第667話 22枚目:説明終了
エルルが出してしまった爆弾情報については、「第五候補」がフォローを入れてくれたので、一応事なきを得た、と言っていいだろう。情報機密的な意味で。後で何かお礼しないとな。
さてその、災害を防ぐ事は不可能、と言う事が確定した後も、魔族の男性はいくつか質問を重ねていた。御使族や不死族、あとは渡鯨族と言った重要や種族の「現在」についてとか、神々についてとか、後は空間の歪みにも食いついてたな。
もちろん分かる範囲では答えるが、分からないものは分からないと回答を返すしかない。というかむしろこっちが知りたい。ちなみに、魔族と言う存在と会ったのもあの男性が最初だというのも伝えた所。
「えぇえぇえー……寝落ちてる間に一体何が起こったんだ……?」
と、言う声が聞こえたので、たぶん頭を抱えちゃったんじゃないかな。
途中で外というか地上の様子を見に行ったりもしていたようだが、まぁそれでも、状況の説明という情報の共有はうまくいった訳だ。まともに話が出来る人で良かったよ。最初のあれ以外。
まだ夜ではあるので、時間はある。となると聞きたいのは、手のひらサイズの真っ黒いヤシの実という形をとる「人工空間獣の種」について、その仕組みとか、なんでそこから出て来たのか、他の魔族の人達は、という事になるのだが。
「い、いやー、その…………多分うちの研究所でやってた研究のどれかだと思うけど研究室が違うから分からないごめんなさい!!」
布で出来ているとは言え、床と壁はそれなりに強度がある。そこに両手を叩きつけるような音が聞こえたから、勢いよく土下座でもしたんだろうか。土下座はフリアドでも最大級のごめんなさいの姿勢なんだな。知ってたけど。
まぁ分からないのは仕方ないのでそれはそれとして。本人の研究を聞いてみると、武器や防具などの装備類を一括でアクセサリの形に圧縮し、持ち運びの利便性を上げると共に、一動作で装備自体を展開して瞬時に身に着ける、というものだったようだ。
「まさかの変身ベルトの開発者がいただと!?」
「と言う事は戦隊ヒーローの完全再現の目がここに!?」
「いや待て魔法少女の変身アクセサリもいけるのでは!?」
「えっ何そのやたらと心躍る謎単語!? 詳しく!」
若干横道に逸れそうになったが、「第五候補」が上手く軌道修正してくれた。私もちょっとわくわくしたけどさ。今はそれより、目の前に差し迫った問題があるからね。
とりあえず、この魔族の男性が「人工空間獣の種」から出てきた事と、本人曰くその当時は研究所の中に居た事、そして種自体は研究所で行われていた研究の1つでほぼ間違いないって事で、他にも魔族の人が種から出てくる可能性は高い。
なので、これから出てくるだろうその人達の説得と、出てくる研究資料の整理をお願いする事になったようだ。まぁ妥当な所だな。あと、出来れば他のステージでも話をスムーズに進める為に一筆書いてほしかったのだが。
「いや、それはー、その……こんな下っ端より、もっと適任が居るんじゃないかなー、なんて、思ったり……」
それはまた後日に持ち越し、という形になりそうだ。このステージはあと丸2日あるが、あのレア度からしてその間に誰も出てこないという可能性もある。その場合は改めてお願いをする事になるだろう。
そう結論が出て「人工空間獣の種」を開ける作業が再開された訳だが、あの男性が居る間、私は作業に参加できないようだ。話を聞いている間に
子供は寝る時間、って事で、私もこのまま寝かされるパターンかな。長時間連続で行動してるとスタミナが回復しなくなっていって動けなくなるから、適度な休憩と言うか睡眠が必要なんだけど、私は回復力が高いから、たぶん5日フルで動けるんだよな。
「……俺が言えた事じゃないけど、お嬢は寝る気が無さそうだな……」
「実際まだまだ動けますからね。やる事もいっぱいありますし」
なおこの会話は子供達を起こさないように小声である。うーん……と悩んでしまうエルルだが、実際やる事はあるんだよな。宿光石のランタンはエルルに渡してるけど、種を開けるチームを2つに分けて、魔族の人がいない方で作業すればいいんだし。
「そういえばエルル。魔族の人なんですけど、ダメなパターンはよく分かりましたが、ダメじゃないパターンって何だったんですか?」
「あー、それはだな……。魔族っていうのは、種族的に、魅了耐性が物凄く低い。で、それを何とかする為に、わざと1点弱点を作って、他に対する耐性を上げる、っていうやり方をしてるんだ」
「あぁなるほど。つまり、可愛いが弱点の人でなければ大丈夫だったんですね」
「そういう事だな。……その辺関係なくどうにか出来そうなのもいたけど」
そういう事だったらしい。そうか、魅了に弱いのか。それも致命的に。……なるほど、だからあの「たからばこ」の時にも、不安な種族として名前が出てたんだな。
もしモンスターの大群の中に、強い魅了属性の攻撃を持つ奴が居たら一発アウトって意味で。
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