第1331話 42枚目:装備の性能

「……姫さん。これ、竜皇様に献上するレベルのものなんじゃ」

「私専用装備なんですよね」


 「響鳴する皇竜の旗槍」を見せると、サーニャはしばらく精神が宇宙に旅立ってしまったようだし、エルルも顔を引きつらせてしまった。ははは。いやー、普通にオーバースペックなんじゃないかなこれ。

 もちろん「祝護のヴェールカチューシャ」も十分ヤバいんだけどな……。下手しなくてもあれ1つで一般販売しているフルプレートな重鎧一式と防御力が拮抗するとか、状態異常とか直接攻撃以外からの防御力だと圧勝とか、十分ヤバいんだけどな……!

 旗槍はともかく、カチューシャの方は見た目の可憐さを裏切りまくりだ。……うん。私が言うなって? むしろだからこそ私にぴったり? ……まぁ、自覚はあるけども。


「あとね、姫さん」

「何でしょう」

「それ槍って言うか、槍の形した鈍器だと思って振った方がいいよ。旗があるから突き攻撃に向いてない。というか、旗として振り回しつつついでに先端を当てる、ぐらいの方がいいと思う」

「ふむ。……バトンに近い運用をした方がいいって事でしょうか。むしろ応援団の旗振りに近い?」

「……いっそ通信部隊のやり方でいいんじゃないか。お嬢の場合、自分で戦うっていうより旗を振って指示を出すのが本来の形に近いだろ」

「まぁ前線に出て指示出しをしてるっていうのもあれだけど、先陣を切られるよりはいいか。知り合いに連絡しておくよ」

「その人倒れませんよね?」


 とりあえず、これが向こう当分のメイン武器になりそうだな。周囲に派生する種族特性という名のバフは……もう諦めてもらおう。私がいる=その周囲一帯にはバフがかかる、という事に、周りに慣れてもらう方向で。

 ちなみにその後検証したところ、【響鳴】による効果の伝播、というのは、効果と範囲は半分になる代わり、伝播する範囲は私自身の効果範囲の倍はあるようだった。十分に効果範囲の拡大が見込める、という事が分かった。

 そして伝播した先でも更に効果が伝播する為、結晶糸を使った装備が普及すれば加速度的にその範囲は広がっていくだろう。なおかつ伝播先の装備に【響鳴】がついていた場合、効果の減衰が無くなるようだ。


「あの。これ本当にメイン武器にして大丈夫ですか?」

「特に次に向かう場所は難易度が高いですし、今度もまた全力で来る可能性は高いでしょう。攻略そのものも半ば程で中断されていますし、必要かと」


 カバーさんに確認したが、この調子だったからなー……。

 ……後、な。【響鳴】がついている装備同士では、効果の減衰が無くなるって検証結果が出た。そして私は、【響鳴】がついている装備を2つ持っている。そしてその2つを、まず間違いなく同時に装備して動くことになるだろう。

 つまりどういう事かって言うとだな。……私を中心とした、本来の効果範囲の半分となる範囲は、効果が、倍になる。


「……どこからどう見ても、先陣を切って飛び込んでいくタンク向きの特性で装備なんですよねぇ……」


 いやまぁタンクが適正ポジションなのは分かり切ってる事なんだけどもね? エルルが「またこのお嬢は」みたいな視線を向けてきてるけど、これはどう考えても後方で控えている為のスキルじゃないだろう。

 むしろ、逆だ。誰よりも何よりも前に出て、味方を引っ張るようにして飛び込んでいくのが最適解だろう。いやー、皇女っていう立場と装備及び種族特性が酷い食い違いを起こしてるな。


「姫さんは後ろにいてくれた方が安心できるんだけどー?」

「じゃあサーニャがこの特性を持つ装備を一般竜族が身に着けてたら、どこに配置します?」

「切り込み隊かな!」

「そういう事です」

「…………それはそうだけど!」


 サーニャがうっかりノータイムで答えてしまう程度にはそういう事だ。

 さー、武器としての旗の扱い訓練頑張るぞー。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る