第25話氷の女王と襲撃と襲撃と襲撃

「なんで聡達がここに?」

「それよりさ、その袋なに?」


雫との待ち合わせ場所で聡達とバッティングしてしまった黒兎は急いで言い訳を考える。


なぜこの袋のことを聞かれるのか?まさか見られたのか?下着を選んでいるとこ…でもそれなら…


黒兎は閃く。


「あぁ、これ?もう言い訳できないみたいだから言うよ。例の彼女のだ」


黒兎は聡達が勘違いしているのを逆手にとってあたかも例の彼女の下着を選んでいたという風にした。我ながらいい考えである。


「ああ、そうか例の彼女の下着か、随分仲良いみたいだね」

「まあ、ね」

「黒兎女子とかあんま興味なさそうにしてたから意外だったな」

「そうか?俺だって女の子には興味あるさ」

「黒兎くんって彼女いたんだね」


優心が聞いてくる。


「まあ、な。だからこそ今、彼女のパジャマとか見てたの」

「パジャマも?へぇー仲良いんだね」

「そんなこともないよ」

「聡だって咲良の下着選んでいいって言われたら選ぶだろ?」

「俺?まあ、選ぶな」


「もう、聡ったら」と咲良は羞恥心に身を捻りながら聡の肩をパンパンと叩く。聡も「痛い痛い」と笑いながら返しているので本当に仲がいいなとつくづく思う。


「それよりその彼女さんは?」


来てしまったこの質問。どう返す?本当には彼女なんて居ないし、あまりここで聡達を長居させると雫が帰ってくるし黒兎の頭はかってないほど回転していた。


「彼女は家にいるよ、お使いでこのに来たんだよ」

「そうなんだ」

「彼女って誰?」

「言いたくない。俺の彼女そう言うの苦手なんだ、今回は誤解をとくために彼女が居ることを暴露したのであってそこまで言う義理はない」

「ってことは、同じ学校の可能性が高いと」

「おい、こら、詮索するな」

「まあ、ということだ。今日のことは内密にな」

「どこか腑に落ちないんだよな」

「何がだよ」

「いやさ、黒兎にしては潔すぎるんだよな、彼女のこと認めるの」

「お前は俺をなんだと思ってるんだ」


陽からの鋭い質問に、黒兎は精一杯の憎まれ口を返す。


「ほら、もういいから、とりあえずお前らあっちいけ」

「なんでだよ」

「いいから」


これ以上は危ない。雫が帰って来る。黒兎は半ば無理やり聡達を追い返そうとする。


「ほら帰れって」

「だからなんでだよ」

「いいから」

「なんで」

「帰れ!」

「なんで!」


「月影くん、待った?買ってきたのだけれど…」


そこにあってはならない声がする。


「…」

「……」


黒兎と雫はお互いに黙ってしまう。

そんな静寂を陽が裂く。


「どうして冬矢さんがここに?」

「それは…」


流石の雫も言葉を上手く返せない。


「その袋は何かな?もしかして男性用の下着とか入ってたりする?」

「…なっ…」


雫はどうしてバレたと言わんばかりに声を出す。雫にしては珍しい感情のある声だ。

しかしその感情は焦りと、戸惑いであった。


「そういう事ね」

「もしかして、黒兎と待ち合わせしてた?」

「……………」


やってしまった。バレた。雫と黒兎の関係が普通でないことが。


仕方ないと黒兎は諦め今までのことを話そうとする。しかし聡に止められそして聡は言う。


「そうか、黒兎の彼女ってのは冬矢さんあんただったんだな」


聡が自信満々にあたかも推理小説で犯人を見つけて断言する探偵のように。


「…え?それだけは死んでもないわ」


雫はキッパリ否定した。黒兎のメンタルは0になった。そんなハッキリ言わなくても、そんな全力で否定しなくても、そんなガチ引きしなくても…。


「それだけは死んでもないわ、まさかあなたは、月影くんと私、ほんとに見合うと思ってるの?」


さらに雫は黒兎のメンタルを削っていく。

しかし驚いたのはその後の聡の言葉だった。


「思うよ。だって冬矢さん、黒兎といる時楽しそうだもん」

「なっ」


珍しく雫が言葉を返せずにいた。その雫の表情、声色、動き全てを見て黒兎は理解する。

雫は少なからず自分のことを他の人より大切にしてくれていたこと、心を許してくれていたことを。聡から見ても雫が楽しそうだと分かるほどに、最近の雫は黒兎とといる時と他の人といる時、雰囲気が違っていたのだ。

それに気づき、黒兎はとても嬉しく、幸せに思ってしまう。


だからこそ今までの全てを聡達に伝えることを決意する。


雫に今までのことを話していいかと耳打ちすると雫は頷いた。


それから今までのことを聡達に話た。同居していること、1年間だけだということ、勿論彼女でもなんでもないということ。


「なるほどねそういう事か」

「だからこの件は秘密で願いたい」

「勿論そうする」


聡達にこのことがバレてしまったが、少し肩の荷がおりたと思う黒兎であった。

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