第1252話 42枚目:ようやくの発見

 1月2回目の日曜日まで特に進捗は無く、日曜日夜の時間加速には私もだいぶ頑張ってみたが、どうやらそれでも次の高難易度な空間異常は見つからなかったらしい。

 一応、空間異常の数自体は減っているし、行ける場所も増えているんだそうだが、それでもまだまだ先が見えないとの事。しかもモンスターハウス状態になっている空間異常の先に神が緊急避難した方の空間異常があったりするので、捧げものによる手探りの難易度は変わっていないらしい。

 しかし本当に、どれだけいたんだ……。竜族が全ての竜都の防衛を諦めるだけはあるってか?


「にしたって、いくら何でも多すぎません?」


 ちなみに私は相変わらず生産作業三昧で、エルル達はどうも発生率が上がっているらしい野良ダンジョンを攻略して回ってくれている。もしかしなくても空間異常を解消した反動で空間の歪みが発生してる分だよな、これ。

 司令部は北側の大陸と南側の大陸で進捗を合わせてくれている筈なので、空間異常がひたすらに多い、というのはどちらの大陸でも変わらないのだろう。

 もちろん召喚者プレイヤーも野良ダンジョンの攻略に向かっているので、そういう意味で手を取られてもいる。いるが、召喚者プレイヤーの人数も相当多くなってる筈だぞ? 母数が大きくなれば、最前線に出てこれる人数の絶対値も増える筈なんだし。


「当たり前ですが、全員が残らず足並みを揃えるのは不可能ですし、野良ダンジョンもありますし、あのゲテモノピエロへの対策に動いている召喚者プレイヤーもいるでしょうし、そもそも平日なんですから動ける人数は減っているでしょうけど……」


 だから、ログインするたびに確認する限り、毎日かなりの数の空間異常が攻略されている筈だ。時間加速の時には私も頑張ってかなりの数を攻略したし。

 次の日曜日が終われば残り時間は半月を切る。……流石にチェーンクエスト風になっているイベントのメインがここで終わりとは思えないんだけどな。




 事態が動いたというか、発見があったのは、次の土曜日だった。

 その日も私は午前中からせっせと生産作業をしていたんだが、どうやら中に突入した召喚者プレイヤーが全滅した空間異常があったらしいんだ。まぁ全滅自体はここまでもちょいちょいあったし、応援に行く事もそれなりにあった。ほら、モンスターハウス状態だから、最初の圧が、ね。

 私が動けばエルルがついてくるし、都合の合う可愛い好き召喚者プレイヤーも集まってくる。だからその戦力でさくっと攻略すればいいだけの話だ。そしてまた生産作業に戻ると。


「ん?」

「姫さん、どうしたの?」

「いえ、今何か若干違和感のあるものが見えたような……」

「エルルリージェを呼んでくるかい?」

「お願いします」


 範囲防御を張って安全地帯を確保し、その中からぽいぽいとバフを投げるのが私の仕事だ。後ろに控えているので怒られない。……怒られない事が私の行動基準になってるな。エルルが進化してから特に。皇女として行動するならそれでいいんだろうけど。

 それはそれとして、サーニャが前線に向かうと入れ替わりでエルルが下がってきた。普通に元気だなー。さっきまで何十体もまとめてモンスターを切り捨ててたのに。


「お嬢、どうした?」

「何か妙なものが見えた気がするんですが、よく見えなかったんですよね」

「どっちだ?」

「あっちです」


 今はステータスの関係でエルルの方が視力が良い。それに戦う人だから、動体視力とか違和感を見つけるとか、そういう意味でもエルルの方が先に気が付くんだよね。

 あっち、とモンスターの群れの向こうを指さしながら、もう一度その辺りを見る。なんか違和感があったんだけどな。モンスターの詰め合わせみたいな群れの中だと、こう、妙というか浮いてるというか。

 とりあえず全部モンスターに見えるけど、やっぱりなんか混ざってる気がするんだよな。どこに何が混ざってるのかはモンスターの群れが動いてるからよく分からないんだけど。……と思っていたら、エルルが軽く前に出た。そのまま、さくさくとモンスターの群れを切り分けるようにして奥に進む。


「たぶんこれじゃないか……?」

「……これですね」


 で。同じようにさっさと戻ってきた時、エルルは左手に白いものを掴んでいた。ぶらぶらと揺れているそれは、どうやらこれでも抵抗しているらしい。エルルが頭っぽい部分の天辺を掴んでいるので逃げられてないけど。

 うん。……ハロウィンのミニイベントで出てきた「何か」だ、これ。なんでこんなとこに。

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