俺は幼馴染と妹でお化け屋敷に入るんです
重い足取りで俺が2人の元へ戻ると、彼女たちは「大丈夫??」と心配そうな声をかけてきた。
「光汰、どうしたの?? そんな暗い顔をして」
「今日は帰ろう」
「え、でもまだお昼ご飯食べてないよ??」
「俺、帰りたいんだ」
今は全然楽しめそうにないんだ。
俺がそう言うと、茉里奈はいつになくハァと深い溜息をつく。そして、腰に両手を当てた。
「ダメよっ!! 光汰が全力で楽しむまでここにいるの!!」
「でも……………………」
「さっきから光汰は楽しそうな顔してないじゃない!! どうせジェットコースターとか絶叫系が嫌だったんでしょ?? でも、私たちが楽しそうにしてたから何も言わなかったんでしょ??」
茉里奈はプクーと頬を膨らませる。どうやら俺の気持ちに気づいていたようだ。
行きたい場所は芦ケ谷と一緒に行きたいんだよな。
「お兄ちゃん、本当は何に乗りたいの??」
こてっと首を傾げ問うてくる樹梨。
————————芦ケ谷とならお化け屋敷に行きたいところだけど。
「お化け屋敷に行きたいんでしょ??」
「なっ」
樹梨は俺の考えを読んだのか、行きたかった場所を当てた。
このぉ……………………なんで俺の考えが分かるんだ??
驚きの目で樹梨を見ていると、彼女は「ムフ」と笑って、
「お兄ちゃんと一番過ごしている時間が長いから、分かるに決まってる」
と自信あり気に言った。なんか悔しい。
「なら、行こう!! 光汰が行きたかった場所に!!」
樹梨は俺の右手首を掴む。茉里奈も左手首を掴んでいた。
「でもよ……………………」
「でも、じゃない!! 行こう、光汰!!」
「お兄ちゃんも楽しまなくっちゃ」
そうして、2人に連れられてお化け屋敷に入ったのだが…………………………………………。
「んぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ————————!!!!」
「お兄ちゃん、叫びすぎ」
「みっともない叫び声ね」
俺の両脇にいる2人は至って冷静。「よくできているけど、でも絶叫系の方がもっと怖いわね。ハラハラした感じが少ない」なんてことを言っている。
なんでお前らはそんなに普通な感じでいられるの?? 手の震えが止まらないんですけど。
お、お化け屋敷ってこんなに怖かったか??
すると、樹梨がプイっと顔を向けてきた。
「良かったね、お兄ちゃん」
「な、なにがだ??」
「あのチート女にみっともないところ見られなくて」
「……………………」
「一緒にいる私はお兄ちゃんの弱点を発見。いい収穫」
樹梨は「怖がるお兄ちゃんも好きだから、安心して」と言って、ニヤリと笑う。
その後も俺はずっと驚かされ、叫び続けた。2人は「わぁ」と感心するぐらいで、悲鳴の1つも上げなかったけど。
なんでジェットコースターではあんだけ叫んでいたのに、ここでは冷静沈着なんだよ。
そうして、長い長い道を歩き、やっとお化け屋敷の出口前までやってきた。
「お兄ちゃんが一番怖がってたね」
「なんでお前らは怖くなんだよ」
「「最近一番恐ろしいことが夢に出てくるから」」
「……………………その夢ってなんだよ??」
お化け屋敷よりも怖いっていうのだから、よほど怖い夢に違いない。
「お兄ちゃんが…………」「光汰が…………」
2人が怯えた声で言うので、その恐怖が移った俺はゴクリと唾を飲む。
俺が一体どうなるんだ??
「「チート女に取られる夢」」
「……………………」
2人は大真面目な顔で言った。茉里奈は付け足すように「特に光汰が寝取られる夢は一番恐ろしかったわ」と話す。俺は呆れのあまり何も言えなかった。
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