第32話 鬼の武士
さて、パーティー会場に戻るか、そういえば俺はどっちから来たっけ?
薄暗いし、地図が無いから迷うわし、というかこの廊下怖っ!怖すぎるだろっ!!灯りも少ないし、薄気味悪いし、こんな所、幽霊でも出るんじゃないか?
俺はそんな事を考えながら、多分こっちから来たと思う方向を歩いて、パーティー会場に急いで向かう。
廊下を少し歩くと、段々と迷ってきた。
元の道と同じ所を歩いているはずなのに、何故かたどり着かない。
まさか結界とかで閉じ込められたとか?
有り得る、異世界だもんな。
クソッ、まさか罠だったのか??
そんな事を考えながら、廊下をフラフラしていると奥から人影が現れ、コツコツとハイヒールの様な足音がこっちへと近づいてくる。
俺はすぐに立ち止まり、音のする方向を目を細めて見る。
まさか幽霊か!?でも足音がしているから生きている奴だよな………。
俺は心配して、ゆっくりとその足音がする方へと向かう。
すると一人の瑠璃色の様な綺麗な髪色をした女性がこっちに歩いて来た。
俺は人が来た事に胸を撫で下ろし、安心する。
何故なら人が俺の前から来たという事は、その方向を向かうと他の人が居るという事だ。
俺は笑顔でその女性に挨拶しようとする。
「すみません、そこの人!」
俺がそう言うと、彼女はビクッと驚き、こちらに顔を向ける。
彼女の額には二本の角が小さいが真っ直ぐ上に生えていた。
俺は見たことの無い種族に会えたからか物凄く喜んだ。
見た目は先程の髪色でショートボブのヘアースタイルをしていた。
服装はこの世界で見てきた中で一番露出度の高い服装でそして高いヒールを履き、背はヒールの高さを抜くと、ヴァイスと同じ約150センチ位の身長の高さなのに胸が大きい。
まあ、とても、とまでは言わないが、レナやヴァイス以上の大きさなのは確かだ。
………そんな事を考えている俺って、変態なのか?
いやでも、俺は思春期の高校生だぞ、こんな事を考えるのが普通だよな、うん。
「あ、あのどうしたんですか?私を呼んだり、ジロジロ見たりして」
その女の子は近くまで来て、俺の顔を見る。
彼女の顔は人形のように綺麗に整っていて、紺碧の海のように深く、濃い紺色の眼が少し暗めの明かりで光輝いていた。
間近まで彼女の顔が近づいて来たからか、俺は恥ずかしくなって顔が熱くなる。
俺は彼女から目を反らし、質問をする。
「ああ、ジロジロ見てしまって申し訳ない、それよりパーティー会場はどこかなと俺は思って………」
「えっと、すみません、私も迷ってしまって場所が分からなくて、というより貴方は私が話す
「お、大八州語?」
「
多分、前にヘルマンさんに調べてもらった時に『多言語聴取能力』とか有ったはずだけどこの能力はこういった感じで使えるのか。
日本人だからと言いたいが、エルフの様に酷い反応が返ってくるかもしれないしな。
「いや、前に少しだけ勉強してたから喋れるんですよ、ハハハ!」
「へぇ―!それは珍しいですね!!」
まあ、そんな事はどうでも良い、まずは彼女の服装が強い風が吹けば、彼女の肌が殆ど見えるんじゃないかと思うくらい布地が少ないが、少しだけ、少しだけだが日本の古風な服装に似ている。
これは一応、話を聞くべきではないか?
だって日本人とかと接点があるかもしれないし………。
俺は少し辺りを見渡しながら歩いていると、古めかしい立派な赤色のクッションで金の装飾が施された椅子を二脚見つける。
俺はそれを彼女の近くに持ってくる。
「す、少しだけここに座って話をしないか?君の事に関して凄く興味があるんだよ!」
「わ、私ですか!?別に良いですけど………」
その青髪の女の子はゆっくりと近くに来て、椅子に座る。
「俺の自己紹介から、俺の名前は
「あ、
「そういえば、扶桑ってどこにあるんだ?」
俺がそう言うと、アオイは目を丸くして驚いていた。
次の瞬間、アオイは表情を和ませながら、クスクスと笑う。
「大八州語を話せるのに扶桑を知らないなんて……ふふ、可笑しい。我が国、大扶桑皇国はユーラ大陸の東にあるラシア大陸、その大陸の東の果てにある八百万の神々が住まう島国です」
「じゃあ、アオイは神様なのか?」
俺がそうアオイに言うと、全力で首を横に振って否定する。
「わ、私が神様だなんて畏れ多い、私は鬼族と呼ばれる
「こんなに若いのに軍人とは偉いですね!」
すると俺がその言葉を言った途端、突然アオイは怒り始める。
「し、失礼ですね!私はもう大人ですよ。私の国では男性は15歳、女性は14歳で成人になります。だからもう大人です!!」
「そ、そうだったのか、ホントにごめん!!」
俺はアオイに対して侮辱したと申し訳無く思い、すぐにお辞儀をして謝る。
それよりも、彼女の国の成人年齢が若いな!
でも、考えてみると前の世界の昔の人々って若くから結婚してる人とか居るし、この世界もそうなのかな……。
そんな事を考えていると、 アオイは俺にすぐに顔を上げるように諭す。
「だ、大丈夫ですから、顔を上げて下さい!私も貴方の国の事情を知らないで怒った訳ですし………」
「いや、自分もそういうことを察しなかったから申し訳ない」
「………そういえば、コムラサキ様は人間なんですか?」
まあ、どちらかと言われたら人間だけど、この世界の人間から見たら異世界人だし。
俺は深く考え、自分は人間だという事にした。
「ああ、まあ人間だよ、それがどうしたの?」
「つまり、エトルリア王国の人ですか。人間なのに私達鬼族を怖がったり、蔑んだりしないなんて珍しいですね」
灯りが暗くて良く見えないが、アオイは頬を赤らめていた。
「俺はそんな事はしないよ、絶対に………って、そういえばパーティー会場の場所を探していたんだ!ゆっくり話している場合じゃなかったね。ごめんアオイさん」
「いえいえ、私は貴方の話が聞けて良かったと思っていますし」
俺はスクッとすぐに立ち上がる。
「アオイさんは会場の場所が分からないんだよな」
「はい」
「一緒に探すのは、どうだと思いますか?」
「………ええ、良いですよ?」
俺は右手を差し伸べ、アオイは俺の手を取り、ゆっくりと立ち上がる。
「それにしても本当に宮殿というより敵を簡単に攻略させないような城だな、地図が無かったら迷子になるよ、まったく」
「フフ、そうですね」
アオイは微笑みながら口を隠していた。
彼女の口を見ると、牙がチラリと見えていた。
周りを見渡すと道が二方向に分かれていた。
まあ、俺が歩いてきた方向か、アオイが歩いてきた方向のどちらかだけどね。
「それではどっちから行きますか?コムラサキ様」
「うーんそうだな、じゃあアオイさんが歩いてきた左から行ってみるか。」
「はい、行きましょう!」
俺とアオイは様々な事を話しながら、ゆっくりと宮殿の廊下を少しずつ進んでいく。
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