第726話 22枚目:探索進行

 流石決戦兵器。梯子の途中で1分、水門(推定)の柱の上で1分全力で照らすだけで、柱の端まで動けるようになるとは。まぁ私の魔力もいい加減減ってるんだけど。

 途中で合流したカバーさんが、他のクランに行った元『本の虫』組の人達と一緒に喜んで調査を始めたよね。まぁこれだけ一気に探索可能範囲が広がればそうもなるか。


「……とりあえず時間かかりそうですし、光の柱を設置しに行きましょうか」

「まだ魔法を使う気かお嬢」

「地道な削りダメージは必要ですよ。それでなくても体力が莫大だとシステムメール大神の啓示で示されているんですから」


 と言う訳で、現在位置の確認に開けた縦穴に光の柱を設置だ。もちろん周りを一応確認したが、南の端に通路は開けているから、洞窟の中まで入り込んできている人はいなかったけど。

 宿光石の採掘も、水門(推定)の周りで十分だしな。何せほぼ純粋な宿光石の塊がにょきにょき生えてるから。調査するのに、どっちみちある程度は掘削しないといけないんだし。

 絶対数を減らすには“影の獣”こと人工空間獣、あるいは「伸び拡がる模造の空間」を捕獲して核である種を回収しないといけない。それでもこれだけごっそりと減るのなら、多少は効果があったと思っていいんじゃないだろうか。


「暗い場所で増える性質があると言うのなら、言うなれば伸びた枝を切り落として大きさ自体を小さくするのは非常に有効ですね。ところでちぃ姫さん、また照らして頂きたい場所があるのですが、宜しいでしょうか」

「今まではそれに必要な出力が足りなかったというのもありますし。宿光石がとても重要な鍵でしたね。想定以上に。もちろんいいですよ」


 ちなみに「第四候補」に貰った杖を使ったが、「月燐石のネックレス・祝」の鎖を持ち手の所に巻いて、その上から握って使ったら壊さずに済んだ。本当にこの神器の有難みが凄い。ボックス様と“ナヴィ”さんには感謝の念しかない。

 で、カバーさんに案内されて向かった先は……水門(推定)の柱の、私が掘り抜いた場所から宿光石を掘り抜いて作られたらしい階段だった。手すりも付いていて安全対策もばっちりだ。いつの間にこんなものを。

 ……まぁ、『魔物商店街』の人達がフルメンバーで揃ってるとは聞いてるから、だいたい当たりはつくけどさ。みのみのさん率いる『牛肉工務店』だろ。この素早くかつ丁寧な施工。お世話になってます。


「どうやらこの水門、相当に大きなものだったようでして。現在位置が上から5分の1と言ったところだったようです。なので地上に管理小屋の類があるのではと探索しようと思ったのですが、やはり進めば進むほどに“影の獣”が迫ってきまして」

「なので進んだ先で改めて一掃、を繰り返せば、地上に辿り着けるかも、という事ですね。分かりました。水門を開けば「密閉された空間」ではなくなる可能性もありますし、頑張りましょう」


 まぁ実際開くなら外海側の水門の方が良いだろうけど。内海側を開いたら、そのまま内海が器にカウントされそうだから。……流石に大きすぎるから大丈夫かな? とも思うけど、可能性は潰しておきたいからね。

 ちなみに外海側の水門はまだ影も形も見えないし、内海側の水門の水路側は、私がサーチライトで照らしてもなお“影の獣”がみっしりで進めないんだそうだ。多分なんかフラグが足りないんだろう。

 それもあって今のところ行ける場所である、内海側の水門の、内海に面した側を探索しようって事だな。水路側に通じる通路的なものがあるかも知れないし。


「種から出てくるものは、生き物を除けば最大でも両手で持てる物まででしたからね。家具や建物はそのまま残っている可能性が高いという事です」

「……そうか。重要なものは、その出てこなかった物の中に残ってるかも知れないのか」

「そういう事ですね。……まぁ、その何かもまた“影の獣”の器となっている可能性も高いんですが」

「どう考えてもちゃんと閉じる事が出来る入れ物なんだから、そりゃそうだろ」


 と言う訳で探索探索。どうやらみのみのさん本人は地上で働いているとの事で姿が見えなかったが、クランハウスに建物を立てて貰った時に大体全員顔合わせはしている。若干新人も増えているみたいだが、まぁおおよそ知り合いだ。

 せり出している宿光石の塊がじんわりと光を失っていく場所まで行くと、遠ざかった筈の“影の獣”が再び至近距離にいる。今も宿光石のランタンはつけているから直接巻き付かれはしないが、それでもこれ以上は進めないだろう。


「いやー、ちょっと無理な注文かとも思いましたが、「第四候補」に頼むだけ頼んでおいて良かった。いきなり大活躍です」


 他の使い道? …………まぁ、その内なんか良いタイミングが来たら使えるだろう。超強力なだけであって、遠くまで照らせる照明ではあるんだから。

 どうやらもう少し先まで進んだところで一時撤退したらしく、階段自体はもう少し先まで続いていた。そして、安全に近寄れる場所に広場と灯りが設置してある。これは安全だ。


「足元まで宿光石の塊ですからね。拡散度を最大にすれば、“影の獣”側に向けていてもしっかり光が蓄積されるでしょう」

「むしろそっち以外に向けると周りが大変な事になるな」

「向けませんよ。さて、それでは行きますよー」


 最初受け取った時はこんなに出力を上げてどうするんだと思ったけど、必要だったな。戻ったら改めてお礼するか。

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