第1069話 37枚目:最終突入

 元々の予定では、連続ログイン制限である3時間の終わりが、11時半に来る予定だった。それが午後の緊急ログインからの探索と攻撃で、合計ログイン時間は残り2時間半ぐらいだ。

 そのぐらいで済んだ、というべきだろう。リアル半時間は内部時間で2時間だから、結構大きいけど。まぁそれぐらいはあの大きな穴の攻略につぎ込む必要があったのも確かだ。

 ログインしてイベントダンジョンに向かう。掲示板で見る限り、地上での戦いもかなり激しいものとなっているようだ。転移で直接イベントダンジョンの内部に移動しているから、自分の目で見た訳ではないが。


「ここで決めておきたいですね。これからの事を考えても」

「そうですね。準備や動員人数の都合もありますし、決着をつけるならここでしょう」

「……こっちはともかく、あっちは地形が変わらなきゃいいが」


 ぼそっとエルルが呟いた可能性にはそっと目をそらすしかないが、まぁ、うん。既に今までの戦いでだいぶ大変な事になってるし、荒野になってないだけマシって状態なんだから、まぁ、何とかなるんじゃないかな。たぶん。

 どうやら「第四候補」は扉の向こうに広がる空間の真ん中あたり、巨大樹型モンスターを引き留めて倒す組に混ざっているようだった。混ざっているというか、戦闘指揮を任されていた。まぁ適正ポジションか。


「いや~指揮官としちゃこんな楽な戦闘もない。粒ぞろいだし連携出来るしとっさの判断も大正解だし、雑な指示でもよく聞いてくれるし!」


 と、大変ご機嫌な「第四候補」だが、ちょっと眺めただけでもその指揮は大変手堅く分かりやすい。たぶんこれ、指揮に従っている方も楽な戦闘に入るだろう。相手は巨大なモンスターの集団なのだが、全く危なげがないというか余裕が見える。

 まぁ後ろがこれなら心置きなく攻略が出来るってもんだ。味方は頼もしいに越したことはないからね。という事で、そのままほとんど素通りで最奥へと移動する。

 ログインのタイミングを合わせてくれたベテラン召喚者プレイヤーの集団は、転移地点となっている中継拠点から一緒に行動している。そのテンションは、大変と高い。


「ようやくの大一番ですからね。それなりに、あの突入から時間もかかりましたし」


 何だかんだ言いつつ結構時間かかったからな。私も正直しんどさが勝ちかけてたし。

 あともうちょっとだ。……たぶん、ここからが一番キツいんだろうけど。


「改めて、気合を入れていきましょう。ようやく、この光景の元凶を殴れるんですから。――――行きますよっ!!」


 声と共に、移動中は抑えめにしていた領域スキルの強度を一気に引き上げる。同時に手綱で、ルイシャンに突入の合図を出した。

 よっしゃぁああああ!! と、背後からも鬨の声が聞こえると同時、正面の道っぽいもの以外の場所に、高火力のアビリティが雨のように叩き込まれる。もちろんルイシャンも特大の雷を叩き込み、網のように張り巡らされていた有機物っぽい道のようなものの大半が消し飛んだ。

 曲がりくねりながら大穴の奥へと続く道っぽいものが1本になる。そこへ、エルルを先頭にして、召喚者プレイヤー達が雪崩れ込んでいった。


「(まぁ問題は、あの核っぽいものに接触した後、どうやって脱出するかなんだけど)」


 流石にここまで来て、飛行手段の1つも無いってベテラン召喚者プレイヤーは居ないだろう。緊急脱出手段の1つぐらいは持っている筈だ。ここまで前回と同じって事は、脱出が必要だっていうのは分かってるだろうし。

 ……流石に進化したエルルでも全員は乗せられないだろうから、ニーアさんに頼んでまっすぐ吹っ飛ばしてもらうのが手っ取り早くて確実かな。私と違って、着地までちゃんと面倒を見てくれるだろうし。

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