ねじれ
目で見えるんだから耳でも見えるはずだ、と頑強に信じた男がいた。男は毎日耳に光を当ててそれを感じようとした。男に知識はなかった。ただ信仰心に近い頑なさだけがあった。男は何日も何ヶ月も何年も、光を聞こうと試み続けた。
そしてとうとうある日のこと、男は光が聞こえるようになった。耳で感じる光——それはまさしくたとえようもないほどの美しさだった。耳は目のように眩むこともなく、光の美しさをことごとく感じ尽くすことができた。それはどんな音色よりも美しく、どんな景色よりも壮大だった。
男は耳で感じる光がいかに素晴らしく美しいかを説いて回った。もちろん光を聞くことのできる人間など他にはおらず、その美しさは誰にも理解されなかった。だが男はむしろそれを得意がった。これは俺だけの美なのだ。俺にしかわからない美なのだ。俺のためだけの美なのだ……。
ところでそれからというもの、男は尻からしか飯が食えなくなった。
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