋人でもあるアンディにこんな事をされたら、オリビアの怒りだけでなく、全校生徒から嫉妬されてしまうかもしれないじゃないっ!

しかし、それにしても・・・何て大きなトロフィーなんだろう。

エリスの身長は152㎝しかない。そして一方のトロフィーは私の上半身分位の大きさがある。だけど・・・アンディは軽々と持っているので、きっと見た目は大きくても軽い素材で出来ているのかもしれない。

やがて音楽に合わせてアンディからトロフィーを受け取り・・・ズシッと両腕にのしかかる重み・・・・。

お・重い・・・。

持ちきれなくてガクッと両膝を追ってペタリと床に座り込んでしまった。

し、信じられない。こんなに重い物・・・女性に持たせるレベルを超えている!


そして座り込んだ私を見た男子学生たちからは、何故かおお~っという声が沸き起こる。ん・・・?今の声は一体どういう意味なのだ?チラリと彼等を見ると・・・何故か全員頬を赤くして私を見ている。


「だ、大丈夫か?ベネット!」


アンディが慌てて腕を掴んで私を助け起こす。


「は、はい・・・ありがとうございます・・・。」


助け起こしてもらいながら何気なくアンディの頭上に目がいった。

そして私はアンディの頭上に浮かぶ好感度を表すハートのゲージを見て唖然とした。

何と、アンディの好感度は0になっていたのである。

何故?何故・・・好感度が上がっている?!選択肢は何も出ていないし、私は別に彼の好感度を上げるような真似はしていない。なのに何故・・・・。

思わず目を見開いてアンディを見つめると、私の視線に気づいたのかフッと笑みをうかべる。

え・・・?い、今・・私を見て笑った・・・?

そしてその時、視線を正面から感じ、そちらを見ると偶然にもオリビアの姿が目に入った。彼女は食い入るようにアンディの頭上を見上げている。ま・まさか・・・オリビアの目にも・・・彼らの好感度が目に見えているのだろうか・・?そしてオリビアが私の方を見た。

すると途端に激しく私を睨み付け、さっと視線を反らす。

この時私は確信した。

間違いない・・・オリビアにも・・彼らの好感度が目に見えているのだと・・・・。



「ふう・・・やれやれ・・・。」


重たいトロフィーは主催者側に託し、私は1人目立たぬ場所でこっそり取って来た立食パーティーで振る舞われている料理に舌鼓を打っていた。


「ああ、美味しい。もっと貰ってきたいけど・・・さっきのイベントで目立ちすぎちゃったからな・・・。」


ポツリと呟くと背後から声をかけられた。


「もしかすると・・・ベネットか?」


ん?その声は・・・・?

背後を振り返ると、そこにいたのはエディ・マクレガー。

彼の好感度は相変わらずのマイナス50だ。


「マクレガー様。こんにちは。」


「ああ・・・。ところでベネット。何故こんな人気のない場所で食事をしているのだ?」


「それは・・・目立ちたくないからですよ。今日はただでさえ参加するつもりも無かったコンテストで何故か優勝してしまって壇上でトロフィーを受け取ってしまったんですから。」


「そうか・・・。」


するとそれを聞いたエリオットが何故か嬉しそうに目を細める。え?何故そこで笑うのだろう?


「あの・・・?」


思わず声をかけると、エディがはっとした表情で私を見た。


「あ、ああ。笑ってすまなかったな。ベネット。今のお前の態度・・・以前のお前とはまるで違うから・・・本当に別人のように変わったな。でも・・今の姿の方がずっといいぞ?」


何故か優し気な口調で語り掛けてくるエディ。


「は、はい・・・。ありがとうございます・・・。」


そして私はチラリとエディの頭上に浮いている好感度のハートのゲージを見ようとして・・・息を飲んだ。

なんと、好感度のゲージが消えているのである。

こ、これは・・・もしかして何の前触れもなく・・・フリートークモードに入ってしまたのか・・?やっぱりこのバーチャルゲームの世界・・・最近おかしいっ!バグだ!バグが起こっているに違いないっ!何より今日に限って「ベソ」と「ノッポ」が不在なのが何よりの証拠だ。

恐らくゲームの動作不具合か何かが起こって、彼らは呼び戻され・・・。

等と悪い不安が押し寄せてくる。私はどうやら相当顔色が悪くなっていたようだ。


「どうした?ベネット、大丈夫か?」


気付けば私はエディに両肩を掴まれ、心配そうにのぞき込む彼の顔が眼前にあった。


「あ・・・。だ、大丈夫です。ちょっと疲れがたまっていたようで・・・。」


何とか愛想笑いをしてごまかす私。


「そんなに・・・大変なのか?メイドの仕事・・・。」


ポツリとエディが呟く。


「はい?」


「いや・・・私は・・・最初から反対していたんだ。いくら何でもベネットから爵位をはく奪し、メイドの仕事をやらせようなどと・・・。」


「でも、皆さんで決めた事なんですよね?仕方ないですよ。」


すると意外な台詞がエディから飛び出した。


「い、いや。別にみんなで決めた事ではないんだ。全て・・・オリビアが決定した事なんだ。そして・・・やむを得ず賛同させされた。」


「え?そうだったんですか?ちっとも知りませんでした。」


何と・・・それは予想を覆す話だ。


「ああ。それで実はその時から・・・正直に言うと私はオリビアに対して不信感を持っていたんだ。」


「そうなんですか・・?」


あまりにも意外な話で驚いてしまった。


「ああ。だから、さぞかしお前は猛反発するだろうと思っていたのに・・・実際のお前はメイドの仕事を一生懸命頑張っているし、明るく、前向きだし・・・よく頑張っていると思うよ。」


「・・・どうもありがとうございます。」


へえ~なんか意外だ・・・。私の事をそんな風に見てくれていたなんて。


「ところでマクレガー様はここで何をしていたのですか?」


「ああ・・・。どうも騒がしいのが苦手で、人込みから離れていたんだ。」


「そうなんですか。それじゃ私も行きますね。どうぞお1人の時間を楽しんでください。」


私は立ち上がると頭を下げてその場を去ろうとして・・・手首を突如として掴まれた。


「ベネット・・・。」


真剣な目で私をじっと見つめるエディ。


「な、何ですか?マクレガー様。」


「何か・・・悩み事があるなら・・・遠慮なく言えよ。・・・出来るだけ力になるから。」


「は、はい。ありがとうございます・・・?」


そして改めて頭を下げて、エディと別れる間際に好感度を示すゲージが表示され・・・数値は0になっていた―。










 




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