第230話 13枚目:爆弾追加

 やらかした。


「お嬢」

「はい」

「言い訳は?」

「ごめんなさい」

「よーし反省してるみたいで何より」

「と言いながら何で頭を掴んで痛い!」


 こめかみグリグリも痛かったけどアイアンクローも痛い!! 特大デビルフィッシュ(異世界タコ)達の時とは違ってカバーさん達『本の虫』の皆がすぐそこに居るからそれなりのタイミングで止めてくれるだろうけど!


「この降って湧いた系お嬢、本当に心底自分の価値に関して話半分だったな!?」

「いだだだだだそんなの言われたって実感なんて湧く訳が無いじゃないですか中身一般人ですよ!?」

「中身はそうかも知れないが身体はそうじゃないんだから自覚しろって言ってる!!」

「痛い痛い痛い!!」


 いや、最初は普通に【錬金】を使ってお札を在庫処分、もとい合成してた訳だよ。まぁ100枚を1枚にして効果10%アップとか見た時は、あぁ本当に在庫処分なんだなって納得したさ。

 ただそこでちょっと魔が差したというか興味が出ちゃったと言うか、こっそり【採取】から進化した【捕集】をメインに入れて髪の毛を1本抜いてみたんだよ。そしたら1本だけ綺麗に抜けてさ。それをこう、お札を合成するところにぽいっと入れてみたんだよね。どうなるかなーって軽い気持ちで。ほんとに。

 そしたら、まぁ、うん。ぺっかぁあああっっ!! と尋常じゃ無く光るから、一発でバレたよね。その光が銀色だったから言い訳の余地もない。そして何事かと飛び込んできたエルルの、開口一番の言葉と会話がさっきのだ。


「まぁまぁ。【錬金】は下手な材料を入れると爆発しますから、そうならなかっただけまだ成功の内ですよ。もちろん今回の事は部外秘として厳重に秘匿させて頂きます」

「頼むわ……今まで目を離してた内、いつどこで何やらかしてきたか、今更ながら不安になって来た……」

「そんなにやらかせる程エルルから離れてませんよ……」


 そしてその光が収まった【錬金】に使うでっかい鍋を調べていた『本の虫』の人達だが、どうやら一段落したようだ。カバーさんがお説教を止めに来てくれた。もうちょっと早く来てくれても良かったんだよ?

 内心「これは絶対「吸血」特性の武器使った事は黙っていよう」と固く決意しつつそれは覆い隠し、で、何か分かりました? という目をカバーさんに向ける。


「属性が付いた状態でランクが上がったようですね。属性は投入した札に使われていたもの、ランクの上昇は恐らく「第三候補」さんの持つ特性でしょう。もしかしたらモンスターの素材を使えばその特性を持つ札を作れるかもしれません。【符術】の拾得者自体がまだ珍しいので、貴重な合成例をありがとうございます」

「使うだけで上質なアイテムになる素材ですか。とりあえずだいぶ怒られましたし、身辺には今まで以上に気を付けます……」

「だからあれほど言ってきたんだよ……」


 掴まれていた部分がまだヒリヒリ痛むような気がするが、とりあえずやらかし案件で確定したことは分かった。鱗がダメでも髪の毛なら大丈夫かなと思ったのが悪かったか。

 というかそもそも、【採取】を使えば素材が採れるっていうのが既に「吸血」や「吸魔」特性と同じくらいに大分危険な情報だな。これはこっそりカバーさんにだけ分かるようにメールしよう。

 あ、もしかすると、こういう使い方が出来るから【採取】は「才能」に属する、つまり行動で取れないスキルだったのか? 確かにこれは手軽に取れちゃダメな類だな。便利だけど貴重だって情報が既に出回ってるから、ほとんどの召喚者プレイヤーは持ってるだろうけど。


「とりあえず……このお札、どうしましょう。試し撃ちも怖いんですが」

「それでもそのまま置いとくより、使える形にした方がまだ安全じゃないか? 使える形というか、使い方が限定された形というか」

「まぁそれはそうですね。下手に売りに出して悪用されたらシャレになりませんし」


 属性は土だったので、少し悩んでから土壌改良系のお札を作ることにした。地味だが効果が長く続く、設置型のお札だな。谷底に畑も作ってるし、これを悪用するなら……ダメゼッタイなお薬の原料の畑に使うとか? ぐらいしか思いつかない。

 これならインベントリに死蔵していても問題ないし、万が一インベントリからアイテムを盗むスキルがあったとしても、このお札なら盗まれても平和だ。少なくとも攻撃に使えるお札よりは。


「あ、完成した時点でなんか纏う空気感が違う」

「口調。……まぁそりゃ、お嬢が自分の一部使ったんだからそうなるだろ」


 しかし、もう決戦(予定日)まで日が無いって言うのに、また別の爆弾と嫌な予想が転がり出て来たなぁ。

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