第2324話 70枚目:諸々検証

 構造がめちゃくちゃな、閉鎖された迷路。という環境でも、探索そのものは大差ない。召喚者プレイヤーはベテランになればなるほど検証に慣れているのもあって、色々なクランが順番にタイミングをずらしながら突入し続けた甲斐あって、ある程度の法則が分かって来た。

 まずあの迷路は、イベントエリアの四隅にある特殊なイベントステージと同じく、穢れを具現化させて倒す事で攻略を進める形となる。その具現化させる手順というのは、部屋に使われているのと同じ数の角がある通路から入った上で、レア度が一定以上のモンスターの素材を部屋の中央に投げる、というものだ。

 そこでモンスターを倒すと、どこかから何かが動く音が響いてくる。1度や2度では大した変化は見られないが、倒したモンスターの数が5体目になったところで、他のイベントステージから突入した召喚者プレイヤーと合流する事が出来たようだ。


「ただし、召喚者プレイヤーとの合流が発生する時点では確実に、通路にもモンスターが出現。迷路の構造物を人型にしたようなそれには一切の攻撃が通じなかった上に触れられれば状態異常の過剰積み込みで一発アウト、更に戦闘が行われている部屋へと向かっていた、と」

「あれっすね。その謎のやつから逃げ回りつつ部屋でモンスターを出して倒して、しっかり弱体化させてからその謎のやつを倒す感じっすね」

「そんな感じですね。移動速度はそんなに早く無い上、歩く速度は一定、特徴的な足音も遠くから聞こえる、となれば、逃げ回る前提でしょう」


 一応しっかり強度のある壁系魔法を設置すれば、足を止めて、壁を殴る。この2動作分の足止めは出来るようだが……まぁ、時間稼ぎだな。モンスターを倒して穢れを祓い、迷路を空間的に統合させていくにつれて強化されていくパターンでもあるだろうし。

 マップの方は一応固定であり、空間的にずれていても構造自体は一緒のようなので、司令部が全体マップを作成中だ。元々が広い上にどこへ出るか分からないから難航しているようだが、しっかり大神の加護を強化していればオートマップが機能するからな。

 なので昼を越えて午後に突入した現在、迷路を走り回ってマップを埋める組、部屋で戦闘を続けて穢れを祓う組、謎のやつをひたすら足止めする組に分かれて行動しているらしい。まぁそれが妥当なところか。


「迷路内部の状態は、全員が引き上げるとリセットされるようですからね」

「え。てことはもしかして、私達が突入する時にはもう謎のやつが出現してるって事っすか?」

「下手すれば強化されている状態でしょうね。だから壁系魔法のお札をたくさん作っているんですし」

「あ、先輩の魔力ステだったらお札でも足止めになるんすね」


 流石にここまで作りまくってるとレベルがあがるし、元の威力の4割まで出るようになったからな。極めても半分の威力しか出ないとは言われているが、私ぐらい元が高ければ1割上がっただけでも十分な威力上昇になる。

 今の所、壁系魔法が2撃以上耐えたという話は聞いていない。たぶん固定値で絶対壊れるようになっているんだろう、と推測されているが、攻略が進んで謎のやつに弱体化が入れば話は別の筈だ。

 1撃しか耐えられなくても、壊された瞬間に再設置すればもっと時間が稼げるしな。お札はいくらあっても足りない。高威力のお札は元々人気商品で、出せば出すだけ売れるという状態ではあるけども。


「ノックバックが効けばいいんですけど、それも通らないみたいですしね」

「足元に油を流して転んだりはしねーんすか?」

「歩くのに半歩分余計に時間がかかっていたようですから、たぶん足元の床と足を接着させる能力があるんじゃないか、って言われてますよ」

「もう試した後だったんすね。司令部すげー」


 ちなみに今は非常に丈夫なタイルを足元に滑り込ませて、逆の足が持ち上げられた瞬間に引っ張ったらどうなるかを検証しようとしているようだ。うん。確かに動きが遅いってあたり、転んだら起き上がるのに時間がかかりそうだけども。

 ……なんかちょっと楽しんでる気がするな。ほら、たまにいるじゃん。逃げるしか出来ない系のホラーゲームで、その逃げなきゃいけない奴をひたすらおちょくる事に全力を出す人。そういう人が今の司令部にいる気がするんだが。

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