第14話:ばれないとお思いでしたか。
ルザハーツ城のリオルートの元に、予定のない訪問者が到着していた。
相手が相手だけに謁見の間ではなく、防音の魔道具の置かれた一室へと案内される。
「これはこれは、神官長。お久しぶりですね」
扉が開きリオルートが部屋に入ると、ソファから立ち上がった神官長サーゼンが深く一礼をした。
「お久しぶりでございます、リオルート様」
神官長の後ろに控え立つ二人の神官も同時に一礼をする。
その内の一人は王太子であるレディルだったが、神官の帽子が彼の顔をうまく隠していた。
レディルは今以上の関係悪化を防ぐため、まずはライツと愛那の現在の様子を探り、話が出来るタイミングを計るつもりだった。
「ライツから話は聞いています。なので、まさかこんな早くにこのルザハーツ領へ貴方がおいでになるとは、思いもしませんでしたよ」
ソファに座った二人が話し始める。
「突然の訪問になってしまい、大変申し訳ありません。実は御神託を賜りまして、一刻も早く救世主様へお伝えしなくてはという思いで来させていただきました」
「御神託・・・・・・なるほど、そうですか」
「あの、ライツ様と救世主様はどちらに? このルザハーツ城に滞在していると聞いて来たのですが」
「共に魔物の討伐に出ています。マナ様の初めての討伐になりますので、練習を兼ねた初心者用の場所です。夕刻には戻ってくるでしょう」
「マナ様。それが救世主様のお名前でしたね。ライツ様のお話では17歳だとか。リオルート様は直接お話しされましたか? 救世主様は一体どのようなお方なのでしょう? 今もまだお怒りでしょうか?」
「それを私に訊かれましても・・・・・・しかし、異世界召還をしておきながら、救世主様に一言も声をかけることなく放置したというのは本当でしたか」
笑顔で嫌味を言うリオルートに、神官長は神妙な様子で「お恥ずかしい限りです」と答えた。
「ところで」
リオルートの視線が後ろに控える一人の神官へと向けられる。
「そちらの神官に扮した王太子殿下は、一体どんな用事があってこのルザハーツ領に?」
「!!」
レディルがビクッと身体を震わせる。
「・・・・・・ばれていたか」
「ばれないとお思いでしたか」
呆れた声で言い返され、レディルは帽子を取った。
そして気まずげな顔で髪をかきあげると、数秒思案し、勢いをつけてリオルートの方へと近づいた。
「リオルート!」
「何です?」
「俺、いや、私は反省している! とても深く深く反省しているのだ!」
「反省は当然です。だが、それを私に言われても」
「謝罪がしたい! 救世主であるあの少女に! ライツの怒りも解きたいのだ! 協力してくれ! 頼む!」
そう言ってレディルは真剣な顔でいとこであるリオルートに頭を下げた。
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