第818話 24枚目:内部状況

 で、実際突入してみた所。


「…………ランダムスタートとは良い趣味です」


 扉が開くのかと思ったら足元に魔法陣が出現したから、その時点で警戒するべきだったな。閃光と共に一瞬の浮遊感があったからすぐに目を開けて周りを見たら、誰もいないと来た。

 エルル、サーニャ、ルミは当然として、カバーさんともちゃんとパーティを組んでいた。それがバラバラになっている上に、ちゃっかり抱えさせてもらった兎の動物神もいなくなっているのだから、相当に手が込んでいる。

 周囲を見た感じ、外から見た時と同じ、表面にうっすら透明な層が残っているだけの白く曇った氷で出来ているようだ。その大きさは通常のレンガと同じくらいだろう。


「しかしこれは、微妙に狭いですね。私は問題ありませんけど」


 で、今いる場所は3m四方ぐらいの小部屋みたいな場所なんだが、そこから出られそうな通路は、上部分がアーチ状になっている。一番高い所で2mぐらいだろう。幅は1.5mほどか。横並びになるとお互いが邪魔になるな。

 小部屋から行ける通路は2つある。右と正面だ。一応メニューを開いてみたが、掲示板が沈黙している。ウィスパーをカバーさんに送ってみたが、反応が無い。と言う事は、大神の加護特典の通信手段が制限されてるって事だろう。

 幸い、と言うべきか、オートマップは生きていた。もっとも、その地図が出来る範囲も、普段に比べればずっと狭い。削ってくるだろうなとは思っていたが、きっちりしている。……さて、どうするかな。


「ん?」


 とりあえず進んでみるか、それともその場で待つか、あるいは壁を壊してみるかの3択で迷っていると、遠くから何か、遠吠えの様な音が聞こえた。モンスターか? と思ったが、驚いたことに、その遠吠えが聞こえた時点で、オートマップがある程度埋まっていったのだ。

 どうやら遠吠えが聞こえた方向の地図らしいが、今私が居るのと似たような大きさの小部屋と、そこからしばらく進んだ通路が追加されている。もちろん、現在位置からどう進めばそこに行きつけるかは分からないんだけど。

 ……しばらく考えて、そう言えば動物神の中に狼の姿があったな? と思い出した。どうやら「第一候補」の保険はばっちり効いているようだ。


「であれば、とりあえずこの先に合流ですね。動物神しかいないのか、それとも他に誰かいるのかは分かりませんが、今のが聞こえた範囲の召喚者プレイヤーは合流に動くでしょうし」


 なお私から見て左手側から遠吠え(?)は聞こえたので、正面の道を選ぶ。このダンジョンの特性かそれともまだ序の口だからか、戦闘音も聞こえないんだよな。だから余計にどうしようか悩んでたんだけど。


「……流石に、どこに誰が居るか分からない状態で大規模破壊は、巻き込みが怖いですからね」


 しかし、私のパーティに狼はいなかった。正しくは一緒に行くことを了承してもらった内には。……と言う事はこのダンジョン。どこから入ろうが関係なくランダムスタートで、大きな1つのマップを探索しつつ内部で合流する系か?

 実際他の召喚者プレイヤーと合流してみなければ分からないが、それなら防壁が何重にもなっている見た目は、そのままマップの数、つまり階層を示すのだろう。

 そうだとすると、階層は8、いや、最後の砦もとい牢獄本体もいれると9か。結構な長丁場になりそうだな。


「……いえ。牢獄には地下牢がつきもの。そしてダンジョン発見時に、クレーターの底まで氷が伸びていました。と言う事は、地下を含めて10階層のダンジョン、になりますね」


 その方が数字としてもキリがいい。毎回分断されてからの探索となると、それは面倒くさいが。エルルとサーニャの心労って意味でも、このダンジョンの攻略難易度って意味でも、大変面倒くさいが。


「まぁとりあえず、動物神の協力は必要不可欠ですね。召喚者プレイヤーと住民の仲間だけでは、正直どうにもなりません」


 ……もしかしたら、脱出の能力を持つ動物神(どの動物かは分からない)と合流しなければ、攻略を中断しての脱出も出来ない感じか。死ぬか攻略するかとは、うん。高難易度ダンジョンだなぁ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る