第7話:スライムは素手で触れてはいけない。
この日、昼まで愛那は魔物について勉強をした。
まずスライムは素手で触れてはいけないということ。
なぜならばスライムは攻撃はしてこないが、触れた箇所をジワジワと溶かし吸収するという危険な魔物だからだ。
スライムを捕獲したり触れたりするには特殊な手袋が必要ということで、直接触れてみたかった(つついてみたかった)愛那は、内心とてもがっかりした。
それから見た目だけで属性のわかる魔物はスライムだけということも教わった。
同種の魔物であっても属性が同じとは限らない。
討伐後手に入るのは風・火・水・地・光・闇という六種類の属性の魔力石。
聖の魔力石は紫色のスライム以外から発見されたことはないらしい。
魔物は従来、人の持つ魔力を警戒して人前に姿を現すことは少ないと云われている。
だが現在は、魔物の数が多くなっている異常事態。
山奥に住んでいた魔物たちが人前に姿を現し、中には攻撃魔法を使う危険な魔物も存在する。
一部だけだが、魔物による詳しい被害状況を知った愛那は、改めて身を引き締める必要があることを感じていた。
午後になったばかりの頃、討伐に出ていたライツ達が帰って来るという先触れに、愛那はナチェルと一緒に城の入り口へと向かった。
愛那はルザハーツ家の当主リオルートも認めたライツの恋人としてこのルザハーツ城に滞在している。
そんな愛那に興味と関心を寄せる者は多いが、このルザハーツ城に務めている者達は、きちんとした教育を受けており、それをあからさまにする者はいない。
「あっ」と、愛那が遠目で騎乗したライツの姿を見つけた。
(あぁ・・・・・・やっぱり格好良い・・・・・・。じゃなくて、怪我はなさそう。大丈夫、だよね?)
愛那に気づいたライツが笑顔を見せる。
馬から下りたライツが、足早にまっすぐ愛那の所へと進み、ふわりとその身体を抱きしめた。
「ただいま、マナ」
一斉に浴びる周囲の視線に固まった愛那は、顔を赤くして動揺しながらも「お、おかえりなさいませ」と応えた。
ライツは愛那の両肩に手を置いたまま体を離し、愛しげに愛那を見つめる。
「俺が留守の間、何か困ったことはなかった?」
「いえ、なにも。それより、ライツ様や皆様方は大丈夫でしたか? 怪我などは?」
「大丈夫だよ。ありがとう」
そう言ってライツは愛那の頬に口づけを落とした。
(きゃあああああああ!)
声にならない悲鳴を上げた愛那を笑顔で見つめながらよしよしと頭を撫でたライツは誰が見てみも上機嫌で、周囲を唖然とさせていた。
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