第24話 最初の協力

 素敵な白銀の綺麗なドレスを着たレナが扉を開ける。

 レナは俺を見た途端にキョトンと目が点になり、俺もレナが部屋に居るとは思っておらず、固まるしかなかった。

 というより、さすがは一国の皇太妃だ。

 白銀のドレスが良く似合っている。

 まるで一人の女神が目の前に降臨した様な美しさであった。

 俺の口から無自覚に言葉が出る。


 「す、凄く綺麗だ………」

 「………………………………!?」


 それを聞いたレナは手の甲で口を押さえ、頬を赤らめる。


 「………あ、ありがとう、貴方に綺麗と言われるなんて少しだけ、少しだけ嬉しいわ」


 レナはモジモジと身体をくねらせる。

 俺はレナを可愛いと感じでしまった。

 すると、ヴァイスが真横で殺気を放つ。


 「なんでこいつがこの部屋に居るのですか!」


 ヴァイスは睨み、俺の腕に抱きつく。

 おっと、偶然ヴァイスの胸が当たってしまったではないか。

 というかホントに慣れてしまったな、この状況。


 「カズト、今から彼女から離れないと私は貴方を魔法で一片も残さず消す事が出来るけど………」


 レナは無表情になり、冷たい目で俺を見る。

 俺はその発言にヴァイスの胸に挟まった自分の腕を引っこ抜く。

 ヴァイスは可愛らしくプクッと頬を膨らませ、ムーッと怒りながら不満を表す。


 「ヘルマンにこの部屋を使えと言われたから来たんだよ」


 俺がレナにそう言うと、レナは鼻先でフンと笑い、説明する。


 「私が着替える予定の部屋がトラブルで使えなくなっていて、仕方なく空き部屋のこの部屋で着替えていたのよ」

 「そうだったのか、それなら仕方がない」


 大丈夫だ、このまま優しく話していたら何事も起きないはずだ。

 そう、何も起きないはず………。


 「ふーん、ところで話は変わるけど、この部屋でその子と何をする気だったのかな、カズトくん?」


 あ、あああああぁぁぁぁっ!?

 しまった!俺の口め、余計なことを………。


 「いや、俺は特に関係ない―――」

 「カズト様が私にドレスを着せてくれる手伝いをしてくれるのです!」


 ……………オイイイイイイイッッ!?

 ヴァイス、君って奴はよぉ!?

 するとレナはジト目で俺を蔑み言う。


 「やっぱり、貴方には幼女趣味があったのね………」

 「違う違う、ヘルマンが言ったんだよ!俺がヴァイスの服を着替えさせろと」

 「じゃあ、何故カズトは拒否しなかったのよ!フレイヤはどうしたのよ!?」


 レナは勢い良く責め立てる。

 俺はオドオドと慌てる事しか出来なかった。


 「フレイヤはヘルマンに捕まって仕事だし、ヘルマンに俺が着替えさせるのを断ろうとしたら部屋から追い出されたんだよ」

 「ふん、どうだか!」


 レナは俺の話に聞く耳を持たず、知らんぷりをする。

 ああああ、どうしようどうしようどうしよう!!

 本当に何でこんなに仲が悪いんだよ………。

 ………そうだ!こうすれば良いじゃないか。


 「レナは着替えを終わったんだよな?」

 「………ええ、そうね。それがどうしたの?」

 「ヴァイスの着替えをレナの専属のメイドにやらせれば―――」

 「生憎(あいにく)、今彼女は席を外しているわ。」


 おおマジかよ、どうしようか………。

 というか何で今席外してるんだよ、専属メイドよ!?

 ………仕方がない、最終手段だ。

 一番使いたくない、いや絶対に使いたくない手段だったが仕方無い。


 「じゃあ、レナがヴァイスの着替えを手伝ってあげれば良いじゃないかな?」


 部屋は一瞬の静謐が訪れる。

 だが、俺が静寂にホッとしたのはつかの間だった。


 「「ハアアアッッ!!??」」


 突然の彼女らの大声に俺は自分の耳をすぐに塞ぐ。

 叫び終わったのか声が聞こえなくなったと思い、両耳から両手をゆっくりと離すと、二人は俺に対して文句を言い始める。


 「冗談じゃないわ!何で私が、皇女の私がこの子にドレスを着せる手伝いをしないといけないのよ!!」

 「そうですよ!私もこの人に着替えを手伝って貰うのは反対なのです!!出来ればカズト様に着せて貰いたいのです!」

 「あら、それは許さないわよ!」

 「何でですか!姫様は関係ないのです!!」


 文句を言われ反対をされるのは分かっていた。

 何故ならレナはああ見えて皇帝の娘だ、嫌がるのは当然だろう。

 ヴァイスが嫌う理由は分からないが、でも、着替えをやってくれないと話が進まないんだよ!

 俺は必死に頼み込む。


 「俺は男なの、お・と・こ!女性の着替えは出来る限り女性がするべきだろう?お願い!レナも着替えるのを手伝って、ヴァイスも従ってくれ」


 レナとヴァイスはお互い見つめ合って、厳しい顔をする。

 だがようやく諦めたのか、レナ、ヴァイス共に溜め息を吐く。


 「恩人のカズトを困らせるのは皇女として失礼過ぎるわ、仕方無いから嫌だけど私がこの子にドレスを着せるわよ」

 「私も物凄く嫌ですが、私も同じ意見なのです」


 そうレナが言って俺の腕に持っていたドレスを取る。

 そして振り返りヴァイスと部屋に入ろうとすると、彼女のドレスのスカートが長いせいか、ヒールのつま先に引っ掛かり倒れる。

 「キャッ!」と叫びながら地面の方へ倒れる。

 レナはヴァイスの手を取っていた為にヴァイスは一緒に倒れる。

 俺は助けようと二人を捕まえようとするが、勢いで二人の頭にぶつかり合って、俺を含めた三人は意識を失う。

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