第1288話 42枚目:戦闘開始

 メールが届いた直後ぐらいに先の見えない落下は終わり、レイド戦の舞台である闘技場を見下ろせる位置に着地した。エルルが。こう、円形コロッセオの端というか、一番上の段の席のあたりに。

 周囲を見回しても特に観客はいない。というか、闘技場の真ん中から飛んできた攻撃が普通に座席へ当たっているので、この座席部分も含めて戦闘領域なんだろう。

 元々いた場所が違うからか、私達が来た時点ではそれなりに戦闘が進んでいたようだ。召喚者プレイヤーは大体全体に散らばっているし、交代して後ろへ下がっていく動きも見える。


「出遅れたのはともかく、これはまた面倒な事になってますね……」

「丸く段差になってるっすけど、間に色々あるからステージっすかね?」

「周りの群れはスルーなのか」

「まぁそりゃ取り巻きぐらいはいるでしょうし」

「ギミックましましなのが分かってるんすから、殴って倒せるモンスターは必要だと思うっすよ」


 それでいいのか……という顔をされてしまったが、実際そうだしな。こうやって見ている範囲でも、通常モンスターは湧いてないと詰む類だろう。

 規模があれなだけで、形としては闘技場と言って大体の人が思い浮かべるあの感じだ。その中央に円形で3段のステージもしくは全方向雛段のようなものがあって、頂点を含む全ての段差に所せましと何かが並んでいる。

 上の段の端を壁として外周に余裕を持たせて並ぶそれらは、無数のゲームあるいはその媒体のようだ。カジノに限らず、それこそゲームセンターに並んでいるような大型筐体も含まれている。


「周りでモンスターの群れと戦っている召喚者プレイヤーと比較して、かなり大きいですね、あの中央の」

「しかしゲームにしてもやたらめったら種類があるっすね」

「は? あれ全部ゲーム遊びの道具なのか?」

「召喚元の世界の物もかなり含みますけど、まぁそうですね。とはいえ普通はぬいぐるみやお菓子といったバリエーションがあるところも、交換用のコイン一択のようですが」


 で、頂点の真ん中には大きな看板があって、それがゆっくり回転している。書いてあるのは数字だが、なんかだんだん増えてるな? カウントダウンみたいに一定って感じじゃないけど。

 こういう時の情報まとめ、と掲示板を確認してみると、あの大きな看板に書いてある数字は「ジャックポットボーナス」の金額なんだそうだ。段差に並んでいるゲームをプレイしたり、周りのモンスターを倒したりすると増えるらしい。

 なお周りのモンスターを倒すことで挑戦する為の通常コインが手に入るらしい。これは街に残っている召喚者プレイヤー経由で神官さんに聞いてもらったところ、モンスターを倒すという労力に対して支払われているので、使って問題ないとの事だった。


「逆に交換用のコインはここまでで溜め込んだあちらのリソースなので、取り返してほしい、と」


 つまりあの並んでいるゲームで出てくる交換用のコインが体力って事だろうか。とりあえず今わかってる範囲だと。まだ数段階はこう、変化形のギミックがありそうだけど。

 だってまだ体力バーが出て無いからね。ギミックボスだから通らなかった可能性もあるが、あれが出てからが本番だろうし。主に真っ当なレイド戦の。


「そういえば、あの相手の体力が分かる棒は出てないんだな」

「あれで完全な形とは思えませんし、流石に多少は直接殴れる形になってからでないと出せないんじゃないでしょうか」

「召喚者にとって「直接攻撃する」っていうのはよほど大事な事なのか?」

「ある意味間違ってねぇっすね」


 こら、エルル。「やっぱり戦闘狂なんじゃ……」って顔を引きつらせない。

 ……戦闘を楽しむ為にフリアドに来たゲームをしているっていうのは否定できないけども!

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