第15話 ねずみのよめいり
ある田舎の農家に、家ネズミの親子が住んでいました。
父ネズミと母ネズミは、器量好しな娘が、とても自慢です。
娘ネズミは、ネズミ耳とネズミ手袋、ネズミブーツとネズミ尻尾を纏っただけの、裸な姿をしておりました。
年頃な娘ネズミは目鼻立ちも整い美しく、スタイルも抜群で、巨乳に括れに安産型と、長いサラサラヘアも眉目麗しく、性格も素直でおしとやかで優しいと、非の打ち所がありません。
つくづく母親似で良かったと、父ネズミも誇らしい娘でした。
「こんなに素晴らしい娘なのだから、世界で一番の婿を見つけてやらないとな」
そこでネズミの両親は、娘を連れて、世界で最も素晴らしいと誰もが認める、地上を照らす太陽の下を訪れました。
「太陽さん 太陽さん。あなたは世界で一番 素晴らしい方です。どうか、娘の婿になってくれませんか」
明るい性格の太陽は、答えます。
「イェァアア! オォレが世界で一番だってエェェエエっ? うっひょおおおおおっ、そいつぁ全くのっ、見当違いェっっって、モンだぜえええっ!」
やたらと明るいノリで、太陽は続けます。
「オォレがどんなにぃっ、大地を照らしたところでぅえええっ、雲に隠されちまったらアアっ、意味ないっじゃああああああんっ! ってワケでええっ、世界で一番素晴らしいのわはっ、雲だZEEEEEEEEEEっ!」
会話しずらいノリはともかく、言われてみれば。と、ネズミの両親も思います。
そこで今度は、雲の下を訪れました。
「雲さん 雲さん。あなたは世界で一番 素晴らしい方です。どうか、娘の婿になってくれませんか」
内気な性格の雲は、静かに答えます。
「ぼ…僕が、一番素晴らしいなんて…そんな事は、あ、ありません……僕なんて…風が吹いたら…と、飛ばされてしまう、ような…そんな…軽くて、薄くて、何の力も無い…役立たず、なんです……」
自虐が過ぎる自己分析を、雲は続けます。
「だから…世界で、一番、素晴らしいのは…何の役にも立たない…ふ、吹き飛ばされて霧散してしまえばいい、ぼ、僕なんか…ではなく…風、なんです……」
気の毒にすら感じる自虐はともかく、言われてみれば。と、ネズミの両親は思います。
そこで今度は、風の下を訪れました。
「風さん 風さん。あなたは世界で一番 素晴らしい方です。どうか、娘の婿になってくれませんか」
せっかちな性格の風は、早口のように答えます。
「おいおいオイラが世界で一番素晴らしいってそんな事ないないだってオイラがどんなに強く吹いたって壁にはことごとく遮られっちまうんだからつまり世界で一番素晴らしいのは壁って事でOKっ!」
一息で言い切る肺活量の凄さはともかく、言われてみれば。と、ネズミの両親は思います。
そこで今度は、壁の下を訪れました。
「壁さん 壁さん。あなたは世界で一番 素晴らしい方です。どうか、娘の婿になってくれませんか」
寡黙な性格の壁は、静かに、言葉少なに答えます。
「…………違う。…………ネズミに食い破られる。…………素晴らしいのはネズミ」
言葉は最小限ですが、言われてみれば。と、ネズミの両親は思います。
そこで今度は、田舎に沢山いても太陽が嫌いなドブネズミではなく、最近、都会から地主の庭に引っ越してきたという、家ネズミの下を尋ねました。
「ネズミさん 都会から来たネズミさん。あなたは世界で一番 素晴らしい方です。どうか、娘の婿になってくれませんか」
父ネズミの声に、庭の物置から、若く逞しい声が返ってきます。
「いま行きます。どうも」
壁の穴から姿を見せたのは、金髪碧眼イケメン痩せマッチョでシックス・パックな、背の高い牡の家ネズミでした。
青年ネズミは、ネズミ耳にネズミ手袋、ネズミブーツにネズミ尻尾だけを身に着けた、裸の姿をしております。
青年ネズミと娘ネズミは、一目会った瞬間に、恋に落ちました。
どちらも、目が♡です。
「おとうさん、おかあさん。わたし、この方と結婚いたします」
「ボクも、お嬢様との結婚を、何よりも望みます。結婚したら、まさしくネズミ算の如く、子供を儲けます」
こうして、ネズミ同士で結婚をして、いつまでも仲良く、幸せに暮らしました
とさ。
~終わり~
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