第54話 苦悩の病院通い part1

南の窓から差し込む太陽の光で目が覚めました。


ぐっすり眠れたんだ・・・壁掛け時計は7時半を回って


います。さあー8時にはアパートを出なければ・・・


階下の共同キッチンで洗顔、歯磨き、奥から大家の奥さんの声が


聞こえます。中学、小学4人の母親なので、朝は大戦争の様子です。


「ねー早く食べなさいよ・・何、モタモタしてるの?」


いつもの日常がそこにあります。


 つい何日か前には、何もなければ、俺たちにも


いつもの風景があったのに・・・「ねー貴方・・・今朝はパンで


いい・・・ごはんだったらちゃんと用意するから・・・ねー


聞いてるの?」「うーん、トーストとハムエッグでいいよ・・・」


朝から、狭い台所でガチャガチャしています。「ねーこのエプロン


いいでしょ・・・金曜日に渋谷の109で衝動買い、¥2,980


もしたのよ・・・」「そーなんだ・・・グリーンの図柄が由紀子に


合ってるよ!」「褒めてくれてありがとう・・・さー起きて


今日は1限体育でしょ。代返駄目だからね。ねー早く支度してね・・・」


いつもの風景があったのに・・・今日から9日間、最低でも1週間は


過酷な闘病生活が始まります。経過観察・・・ホルモン投与・・・


最悪は腫瘍の危険性もある病状、加えて岩手の問題もクリアーにしてゆかねば


なりません。よーしとつぶやきながら新丸子の駅を後にしました。 


 病院に着いたのが8時50分、上出来です。それにしても東横線は


通勤ラッシュで凄い混雑で辟易します。近い将来、自らもこの風景を


体験することになるんだんだ!・・今は、大学2年、20歳です。あと2年の


モラトリアムの中で何を見つけてゆくのかな?そんな事をつい考えてしまう


センチメンタルな病院通いが始まったのです。

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