第1176話 41枚目:核心判明
精霊さんへ捧げものをする儀式が終わり、水同士が取っ組み合うという現象が発生してから、数時間後。
「……あー、そういう事でしたか……」
やっぱり取っ組み合いをしていた水の片方は精霊さん達によるものであり、もう片方は敵性反応のある水だった。敵性反応のある水を追い出そうとする動き、という推測も正しかったらしく、私が【調律領域】の展開範囲の形を変えて水面の一部を領域スキルの外に出すと、そこから勢いよく飛び出してきたからな。
出てきたら当然のように周囲へ襲い掛かる訳だが、そこはフライリーさん、カバーさん、ソフィーナさんが上手く連携して事なきを得た。事前に神官の人達には【調律領域】の範囲内へ避難してもらっていたし。
地底湖の大きさが大きさであり、いくら精霊さん達が敵性反応のある水を上へと押し出してくれていても、流石に浄化(とはちょっと違うのだが便宜上)には時間がかかる。それがどうにか終わって、改めて地底湖の精霊さん達に話を聞いてみると、だな。
「何か、核心に迫る情報がありましたか?」
「とりあえず原因というか、経緯は判明しましたね……」
ここの神様(=“岩洞にして底道”)は、世界規模スタンピートの発生に応じ、町の住民に加えて、地下水脈に戻り損ねた精霊達も守った、というのはまぁいい。モンスターの規模と強い力場的な力を感知して、空間を閉じる、という選択をしたのも分かる。
ただ精霊達曰く、空間を閉じ、普通の住民達(スナネコ獣人の人達)の方は時間も止めていたのに、何かが閉じた空間に干渉してきたらしい。神様はそれに対して精霊達を抱え込むことで守ろうとしたようだが、そうなれば当然、その干渉を一身に受ける事になってしまう。
精霊達も心配したし慌てたのだが、流石に神様相手ではあまり抵抗できず。抱え込まれた(=守られた)姿勢のまま様子を見るしかなかった、との事だが……。
「その干渉の影響で神様が徐々に混乱。何故か自分達に頼らず水を生み出すようになって、ますます自分達をしっかり抱え込み始めた挙句、信仰してくれている人達への敵意を抱き始めた、と」
どうしてそうなった。という感じだな。実際にそうなってるから困ってるんだが。
「おそらく、その干渉が始まった時の姿勢……精霊の皆さんを守る、という部分が、「モンスターの『王』」の影響である種拡大解釈されたのでしょう。水が敵対反応を示し、かつ浄化できる、という事にも筋が通ります」
「ついでに言えば、その水が精霊さん達からすれば「知らない水」である事にも、ですね」
「そうはならないんじゃないかと思うっすけど、現実そうなってるっすもんねー……」
「精神攻撃って本当に面倒よね。分かっていたけれど」
「メインストーリーも後半に突入しただけはありますね……」
ソフィーネさんが若干メタい事を言っているが、まぁ、そうだな。
そしてこの情報が分かった事により、
でまぁここまで分かれば後の問題は、その“岩洞にして底道”の神が、今、どこにいるか、なんだが。
「まぁ、空間を閉ざしているんですから、通常手段では会えない場所に居ますよね」
「捧げものをして力を取り戻して頂く、というのが正道でしょう。恐らく、その途中でモンスターが発生したり、モンスター未満ともいえる敵性反応のある水が沸いてきたりすると思われますが」
「対処しながら捧げろって事でしょう」
時間をかけていいんだったら、神官さん達に捧げものの方をお願いして、
他の場所とは連絡が取れるし、少な目に捧げものしてパターンを把握して、応援の到着を待つしかないか。
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