第55話 オイゲンの長い1日 前編

奴隷商との交渉はシャロンがほとんどしてくれた。

俺達が王国の貴族に恥辱の限りを尽くされた奴隷を買う事で帝国の恨みが奴隷を買い取った俺達に移る。


そう考えると腹が立ったが、まあ王国貴族の思惑通りにはならないので問題はないだろう。


残念ながら王国の貴族達が放り出し明日にも死ぬと思っている帝国の女騎士達は俺に買い取られた事で健康になり生き延びるのだ。


人としての尊厳を踏みにじられた怒りはお前達に向くんだ。


それにしても奴隷商から聞かされた話は随分と醜かった。

互いに憎しみ合うしか無い状況なのは良く分かったけどね。


なんと、帝国との3年に及ぶ戦争で王国軍の戦死者は6万人に及んでいるという。

負傷者はその数倍はいるだろう。

王国と帝国を合わせれば十万人は楽に超える戦死者だし負傷者に至っては四十万人はいるかもしれない。

恨み辛みもあちこちで芽生えて当然だ。


貴族で言えば下級貴族家が一番恨みを抱えているんだろうな。

何しろ下級貴族の次男以下の親の爵位を継げない子供にとっての栄達は王国の騎士団に入る事だ。

それだけに、王国騎士団の戦死者の中心を占める事にもなったはずだ。


騎士として実績を示して自分も貴族位を手に入れる。

そんな夢の行き着いた先が戦死という訳だ。

6万人も死んでいれば一族で相当の戦死者が出ているだろう。

帝国の捕虜を相手に恨みを晴らしたくもなるよな。


「主様、何を考え込んでいるのだ」


俺の陰鬱とした気持ちが顔に現れていたのだろう。

銀が心配そうに尋ねてくる。


「確かに奴隷達の状況は酷かったが主様のせいでは無いぞ。

それに主様の力で治すんだろう。

だから、そんな顔はしなくて良いのだぞ」


「ああ、そうだな、今の俺なら全員を問題無く治せるな」


「そうじゃな、でも気が晴れないのなら大浴場にでも行くか」


オーランドの大浴場か、確かに気は晴れるかな?

でもなあ....


「なあ、銀があそこに行くと男達がよってくるんじゃ無いか」


「おや、主様、銀の事が心配か。

そんなものは断れば済むのじゃがな。

ふむ、それならば貸切風呂に入るか」


「貸切風呂か、それだ、それにしよう」


銀とサミーと3人だけで風呂に入れるのならそれが一番だ。

少し、銀の顔が赤い気がするが、まあ良いよな。


「それなら、銀とオイゲンの2人で入ってきなよ。

私は別の用があるからね」


3人でと思ったのだがサミーは用事があるらしい、

仕方ないので風呂には銀と俺の2人で向かう事にした。



☆☆☆☆☆



サミーが気を利かせてくれたので私は主様と2人で大浴場へ向かっている。

どうやら主様は貸切風呂を家族風呂と思っているようだ。

本当は別の目的で使う所なのだがそれは入れば分かる話。

今は主様と2人で歩くオーランドを楽しむ事にする。


「ねえ、主様、こうして歩いていると恋人同士みたいですな」


腕を組んで歩いているので気分はデートだ。


「いや、流石に無理がないか、どう見ても姉と弟だろう」


そうなのだ、主様は急に身体が大きくはなったが、それでも12歳の身体だ。

成人の私と並べば身体の大きさの違いはすぐに分かってしまう。

それに、主様の整った顔もまだ可愛らしさが勝っている子供の顔だ。

だとしても私には愛おしい人なのに!


「もう、主様は意地悪です、そこは肯定する所です」


私は少しいじけて見せる。

それは、周りからするといい大人が子供相手に拗ねている様に見えるだろう。

でも、それでも良いのだ。

私は主様に甘えられて幸せなのだから。


「おい、銀、銀じゃないか」


主様との世界に入り込んでいる所に無粋な声が割り込んでくる。

イラッとして声の方を見ればそこには3人ずれの男の姿がある。

3人とも無精髭をはやして、街中なのに腰に剣を帯同している。

いわゆる荒くれ者だ。


「何だよ、お前、断りもなく消えて。

こっちは急にお前が抱けなくなって不自由してたんだぞ」


ギラギラした目で私を舐め回すように見ている男たち。

そうか、昔の客ね、でも全然印象に残ってないんだけどね。


「銀、こいつらはなんだ」


主様が不愉快そうな声で聞いてくる。


「すいません、見覚えは有りませんが、多分昔の客だと思います」


私は声を落として主様に説明するが、その声は男たちの耳にも届いたらしい。


「なんだよ銀、随分とつれない言いようだな。

昔の馴染みに知らないはないだろう」


なにこいつ、なんでこんなに私に対して自信満々なのだろう?


「ふ〜ん、銀の昔の客か、悪いけど今の銀は俺の従者なんで、お前達の望む仕事は廃業済みだ。

だから、女が欲しければ他を当たってくれないか」


主様が私と男たちの間に立って話をしてくださる。

従者が主人に気遣われるようでは従者としては失格だが、主様のその言葉にときめく自分がいるのが分かる。


「ああ、坊主がなにカッコつけてるんだ。

俺たちは銀と話してるんだ、分かるだろう

だから、お子ちゃまは脇にどいてろ。

ケガはしたくないだろう」


「おい、今なんと言った」


主様の声に怒りが混じり出す。


「あ〜、坊主聞き損ねたのか?

ケガをするぞと教えてやったんだぞ」


「そうか、俺にケガを負わせる気なんだな。

なら自分の身を守る必要があると言う事だ」


「なんだと、クソガキが」


主様の言葉に反応して男の1人が罵声と共に剣の抜こうとするが、連れの男に止められる。


「おい、おい、幾ら何でも子供に短気すぎるぞ。

なあ、坊主、オレ達は喧嘩したい訳じゃないんだ。

昔と同じように銀と大人の遊びをしたいだけなんだ」


そんな男に主様は冷たい視線を送る。


「昔と今は違うんだよ。今の銀は俺の従者でお前達では銀の肌に触れることは叶わないんだ。

分かったら、相手をしてくれる女を見つけにさっさといけよ」


「ふ〜ん、俺たちでは銀には分不相応だと言いたいのか。

でもなあ、銀は俺たちを相手に散々商売をしたんだ。

俺は銀の身体の隅々まで知ってるしな。

俺に抱きついていた女にそんな風に言われる筋合いは無いんだがな」


「だから、昔は昔、今は今だ。

いい加減分かれよ」


主様はそう言うと私の手を取って歩き出す。

でも、諦めの悪い男達はその道を塞ぐのだ。


「悪いな、はいそうですかと言う訳にもいかないんだ。

大の男3人が子供ひとりになめられたとあってはこの先の商売にも関わるんでな。

痛い目に会いたくなければその女を置いて立ち去るんだな」


「そうか、どうやら俺の相手は人では無く獣のようだな。

であれば、拳で躾けるしかないか」


その言葉でさっき剣の柄に手を掛けた一番短気な男が剣を抜く。


「ばか、街中で子供相手に剣を抜きやがって」


連れの男達は少し焦っている。


でも次の瞬間、主様の身体が消えるように動くと男の腹に主様の拳が突き刺さる。


腹を殴られた男は身体をくの字に曲げ苦しんでいる。

そして主様は男の手に手刀を当てると男の手から剣が地面に転がり落ちる。

その剣を主様が遠くに蹴飛ばす。

素早い一連の動作で男は一種で無効化されてしまう。


これが主様が龍から得たと言う力の一つなのだろう。

12歳の身体ではとても出来ない素早さと力強さなのだから。


「なあ、あんた達もやるのか」


仲間がやられて呆気にとられている男達に主様が声を掛ける。

その言葉に怯えて目を逸らす男たち。

見た目と違う主様の実力に戸惑い怯えているのだ。


「そうか、賢明だな、ならこの男を連れてさっさと立ち去ってくれ」


「ヒッ、ヒイイイ」


男達からは、さっきまでの威勢の良さは消えている。

まあ、相手の力量を判断してしっぽを巻くのも大切なスキルだ。

それが出来ない男は大抵早死にする。


「主様、銀のためにありがとうございます」


仲間を連れて逃げてゆく男達を見ながら、私は主様の腕に抱き付き礼を述べる。


「銀を舐める様な目で見られてはそのままにはしておけないさ。

全く不愉快な奴らだったな」


「はい、もう銀は主様の物ですから、他の男に値踏みされる様な目で見られるいわれはありません」


「そうだな、銀は俺の物だ」


そう言って、私に笑いかける主様。

その笑顔に私はときめいてしまう。

周りからはいい大人が子供に呆けている様に見えるだろうが気にしない。

実際、私は真名で主様に縛られて服従している身なのだから。


そしてしばらく歩けば温泉だ。


「なあ銀、温泉に着いたが貸切風呂にはどうすれば入れるんだ」


「主様、受付で申し込みが必要です、銀にお任せ下さい」


私は受付で貸切風呂の申し込みの手続きをする。

幸いな事に空きがあったので直ぐに貸切風呂には入れる事になった。


そして受付でお金と引き換えにドアの鍵を受け取ろうとすると声が掛かる。


「銀、久しぶりじゃないか。

それにしても久しぶりに現れたと思ったら初物食いかい。

あんなに可愛い坊やの初めてを銀がね、羨ましい事だね」


馴染みに受付嬢が私に耳元で囁いてくる。


「バカ、そんなんじゃないよ」


受付嬢の言葉を軽くかわすと主様の手を取って貸切風呂へと向かう。

でも、心臓はドキドキだ。

あいつに言われて主様の女になりたがっている自分に気付かされたからだ。


そう、いつかは主様の女になりたいと思ってはいたのだ。

でもそれはずっと先のことだと思っていた。

つい先日までは。


でも、今は、主様が私を求めてくれるならこんなに嬉しいことはない


そして主様と2人で貸切風呂には入る。

まずは脱衣所。


そこで私はゆっくりと服を脱ぐ。

そんな私の仕草を主様はチラチラと横目で眺めている。


不思議な感覚だ。

いつも私のおっぱいにむしゃぶりついていた主様が恥ずかしげに私を盗み見ている。

だから私は主様で遊びたくなる。


「主様、お洋服を脱がしますね」


素っ裸になった私は主様に近づくと、主様の服を脱がせるために主様の前で膝立ちになる。

そうすると主様と私の目線が同じ高さになる。


すると、さっきまで私のおっぱいを見つめていた目が私の目を見つめてくる。

でも直ぐに主様の目は泳ぎ出す。

私の目から逃れる様に動く主様の目は次に私のおっぱいに釘付けになる。

そして、顔を赤くして目線が下を向く。

そして、私の股間が目に入り慌ててまた目を上げる

可愛らしい主様。


「主様、服を脱がさせて頂きます」


私は主様の挙動に気付かないフリをして服を脱がす。

私も主様も生まれたままの姿になる。


「ぎっ、銀」


主様の渇いた声。


そして、主様の下半身に変化が現れている。


えへへへ、うれしい。

私の体を見て主様の分身がおっきしている。


12歳のソコはまだ初々しくて、使われたないことがハッキリと分かる。


私は主様のソコが元気になっている事に気づかないフリをして冷静に主様に声を掛ける。


「主様、お風呂にいきましょう」


「あっ、ああ」


惚けた様な主様の声。

私はそんな主様の手を取って脱衣所から風呂場へと向かう。


すると、そこには大きな風呂と洗い場、そしてラタンで出来たベッドがある。

そう、ベッドがある。

ここはそういう場所だから。


主様と私、ここで一緒にお風呂に入るのだ。

そして、その先は主様次第。


願わくば、私に主様の初めてを頂きたいな。

そう思いながら主様とまずは湯船に浸かるのだった。

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