第2263話 70枚目:交渉相手
時々話しかけては無視されてたそがれつつ、周囲を観察してみたんだが、どうやらこの大型……うん。でかいよな。私を掴んで持ち上げた奴、たぶん翼を畳んでも一軒家ぐらいあったんじゃないだろうか……の猛禽類は、この明るい茶色の樹皮をした木の上で暮らしているようだ。
鳥の巣の材料もこっちの木の枝葉で出来ているようだが、鳥の巣は鳥の巣。言ってしまえば、文明的なものは全く見当たらない。正直、言葉ってものを理解しているかどうかから怪しい。
それでも私をここで放り込んだ奴を始め今囲んで叩いてきている猛禽類達は、その爪にしっかりと装備を着けていた。急だったことと、暗い場所から突然引っ張り出されたことで十分に確認できていないが、あのでかいのはそれ以外の場所にも何か着けていた気がする。
「(少なくとも、子供らしい今周りにいるやつとは色味が違った。大人と子供の違いって可能性もあるけど)」
となると、あの装備を作って着けさせた別の種族がいる筈だが……まさかそれがあの村人って事は無いだろう。が、今囲んで叩いて来てる(効いてない)大型猛禽達の装備を見る限りちゃんと手入れをされているものだ。
そしてその種族として一番可能性が高いのは、今私に張り付いている推定双子と同じ種族、猛禽系の獣人っぽい種族だが、そっちがどこで暮らしているかはさっぱり分からない。というか、何でこの子達がいたぶられる……大型猛禽の子供達のおもちゃになっていたかも分からないし。
足りないんだよな、情報が。だから身動きを取りたいというか、周辺の探索に行きたい訳だが、私に隠密行動は出来ない。かといって、エルルに現状が知られると、たぶんこの大型猛禽の種族は終わってしまう。
「話をですねー。聞いてほしいんですよー。このままだと困った事になるんですよー。暴力では無くて言葉による対話をお願いしたいんですがー」
主にそっちが。というのは伏せて声をかけるが、届いてる気がしないんだよなぁ……少なくとも、大型猛禽の子供だろう、今私を囲んで叩いている個体達については。
もう1つの可能性としては、今私に張り付いている推定双子の猛禽獣人の子供だが、こっちもなぁ……言葉が分かったところで何をどれだけ理解しているかは分からないし、私が「味方」と判断した事で種族特性が発動して傷が治って、安心したのかうとうと眠りかけてる。
これはもしかしたら、貴重な午後一杯の時間をこのまま耐えて、夜になるのを待つしかないんだろうか。猛禽なら昼に行動して夜は眠る。だったら夜は安全に動ける筈なんだが。
「せめて返事をしてくれませんかねー。言葉ってものがそもそも無いなら仕方ないですけどー。反応らしい反応の1つも返して頂けないと、本当に困った事になるんですがー?」
「……――」
「ん?」
今なんか、キュルッ、というか、こう、弱々しい雛鳥の鳴き声みたいなものが聞こえたような。
まぁそんな音の心当たりなんて1つ、いや2つしかない訳で。私を両側から挟むような形でひっついていた推定双子の猛禽獣人の子供の内、男の子の方がぱっちり目を開けていた。
髪の色も目の色も、ついでに背中の翼も、周りで懲りずに囲んで叩いている大型猛禽と同じ色味である。今いる木と同じ、明るい茶色系統の。まぁ目は普通の人と同じ形だったけど。
「おや? もしかしてあなたは言葉が通じます?」
「――、――?」
「……言葉の概念は通じているようですが、意味が全く伝わっていませんね」
どうやらこちらには言葉が通じるというか、言葉の概念が通じるようだ。ただ、対応する言語スキルを持っていないので、その意味までは分からなかったが。
まぁいい。言葉の概念があって、対話をしてくれるつもりがあるなら、後はお互いの言葉を勉強すればいいだけだからな。その内他の言語と同じように、言語スキルが生えてくるだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます