第22話林間学校メンバーと男子の推理2


聡と別れた陽は考えていた。


勿論黒兎と雫についてである。


考えることは結局みんなと変わらないのだけどひとつ違うとするのなら…

唯一、黒兎の過去を知っている。


その過去を踏まえて、雫と黒兎はなってはいけない組み合わせなのだ。


少し考えるとしよう。黒兎の過去について。ほんの少しだけ、客観的に見て。


中学生の頃に黒兎は、クラスから孤立していた。

そのきっかけとなることについて少し思い出してみようと思う。


あれは中学2年生の頃。

月影黒兎は至って普通の生徒であった。

友達もいたし、顔もそこそこに整っていたし、運動もできたので、モテると言われればそうだったのかもしれない。


しかし事は起こった。

校外学習の時である。学校を離れ、班のメンバーで京都に行った時の話である。


いつも通り黒兎は仲の良いクラスのメンバーと班を組んだ。

女子3人と男子3人の6人班だ。黒兎達は電車に乗るために切符を買い電車に乗る。


班のリーダーは黒兎がしていた。京都駅に着いた時のこと、黒兎はテンションの上がった班のメンバーに振り回され電車を降りたあと改札を通った時に気づく。

一人居ない。


班のリーダーは電車を降りる時などにはメンバーの点呼をとる事になっているのだが黒兎はそれをしなかった。

一人の女子生徒はどこに行ってしまったのか、

その女子生徒は物静かで基本無のような女子生徒だった。


居ないことに気づいた黒兎はすぐに班のメンバーに伝えた。しかし班のメンバーはそんなのすぐに見つかるから、観光しながら探せばいいとその女子生徒をおいて行ってしまった。


黒兎はこれ以上はぐれるものを防ぐために班のメンバーについて行く。その先で先生に報告してすぐに探そうと思っていた。


黒兎は不安に駆られながらも当時の状況を思い出す。電車で別れてしまった女子生徒は、確か電車で寝ていた。このままじゃどこまであの女子生徒が行ってしうか分からない。


黒兎はさっきよりも不安になる。


黒兎はすぐにポイントにいる先生に事情を説明した。


そこで知ることになる。裏切りを。


「先生××さんが居なくなったんです」

「ええ!どこで?」

「多分電車です」

「点呼は取らなかったの?××さんの居場所はだいたいどのくらいかわかる?」

「分かりません。××さん電車で寝ていたのでどこにいるのか分からないんです。」

「どうして駅の先生に言わなかったの!?あそこに先生いたでしょ?」

「でも…みんなが…」


「黒兎くんが観光しながら探せばいいと言いました」


は?黒兎は何を言われたのか分からなかった。


「黒兎くんが点呼しないで先に行っちゃうから」

「は?そんなのしてねぇよ」

「黒兎くんが…」

「黒兎くんが…」

「黒兎が………………」


それから出てくるのは黒兎に対しての責任転嫁だった。


その後その女子生徒は無事見つかるのだが…。


見つかった後でその女子生徒は泣いた。普段あまり感情のないような女子生徒が泣いたのだ。そして泣かしたのは黒兎ということになっている。

噂は広がる。


「あいつがあの××をおいて行って泣かしたらしいぜ」なんて陰口を叩かれ、クラスから孤立、

その後陽が声をかけてくれるのだが…。


「アイツ女子泣かせといて陽と一緒にいるからって調子のってるよな」なんて陽と今度は陽と仲良くしたいやつの嫉妬を耳にする羽目になる。


そして黒兎は嫌いになる。


周りに流され判断しなかった自分を。

周りからの嫉妬によるいやがらせを。

そしてそれ以来感情のない子が苦手になってしまったのだ。



そんなトラウマ持ちの黒兎が雫と仲良くするのだろうか。

陽は考えていた。

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