第21話 確認、紅梨の気持ち
「おーい紅梨ー、そこの……」
「はい。これでしょ」
そう言って私が白太に渡したのは部室に常備されているうちわ。
冬場は部室の隅の方で眠っており、被っていた埃を軽く手で払ってから白太に手渡す。
「……あ、ありがと」
呆気にとられている白太の姿を見て、周りに気づかれないようふんぞりかえる。
私は白太の行動を見ていると、次になにをして欲しいのか、何がしたいのかがある程度分かる。
それは決して未来を予知しているとか、超能力があるとかそういうのではない。
ただなんとなく、白太の行動を見ていると分かってしまうのだ。
逆に玄人や緑彩先輩が何を考えているかとか次に何をしたいかとかはどれだけ考えても分からない。もちろん、青木さんや紫倉さんの行動も全く読むことは出来ない。
何故白太の行動や考えだけは読めてしまうのだろうか。
ふとそんなことを考えた。
頭をフル回転させて長々と考えているうちに、この前玄人に言われた言葉を思い出す。
「自分の気持ちには正直になった方がいいと思うぞ」
という言葉。
その言葉を聞いた時、私は玄人が何を考が得ているのか全く分からなかった。
しかし、たった今何故白太の行動だけが読めるのかと言う疑問に対して一つの結論を導き出すことが出来た。
私は白太を自然と目で追っているのである。
白太と玄人とは中学校からの付き合いで、もうこの付き合いも5年目に突入している。
よくよく考えて見れば、私は白太のことをやたらと目で追っている記憶がある。
しかし、玄人を知らず知らずのうちに目で追ってしまっていたと言う記憶は全く無い。
それは別に、玄人のことが嫌いだからと言うわけではない。玄人のことが嫌いであれば、ハッキリとした性格の私はすでに玄人との縁を切っているだろうし。
だから、玄人にも私が一緒にいたいと思うだけの魅力はある。それでも、玄人を目で追ってしまうことは無い。
そう考えたとき、自然と一つの答えにたどり着く。
私は白太のことが好き、という答えだ。
別に私は白太を異性として見たことはないし、付き合いたいと思ったことも一度もない。
ただ、そばにいたい、そばにいて欲しいとは思う。
もしかすると私はこの気持ちを、白太が緑彩先輩のことが好きで、緑彩先輩が白太のことを好きと言う状況を理解して押し殺してしまっていたのではないだろうか。
そう考えれば、玄人の発言も理解できる。
私が白太を好き……?
いや、そんなはずは……。
この気持ちを放ったらかしにしていいわけがない。こうなったら、無理矢理にでも私の気持ちを確かめよう。
丁度来週、緑彩先輩に気を使わずに済むイベントもあることだし。
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