第1092話 38枚目:拠点到着

 島に到着したのは、まず海中戦力が最初だ。遠浅の外側と、島に接している水深の深い部分のモンスターを一掃してまず島の安全をざっくりと確保。そこに船団が到着して、水深の深い部分に船を泊め、ゴツゴツとした岩がせりあがってきたという形そのままの島の拠点化を開始。

 そこに空中戦力が合流し、到着した人から周囲のモンスターとの戦闘や拠点化を手伝い始めたらしい。私が旗を掲げたまま到着した時には、すでに中心となる建物がほぼ出来上がっていた。


「ガワから作っているのでしょうから内装はあれとしても、速いですね」

『まぁ俺らも手伝ってるからな。それに、手早く作れるようにある程度形を作ってたんだろ?』

「そう聞いています」


 ブロック建築かな。実際は調節とかがあるんだろうけど、そこは専門職の人が頑張ってくれたのだろう。

 途中で「第一候補」からウィスパーが飛んできて、旗を掲げたまま建物の屋上に来てほしいと言われた。なのでエルルに伝えて、中央となる建物の屋上に降りてもらう。

 掲げたまま、と言っても、旗を降ろさなければいいので、着地ぐらいなら何とかなる。なのでそのまますとんとエルルの背中から飛び降りた。


「で、旗を掲げたままって事は、どこかにそのまま立てたりするんですか」

『察しが良いであるな。その通りである』


 そこで待っていた「第一候補」とそんな会話をして、案内されたのは屋上のすぐ下に当たる部屋だった。明らかに広いその中央には既に儀式場らしい場所が構築されていて、中央には「第一候補」のブースト装備である大きな数珠と、ネレイちゃんのブースト装備であるショールが飾られている。

 どうやらブースト装備を集めて力場を維持するらしい、と察して、同じく儀式場の中にある旗立てに「皇竜の御旗」をセットした。力の行使者が私から儀式場に移ったらしく、眩暈がするような頭痛がすっと消える。


「うぅん、やっぱりここまで増幅すると結構きついものですね」

『で、あろうな。単に増幅するだけでも負荷はかかるが、「第三候補」の領域スキルは対象が選択できるであろう? その分本人が処理するべき情報の量も増えるであるからな』

「あぁなるほど」


 それであの頭痛だったのか。ステータスにおける知力は高いだろうが、中身の私はそこまで情報処理能力が高い訳じゃないからな。そんな出来の良い頭があったら大学受験で苦労してないし。

 後ろからエルルの「またこの降って湧いた系お嬢は無理してたな……?」って視線が刺さるが、そこはスルー。負荷がかかるのは分かってたし、その上でやらないって選択肢はなかったじゃん。しょうがない。


「で、ここからはどうする感じですか?」

「はい。しばらくはこの場所にとどまってモンスターの迎撃、及びこの場所をしっかりとした拠点に作り替え、転移ポイントを設置して応援を呼ぶ予定です。想定よりも距離が稼げた事は確かですから、しばらくは腰を据えて大陸が目視できない事などの原因を探す事になります」

「あ、やっぱり見えないのはおかしいんですね」

『うむ。世界地図を見る限り、誰1人として、その影すら見えないというのはおかしいであるな』


 やっぱり何かおかしかったようだ。そんな気はしたけど。相当に激しい戦闘をしながらといったって、結構な距離を進んだ筈だからな。

 それに、竜族の人達と合流した前提で進んでいる筈だ。だったらその移動速度が跳ね上がるのは分かっている事だし、分かっている事なら何らかの対策をしているだろう。少なくとも運営は。何らかの方法で察知しているなら「モンスターの『王』」も。

 まぁうん。次の大陸に辿り着くことが目標のイベントなんだ。大陸なんて大きなものを見逃すのは難しいし、移動速度が上がっているなら、その間にギミックを嚙ませるのは妥当だな。

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