第29話 やっぱりサミーのおっぱいは騒ぎになりました

サミーは僕を抱きかかえて授乳させながらこっそりと家に戻ったんだ。


この素晴らしい作戦は当然の事ながら成功するわけは無かった。

サミーのおっぱいが大きくなったのがバレないはずはなかったのだ。

その日の夕食の席でもいきなり巨大化したサミーのおっぱいは話題の中心となったしね。


「ねえ、オイゲン。サミーさんのおっぱいは幾らなんでもやり過ぎじゃないかしら」


母さまがあきれた声でおっしゃいます。


「そうだな、エルザのおっぱいより大きいとか反則技だな」


父さま、それは悪手ですよ。


「もう、貴方ったら、サミーさんの今のおっぱいからすれば私の胸だって貧乳ですよ。

それに、なんですか、貴方は。急にサミーさんの胸をチラ見する回数が増えてますよ」


いやあ、父さまと母さまのこういう会話は正直聞きたくないんです。


「えへへへ、いやあ、照れるね」


そして、なにも考えずに喜んでいるサミー。

僕としてはサミーを困らせる為に大きなおっぱいにしたのに少しも困っていないのはムカつきます。


「ねえ、サミーさん。

大きなおっぱいってそんなに良いもんでもないですわよ。

おっぱいが重すぎて肩が凝りますし、それに着れる服も限られます。

なにより、殿方の厭らしい視線に耐え続ける忍耐も必用になりますしね。

ねえ〜、貴方もそう思いますよね」


父さま、そこでサミーのおっぱいから目を放すから余計に目立つんだと思いますよ。


「奥様、おっしゃることは判りますけど、そんな苦労をするエルフは私が初めてだと思うんですよ。

ですから、里に戻ればこのおっぱいに女達からの嫉妬の視線が注がれるに違いないんです。

そう考えるだけで、優越感が凄いんです。

それに、昨日まではカルロス様の視線は奥様のおっぱいにばかり向かっていたんですよ。

それが、今では...」


サミーはそう言って胸を張ります。

それだけでぷるんと揺れる胸。

サミーは誇らしそうですね。


「ねえ、カルロス様。

そんなにチラチラ見なくても、今晩のカルロス様の寝所は私の所ですわ。

後で、心行くまでこのおっぱいは堪能できますから」


「はあ、本当にオイゲンは余計なことをして」


ああ、母様が怒っています。

どうしましょう.


「ねえ、母さま。もし母さまがお望みでしたら、母さまのおっぱいをサミー以上にして差し上げることも出来ますけど」


「あら、オイゲンは優しいのね。

でも、母さまはおっぱいに振り回されるような体になる気は無いですよ。

それに、養殖物と違って私のおっぱいは天然ものですからね、価値が違うのです。

でも、オイゲン。心配してくれてありがとうね」


流石は母さまです。

少しも揺らぎませんね。


父さまはそんな母さまの毅然とした態度に気圧されていますね。


「コホン、そう言えばオイゲン。

オイゲンのポーションのお陰で兵農の分離が順調に進んでいて兵の練度も順調に上がっているんだ」


父さまはおっぱいの話から逃げ出したいようですね。

ここは付き合ってあげますか。


「それは嬉しいニュースですね。

やはり、兵に専任出来るのは大きいですか」


「そうだな。農業の間に鍛錬するだけでは、なかなか兵の練度は上がらないな。

やはり、兵としての訓練に専任できるのは大きいな」


そこで父さまの顔が厳しい物に変わります。


「オイゲン、帝国の状況だがな。

内紛は収まったようだ。

そして新しい皇帝が即位した。

新皇帝は即位式で王国への復讐を誓ったらしいぞ」


復讐ですか。帝国が王国に攻め寄せて負けた癖に随分な話ですね。


「まだ、帝国での兵力の再編は始まったばかりだが、王国の情報部の分析では1年から2年で帝国は王国に侵攻するに足るだけの兵力の整備が完了するらしい。

だから、私達もそれに向けて備える必要があるんだ」


そうですか。後1年から2年後にはまた帝国と戦争になるんですか。

嫌になりますね。


「ああ、それとな。

新しい皇帝の名前だが、ラファエロⅠ世というらしいぞ」


ラファエロ、ラファエロですか?

どこかで聞いた気がしますね。


「まあ、帝国の皇帝なんぞ、私達にはどうでも良い話だが。

それでな、私の腹積もりとしては今の40名の兵を70名程度までは増やすつもりだ。

70名の内50名を連れて私は出兵するから20名がこの領地の守備兵となる。

その兵たちの隊長をオイゲンには務めてもらうつもりだ。

だから、そのつもりでこれからは兵と接するようにな」


僕が守備部隊の隊長ですか。

僕に務まるでしょうか?


「まあ、部隊の運用とかこの領地で教えられる人材はいないからな。

だが、オイゲンの手元にはそれを教えられる優秀な元騎士がいるはずだ。

今の内から教えを乞うておくことだな」


父さまには僕の胸の内は丸見えみたいですね。

でも、彼女達ですか!


せっかく、騎士とか兵士とかと関係の無い平和な生活を得ている彼女達を、僕はまた戦いの世界に引き戻さなければならないんでしょうか?

それは、嫌な役目ですよね。


「はい、父さま、お役目承りました。

その時に向けて精進したいと思います」


僕は当たり障りの無い返事をしておきました。


そして、今日はタイムリーなことに薔薇騎士の館にいるマリーの部屋に泊まる予定です。

館に入ると、みんなの視線が少しおかしいです。


「ねえ、ミル、なんかみんなの視線がおかしいんだけど」


館に入るといつも僕の側にかしづくミルに聞いてみます。

あっ、ミルの視線もなんか不安定ですね。


「神子様、私達は皆、神子様の一番の使徒であることに喜びを感じて、その地位に相応しくあるように努めてきたつもりです。

でも、神子様の一番の使徒はあのサミーとか言うエルフなのでしょうか?

私達は神子様の一番の使徒には成れないのでしょうか」


ええっ、何でみんながサミーと張り合うのでしょうか?

これってやっぱり胸、胸ですかね?


「ミル、サミーの事を気にする必要はありませんよ。

私の一番の使徒は幾多の苦難に会いながらもそれを乗り越えた貴方たちですよ。

それにミル、使徒は左の胸だけを大きくするのでしょう。

サミーは両胸を大きくしました。

ですから私の使徒ではありませんよ」


はっ、ミルの表情からはそんな声が聞こえた気がしました。


「申し訳ありません神子様。ミル達は愚かにも神子様のご意思を理解できず愚かなことを申し上げました。

どうぞ、信仰の足りない私たちをお見限りになることなくこれからもご指導ください」


『いや、信仰とか重すぎです』っ言えれば楽なんですけどね。


「ミル、私は貴方たちの忠義心を少しも疑ったことはありませんよ.

いつも私に尽くしてくれて感謝してますよ」


「ああ、神子様」


ミルが感極まって僕の手に頬ずりをします。


「ああ、ありがとうございます。

神子様、ミルの信仰を受け入れていただきこれ以上の幸せはありません。

願わくば、この左胸にサミー以上の豊潤をお与えください」


やっぱりそこは競うんですかね?

それに忠義心と言ってるのに信仰心にすり替わっちゃうんですね。


「ミル、ミルの胸はまだ大きくなるから、慌てずに待つことです。

それとミル、私はミルに聞きたいことがあるんです。

私は隊長として軍を動かすための教育を受けたいのです。

薔薇騎士の中で私に兵法を教えられる人材はいますか」


「兵法ですか?

それであればシンディーが一番詳しいと思いますが。

神子様が軍を率いるのですか?」


「ああ、まだ先のことだがね

そうか。ねえミル、僕が兵法を学ぶのは未来に起こるであろう帝国と王国の戦いの為なんだ。

つまり、僕は帝国の軍と戦い打ち負かすために兵法を学ぶ必要があるんだ。

シンディーは帝国に害を成すことになる僕に兵法を教えてくれるだろうか?」


自分たちの祖国である帝国と戦う僕に兵法を教える。

それは彼女達にとって苦渋の選択になるのではないでしょうか。


「そんな心配をされる必要はありません。

神子様のご意志が私たちの意志です。

シンディーも同じ考えだと思います。

それに、私達に戦う力があれば率先して神子様の敵を滅ぼすでしょう。

それが帝国であろうともです」


そう言ってミルは寂し気に微笑みます。

そして失った左腕の跡を寂しく見つめています。


僕はそんなミル達を戦いの場には戻したくないんです。

でも、彼女たちの失った手足を再生してあげたいとも思うんです。


彼女達を五体満足な身体に戻して平和に生きてもらう。

そんな事がぼくはしたいんです

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