俺は朝食中に誘われるんです

 茉里奈に電話を強制終了させられた俺は彼女と廊下で言い合っていた。

 

 「茉里奈!! 勝手に切るなよ!!」

 「いいじゃない!! どうせ呪いをかけ直したら、電話もできなくなるんだから」

 「……………………どういうことだよ??」

 

 すると、俺の問いかけに樹梨が答えた。

 

 「あとでお兄ちゃんに呪いをかけ直そうと計画してたの。あの女の人、……………………チートだから。もっと強化しておいた方がいいと思って」

 

 お前ら、そんなことを考えていたのかよ。

 

 「…………………………………………電話はせめて許してくれよ」

 「嫌よ」「嫌だ」

 

 2人は迷いなく即答。

 

 「俺、芦ケ谷と電話できないのなら、死ぬ」

 「やっぱいいよ」「いい……………………って樹梨ちゃん!? これはトラップよ。本気じゃないわよ」

 

 茉里奈は慌てて話す。

 いや、茉里奈。俺は本気だぞ。愛する人と一緒になれないのなら、男は生きれないからな。

 寂しげな顔を浮かべる樹梨は「お兄ちゃんが死ぬのは嫌だ」と漏らす。

 そんな妹を見ていると、俺はふとあることを思い出した。

 

 「樹梨、卵焼きは??」

 「あ」

 

 俺と樹梨は急いでキッチンに行くと、焦げた臭いを漂わす黒焦げ卵焼きがフライパンの上にいた。

 やってしまった。これはさすがに食べれない。

 そうして、手軽な目玉焼きを作り直し、朝食の準備ができた俺たちはようやく座ることができた。


 今日はまだ朝ご飯を食べていないということらしいので、茉里奈も一緒に座っている。

 …………………………………………家、隣なんだからあっちで食べて来いよ。茉里奈ママが悲しむだろ。

 

 「光汰、今日は何をするの??」

 「何って??」

 「今日の予定よ」

 「なんで茉里奈に教えなきゃならん」

 「まぁ、そう堅いこと言わずにさぁ……………………それで空いているようだったら、私とデートしない??」

 

 ブブっ————。

 茉里奈の誘いに俺は飲みかけのコーヒーを思わず吹き出す。

 隣に座る樹梨が「お兄ちゃん、汚―い」と棒読みで呟く。

 

 「な、なんでお前とデートしなきゃならないんだ」

 「だって、私は光汰のことが好きなんだもん。美少女とデートできるんだからいいでしょ??」

 

 そう言って、茉里奈はご飯を口に運ぶ。

 いや、デートするなら芦ケ谷とがいいんだけど!! なんで友人とデートしなきゃならんのだ。

 別に茉里奈のことが嫌いってわけじゃないんだけどさ、他のクラスメイトに誤解されるかもしれないじゃないか。

  

 「デートしてくれたら……………………呪いを解除してあげるかも??」

 

 茉里奈はニヤリと笑う。

 その言い方は絶対する気のないやつだろ。考えが丸見えだぞ。

 カチャン。


 お椀にお箸を置く音が響く。

 隣を見ると、樹梨が不気味なオーラを出していた。

 

 「お兄ちゃんが茉里奈ちゃんとデートするなら、私もデートする」

 「なっ」

 「茉里奈ちゃんだけ行くのはズルい。それに……………………」

 「そ、それに??」

 

 樹梨は少し顔を俯ける。

 

 「最近アイデアが思いつかないから、お出かけしたいの」

 「……………………それは一大事だな」

 「そうでしょう??」

 

 樹梨は口をとがらせ、上目遣いでこちらを見てくる。くっ……………………あざといな。

 俺は目を閉じふぅと息をつき、肩を落とす。

 そして、言った。

 

 「仕方なねぇーな。行くか、遊園地!!」

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