きのこVSタケノコ 頂上決戦3


「他に質問ある人いるかな?」

「はいっ!!!!」

「じゃあそこの女の子」

「来ましたっ!? 望さん行きましょう」

「わかったよ!」


 私達はステージまで走り、社長さんに人差し指を向けて質問を投げかけました。


「質問です! どうしてタケノコの村をコンビニから消したんですか!」


 社長さんは少し沈黙し。


「ククク。まさかタケノコ派の残党が残っていたとはな」


 不気味に笑った後、語りだしました。


「小さい頃、俺は松茸が大好きだった。だがある日、松茸ご飯の素を買ったはずが何故かタケノコご飯の素が入っていた。それ以来だ、それ以来俺はタケノコを憎むようになった」

「分かるよ。望もエナモンのアブソリュートゼロ買ったのに何故かアトミックフレア味が入ってた事があったよ…………」

「…………あの。望さんも社長さんも、それはただの買い間違いでは?」

「うるさい。ともかく俺はお菓子でもタケノコを許さない。だから俺は世界からタケノコを消滅させるんだ!」

「しょ、消滅させる!? まさかそんな事を企んでいたなんて」


 ―――――こうなったらもうアレしかないっ!


「では、クラウンデュエルで勝負です!! 私が勝ったらキノコを販売停止にしてタケノコの村を復活させてください!」

「ほう? ではこっちが勝ったら?」

「その時は私がキノコのきぐるみを着て宣伝してあげます!」

「あっ、望はあのきぐるみは着てみたいかも」

「ふん。いいだろう。では勝負だ!」

「望さん。ここは2人がかりで行きましょう!」

「わかったよ!」

 

 キノコ派は社長さん1人に対してタケノコ派のこっちは2人。

 ここは数で押し切る!!!!


「ちょっと待ちなさい!!!!!!」

「――――――えっ!?」


 どこからともなく聞こえた、突然のちょっと待ったコールに対戦開始は一時中断となってしまいました。

 ――――それにしても、この声どこかで聞いた事があるような。



「ここよ!!!!」


 突然社長さんの後ろにいたマスコットの1人が歩いてきて――――って、これは!?



「し、忍さんどうしてここに!? というか、その格好はいったい!?」

「どうしてって、キノコの森のPRをするキャンペーンに応募して当選したのよ」


 なんとびっくり。

 突然の乱入者の正体は忍さんだったのでした。

 忍さんはキノコの森PRマスコットであるキノコンを着こなして、前がちゃんと見えるように顔の部分だけ出ています。


「まさか忍さんがキノコに心を支配されてしまっていたなんて…………」

「私は初めからキノコ派なんですけど!」

「忍ちゃんいいな~。望もそれ着てみたいんだけど」

「それなら後ろにあるから着てみたら?」


 私達は後ろを見ると、タケノコの森の宣伝マスコットであるタケノコンのきぐるみが用意してあるのを発見しました。


「あっ!? タケノコンじゃん」

「忍さんに負けない為に私達も着ましょう!」

「じゃあ望から着るよ」


 タケノコンのきぐるみは始めて来たにもかからわず、完全に私にフィットして凄くいい感じです。

 そう。まるでタケノコ派の為に存在しているような心地よさが全員を包み込んでいます。

 


 ――――そういう訳で。

 私達はタケノコンのきぐるみを着て身も心もタケノコになり、キノコ派との最終決戦の準備は完了しました。


「桜、やぶれたり!」

「…………えっ? まだ対戦も始まってないのに、忍さんは何を言ってるんですか?」

「まっ、すぐにわかるから見てなさい」


 忍さんの謎の自信は気になりますが、とりあえず今は早く変身しないと。


「シャンティ。コンバージョンです!」

「了解、桜。コンバージョンスタンバイ」

「スタート、アーーーップ!」


 音声認識で反応したシャンティがゲーミングスーツのパーツに変形し、私の体に装着され―――――。


「痛っ!」


 ――――るはずが。

 きぐるみを着ているせいで、うまく装着できずにパーツが頭にぶつかってしまいました。

 装着に失敗したシャンティは仕方なく元の球体に戻ってます。


「ああっ!? きぐるみを着てるからサイズが合いません!?」

「ふっふ~。どうやら私の罠にハマったみたいね!」


 まさかゲーミングスーツは私の体に合わせた設計になってるので、少しでも厚着をしたら着れなくなるという欠点をつかれるとは………………。


 けど、それならキノコンのきぐるみを着てる忍さんもゲームが出来ないのでは?


 ――――と思って忍さんを見てみると。



「あっ!?」 

「こっちは対策済みってわけ」


 なんと、忍さんは自分のナビのアルティを装着したままキグルミを着ていたんです。


「大変です望さん!? このままだとナビを装着出来ま―――――」

「ん? どうかした?」

「………………望さんは装着してからキグルミを着たんですね」

「え? だってそうしないと付けれないじゃん」

「…………そうですね」


 まさかの気付かなかったのは私だけ!?

 ――――けど、望さんが装着しててくれたおかげで何とかなりそうです。


「シャンティ。一時的に望さんのサポート端末登録お願いします」

「いいけど、パフォーマンスがだいぶ落ちるよ?」

「非常事態なので仕方ないです」

「非常事態というか、桜の自業自得じゃない?」

「…………う、うるさいですね。早くお願いします!」

 

 シャンティは「はぁ」とため息を付いてから望さんのナビと通信して、私の前に電子モニターと電子キーボードが表示されました。


 VRゴーグルでは無いので自分の戦ってる周辺をすぐに見渡す事が難しくて、行動もワンテンポくらい遅れてしまうのが難点ですが参加せず不戦敗になるよりはずっとマシです。


「社長、いいの?」

「べつに俺はどっちでもいいけど」


 忍さんが社長さんに私が望さんのサポート端末として参加して大丈夫か確認してくれて、レギュレーション的にもどうやら問題無いみたいです。


「では、勝負で――――――――」

「ちょっと待った! この試合、私がジャッジする!」


 勝負が始まる瞬間、突然謎の声が会場に響き渡り、対決が一時中断されました。

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