サイドストーリー その1
「お久しぶりです、大西さん」
「ああ、久しぶりね。でも、もうその名前で呼ばないでくれる? 本名も川村百合子に戻したんだから。その節は……私の『元』夫が、かなりご迷惑をおかけしたわね」
「いいえ。私こそ……まさか、結婚しているなんて思いもしていなかったものですから……あの当時は大西さん……いえ、川村さんにも随分ご心労をおかけしたと思ってます」
「いいのよ。もう。お互い、忘れましょ? あんな最低男の事なんか、ね。それにしても……世間は狭いわね。まさか
「全くですね。貴女が彼女のピアノの先生だったなんて……」
「中田さん、結婚は……しないの?」
「ええ。まだ……そんな気にはなれなくて……」
「もったいない。貴女はすぐにでも結婚するべきだと思うけど」
「川村さんこそ……再婚、されないんですか?」
「私はもう、おばさんだからね。そんなチャンスなんか、全くないわよ」
「そんなことないです。とても、お綺麗でいらっしゃいますよ」
「ありがと。でも、その私から男を奪った女である貴女からそう言われるのは、嫌味以外の何物でもないわ」
「あ……すみません……でも、私、奪うつもりは……」
「わかってるわよ。それじゃ、元気でね」
「はい。それでは、失礼します」
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