第424話 18枚目:拠点発見
『お嬢ー』
「どうしました、エルル」
『たぶんだが、お嬢が神殿を貰った神の領域っぽい場所を見つけたぞ。どうする?』
「まず確認させてください」
残りログイン時間が1時間を切り、どうしたものかと
ちょっと袋そのものが揺れるが、私ならジャンプで袋の上まで届くからね。緩く空いている口の部分から上半身を出し、今は滞空しているらしいエルルの手元に顔を出す。
うーわ広い。どうやら最初より高度を上げたようで、その広さがよく分かる。確かに最初の大陸や北国の大陸より広い。1ヶ月で探索し尽くすのとか実質無理なんじゃないか?
「で、ボックス様の領域は、あーはい確かに分かりやすい」
上空から見たら今度もまた地形のパッチワークとなっている、広さは段違いの亜空間。その地形の境界線が集まった辺りに、ぽんっと白い立方体が置かれているように見えた。うん。あれは間違いない。
とりあえずその光景をスクリーンショットに撮って、カバーさんへのメールに添付して送る。袋の中ではそのスクリーンショットを見て相談が行われている事だろう。
その間に後ろや横を見回して、周囲の遠景のスクリーンショットも撮っておく。私の視力依存のスクリーンショットになるから、位置や広さ、地形を確認する良い資料になる筈だ。
「ん、返事がきました。……えぇはい、まぁそうなりますよね」
『で、何て?』
「時間もあまりありませんし、周囲の地形も比較的平和そうなので、向かってくださいとの事です」
『分かった。アレクサーニャ!』
『はいよー』
なお袋の中に戻るときは【飛行】を使って軟着陸すれば良かったりする。中で待っていた皆に遠景のスクリーンショットを配って考察しながら待つ事数分。枠代わりに入れてあった岩の柱でピンと張られていた袋が、ふわりと緩んだ。どうやら到着したようだ。
一足先に【人化】したサーニャが袋の結び目を解いてハンモックに戻してくれたので、全員でぞろぞろと外に出る。おー、あの大樹が遠い。遠くても見えるって辺りやっぱりでかいんだろうけど。
そして目の前には大きな白い立方体。まー間違いないよな。
「たぶんセーフゾーン的に、一塊にするんじゃ無く各地にこういう形で散らしてくれてるんでしょうね。流石ボックス様相変わらず最高です」
『ある意味平等公平な避難所であるな。悪の為に悪を成す者は弾くというのであれば、一般にとってはより安全かも知れぬ』
「わぁ至れり尽くせり。何気に他人との壁っつか警戒心がめちゃ高な「第三候補」が心から尊敬してるだけあるわー」
「誰が野生動物ですか」
「ははーん、誰かにそう言われたな?」
墓穴を掘ってしまったが、それ以上は反応せずスルーだ。一応言っておくが、家庭環境は大変平和だぞ。それっぽいエピソードは1つも無いからな。
そして到着した以上は中に入りたいんだが……地上から入れそうな場所が見当たらない。どうやら隠し扉とかそういう類でも無さそうだ。しかしどう見てもボックス様の領域なんだけどな、ここ。
「……。もしかして、上では?」
「あ、じゃあちょっと見てくるっす!」
『僕も行きますよー』
いつもボックス様(分体)がプレゼントをくれる時の事や「異空の箱庭」の事を思い出して呟くと、フライリーさんとルチルがそこそこの大きさがある白い立方体の上へと飛んで行ってくれた。
……しばらく待っていると、立方体の角から一定の幅が開くようにして、階段が出て来た。扉とかじゃなくてこうなるの?
「あっはっはっは! なにこれ楽しい!」
「上にスイッチと扉があったっす! とりあえず階段のマークがついてるスイッチを押してみたら、こっちに階段が出て来てびっくりっすよ!」
「でしょうね」
遊び心が満載だなぁ。と思いながら階段をぞろぞろと登っていく。残りログイン時間が30分切ってるからね。テントを張るにせよ部屋を確保するにせよ、そろそろ本気で時間が無い。
『この構造、もしかすると外敵に対する備えであるのかも知れぬな』
「あぁ~。確かに~、つるつるした外壁って考えたら、防御力はばっちりね~。階段を出せば~、一度に来る相手の数を制限できるし~」
「まぁつまり外敵が来る可能性があるって事なんですけどね。ボックス様がそこまで備えてるって事は、この1ヶ月の間に最低一度は大規模な襲撃があるんでしょう」
「点在する反撃の橋頭保か? もしくは戦線維持のための砦か? どっちにせよがっちりした安全な場所があるのはありがたいけど! 戦略的にものすごく!」
なお、この会話をカバーさん達も否定しなかったので、可能性としてはあり得るんだろうな。たぶんな。……北国の大陸の大狩猟祭という名の大規模防衛戦の二の舞は流石に嫌だぞ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます