私に投票してください! 生徒会長選挙バトル 完
―――――数日後、投票結果の発表日。
勝利を確信した私は掲示板の前まで行くと、今回の選挙結果は気になっている人が多いのか、かなりの人数であふれかえっていました。
「さてと。結果は解りきってますが、一応見ておきますか」
私は人混みをかき分けて、何とか掲示板の前に辿り着いてから見てみると―――――。
「そっ、そんなはずは!?」
私や麗華さんを押しのけて、投票日直前まで空気だった3人目の立候補の律子さんが会長に当選していたのでした。
「おはよー、桜。残念だったわね」
私が呆然としていると、いつの間にか後ろにいた忍さんから声がかけられました。
「おかしいです、忍さん。麗華さんに投票しそうな人をシャットアウトしたのに、こんな事になるなんて!」
「通した生徒のほとんどが、あの人を選んだんじゃないの?」
「……………あ」
そ、それは盲点でした。
「あ、そうだ。学校のSNSに今回の書き込み結構増えてたけど、桜はもう見た?」
「いえ。まだ見てませんが」
私はカバンの中にある携帯デバイスを取り出して確認してみると、校内SNSには――――。
中川麗華
お金で全部ゴリ押しするのはどうなんだろう
ワガママすぎるから無しで
風宮桜
eスポーツで全部ゴリ押しするのはどうなんだろう
ラーメンの味だけは認める
みたいな感じの事が書かれていました。
「ラーメンだけは認めるって何なんですか!」
「でもこの生徒、桜に投票したみたいだけど?」
「そ、それなら別にいいんですが、それでもラーメンだけって―――――」
「そだね~。桜ちゃんには炒飯もあるから、ラーメンだけってのは望もどうかと思うよ」
「って、望さんいつの間に!?」
忍さんに続いて現れた望さんは、手にポテチの袋を持っての登場です。
「あれ? 望、カバン持ってきてないの?」
「…………ん? ああ〜っ!? カバンとポテチ間違えて持ってきちゃったよ!?」
「いや、そうはならんでしょ……」
「でも今の望さんは、なってるやろがい! ですけど?」
「うがー。じゃあ今すぐ家に帰ってカバン取ってきなさいよ!!」
「ちっちっち~、忍ちゃんは分かってないなぁ~。今から戻ったら遅刻しちゃうじゃん!!!!」
まさかの開き直り!?
さすが望さん、侮れません。
「だったらポテチを机に置いて授業聞けばいいじゃない!」
「忍さん。それはちょっと無理があるかと…………」
―――――――といった感じで。
選挙では負けてしまいましたが、麗華さんを会長にしない事には成功したので、私の家のラーメンは守られたのでした。
まあ9割くらいは予定どおりといった感じですね。
ちなみにどうして1割予定外だったかと言うと…………。
――――ガチャリ。
私は学校の最上階にある部屋の扉を開けて中に入ると、部屋の奥にある大きな机に座っている女生徒が話しかけてきました。
「あっ、副会長。おつかれさま~」
「お疲れ様です」
私はそのまま女生徒の隣にある机に腰を下ろしてバーチャルモニターの電源を入れると、大量の未読書類が画面を埋め尽くしていて、軽い目眩に襲われました。
今回私がここにやって来たのは、この大量にある申請書に不備が無いのか目を通す仕事があるから。
―――――そう。
私は前回の選挙で会長は逃してしまいましたが、何故か副会長に選ばれてしまったのでした。
会長に比べて権力は無く、仕事だけは多い副会長なんて自体しても良かったのですが、会長にどうしてもと押し切られ、そのまま流れで副会長の役を押し付けられた形に。
正直、かなり面倒です。
面倒すぎるので適当に片っ端からOKのチェックを入れていく事も出来るのですが、あまり適当な事をやると学校の成績に関わるので、泣く泣く全部目を通す事に。
…………というか、全部AIがチェックしたら楽なのでは?
などと悪い事を考えつつも、あえてこういった事をやらせて生徒の能力を育てる目的もあるとかなんとか校長先生が朝礼で言ってたので、そういったズルは出来ない事になってるんですけどね。
「――――ふぅ。ちょっと水を飲んできます」
私は生徒会室の外にある水飲み場に向かい蛇口をひねると、何故が水では無く茶色い液体が出てきました。
「おや? これは何でしょうか?」
試しにちょっとだけ指に付けて舐めてみると、ほのかな甘味と口の中で軽く弾けるような刺激が――――――って、これは!?
私は急いで生徒会室に戻って会長に報告する事にしました。
「あのっ。蛇口からコーラが出てきてます!?」
「えっ? 副会長の改革リストにあったから通したんだけど、駄目だった?」
「改革リスト? …………ああっ!?」
そう言えば望さんを勧誘する時に勢いで作った水道コーラ化計画ですが、削除するのを忘れてました。
てか、この人はどうして何の疑問も持たずに通しちゃったんですか!?
「せっかくだから副会長の改革も何個か実行しとかないとね~」
「…………ええっ!? よりにもよって何でそれを選んだんですか?」
「どれにするか選んでたら、偶然通った女の子に絶対これがいいって言われたんだよ~」
ああ、多分それは望さんですね。
タイミングが良いのか悪いのか。
「わかりました。水道の事は私がやっておきます!」
机に座った私は、超特急で水道会社へと連絡して水道を元に戻す手続きをしました。
まさか最初の仕事が自分の後始末から始まるなんて…………。
…………ふぅ。
どうやら会長の書類も私が目を通す事にした方がいいかもしれませんね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます